2020 年 14 巻 p. 79-88
児童文学作家である川崎大治は、戦前・戦中期に、保育問題研究会や日本教育紙芝居協会の一員として、幼児紙芝居の制作、研究、実演に従事し、幼児紙芝居という新たな領野を切り開いた。川崎は、日本教育紙芝居協会の幼児紙芝居の多くを手がけ、実際に紙芝居をもって農繁期保育所の運営にも携わってきた。川崎は、紙芝居をどのようなものとしてとらえ、どのような思いで創作していたのだろうか。また、保育と紙芝居との関わりをどのように考えていたのだろうか。川崎の紙芝居観を明らかにしていくことは、当時の保育における紙芝居を考える上でも有用だと考える。川崎の言説を蒐集・分析した結果、「芸術としての紙芝居」「楽しい教具としての紙芝居」「自己修養としての紙芝居」という3つのキーワードが浮かび上がってきた。子どもの中に入り、共に生活する中でうまれてきた川崎の幼児紙芝居は、現在の保育における紙芝居や教材としての紙芝居に大きな影響を与えたと言える。