東京未来大学研究紀要
Online ISSN : 2433-5487
Print ISSN : 1882-5273
14 巻
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原著
  • ―カウンセリング、看護等の比較より―
    伊藤 能之
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 1-8
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本論考は、保育、看護、カウンセリングにおける普遍的な援助概念が存在するか否かの可能性について考察し、その存在を確認したものである。保育は、「気になる子」の存在を前に、カウンセリングと接近し、また病棟保育のような場においては、看護とも接近する。しかし、保育、カウンセリング、看護、ともに援助に関わる職業でありながら、専門性が強く、必ずしも連携は容易ではない。しかし、援助において、看護、保育、カウンセリングが統合される場合がある以上、連携が求められる中、普遍的援助概念を考察することは意味があると考える。

     結論として、保育、カウンセリング、看護において、その普遍的援助概念は存在し、それは、「自立」という概念に集約される。一人で着脱できない子が一人で着脱できるようになったとき、そこに自立の概念が提起される。このことは、直面している問題の解決を求めるカウンセリング、病魔と全力で立ち向かうことをナイチンゲール以来の基本概念としている看護にも当てはまる。

  • 大西 斎
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 9-18
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     日本国憲法の表現の自由と報道の自由を考察することにより、マスメディアの報道のあり方と憲法上の制約について検討していく。また、放送メディアが電波法76条に基づいて行政処分として電波の停止を命じられることについても検証していった。

     放送メディアの電波規制のあり方を踏まえたうえで、国民投票法105条について、改憲反対派と改憲賛成派が憲法改正に関わる放送メディアに対する運動資金についての分析を行った。改憲反対派の現状について巷間で言われているような運動資金が窮乏している現状であるのかについても検証していった。さらに日本民間放送連盟が国民投票に関わっての広告を表現の自由との関連でどのように考えているのかを検討した。国民投票に関わる広告について国民投票の期日前2週間前と、2週間を切った場合の意見表明についても究明していった。最後に、今後の国民投票法105条のあり方について提唱を行った。

  • ―負担感とチーム内仕事量の間を調整する要因に関する探索的検討―
    大橋 恵, 井梅 由美子, 藤後 悦子
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 19-28
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

    Community sports clubs can provide children with opportunities for adequate physical exercise. However, sports clubs often require a high degree of support from the parents of club members. In the present study, the conditions that motivate parents to work for their childrenʼs club teams were explored. We conducted an online survey with mothers who had children participating in communitybased junior sports clubs in Japan( N = 276). The results indicated that high levels of bench harassment lead to stronger feelings of burden, in addition to the actual task requirements, such as helping the match. This finding suggests the need to develop techniques to decrease bench harassment, which is a type of aggressive behaviors. In addition, mothers of a highly skilled child did not feel a heary burden even when the time irvestment was significantly high, suggesting that they could derive positive rewards from their childrenʼs successes in sports.

  • ―高等学校での集団的な応援活動の意義を通じて―
    金塚 基
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 29-36
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本稿は、特別活動の教育理念の明確化を目的として、その学習指導要領ならびに関連する社会環境の変化を捉えた上で、集団的な応援活動のあり方をひとつの事例として取り上げ、その教育理念と実践との間に存在する今日的な課題について考察した。今日のように多文化・多様化した日本の学校では、単一性の高い集団的な枠組みのなかで行われる応援活動によって、逆に生徒たちに不平等や格差の容認、多様性の否定や偏見の形成といった学習効果を与えてしまう可能性がある。集団的な応援活動には、これまでの歴史的な伝統文化や環境要因のアドバンテージに基づくものではなく、より系統立てられた調和や実践からの成果に基づく集団的な凝集力が必要といえる。

  • 川原 正人
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 37-44
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本研究では大学生を対象として、居場所感とアパシー傾向がネット依存傾向にもたらす影響について検討した。今回の調査では先行研究に比べて高い依存傾向に含まる調査対象者の割合が多く、項目ごとの回答や尺度の平均得点で見ても上昇しており、大学生のネット依存傾向が強まっている可能性が示唆された。ネット依存と居場所感、アパシーの関連について検討したところ、アパシーとネット上での自己有用感がネット依存に影響を与えており、アパシーに対しては現実生活での本来感が影響を与えていることが明らかとなった。ネット上での自己有用感の直接効果よりも現実生活での本来感がアパシーを経由してネット依存に与える間接効果のほうが大きいことが確認され、ネット依存への対策として、ありのままいられる感覚を現実世界で見出すことがアパシーの低減につながり、それによってネットへの回避を和らげることが手がかりとして示された。

  • ―実習生と幼稚園教諭についての印象の比較を中心として―
    木内 菜保子, 岩井 真澄
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 45-53
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     これまでに、筆者は、幼稚園教育実習を中心として、実習生が与える印象、特に見た目の姿及び行動は、その評価に影響を及ぼすものであるかを検討してきた。その結果、実習の場では「幼稚園教諭として」の振る舞いが最も重要視されており、髪色や服装など見た目の姿が評価に直接関与することはないことが明らかとなった。本研究では、現場の幼稚園教諭から見た「実習生の望ましい印象」と「幼稚園教諭の望ましい印象」を、それぞれアンケートをもとに分析・比較することで、実習生に求める「幼稚園教諭として」のあるべき姿を検討した。アンケートの結果、「実習生の望ましい印象」と「幼稚園教諭の望ましい印象」の重要視する順位は同様の傾向を示しており、養成段階である実習生から現職教員まで、同じ「幼稚園教諭としてのあるべき姿」を求めていることが分かった。しかしながら、これを詳細に比較すると、そこには重要視するものに対する比重の違いがあり、幼稚園教諭が専門家としての明瞭な見方・考え方を持って、実習生と幼稚園教諭を分けて捉えていることが明らかとなった。

  • ―就学前の子どもへのインタビュー調査から考える―
    金 瑛珠
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 55-62
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     絵本は、子どもたちにとって身近なものである。大人と共にゆったり絵本を楽しみ、さまざまな感情を共有することができるものであり、保育の場でも絵本が常備されていない園は存在しないと言っても過言ではない。そこで、本研究では園生活の中での絵本が子どもたちからどのように語られるのかを知るため、就学間近の年長児に、保育園で読んだり読んでもらった絵本の中で一番好きな絵本についてインタビュー調査を行い、分析を行った。保育者の思いが込められたであろう“特別な絵本”が、子どもにも特別な意味を持ち、読んでもらった時の情景が事細かく語られたこと、好きな絵本を語る際には楽しみ方や他者の存在についても多く語られたことが結果として興味深い。また、絵本に付随する記憶として、誰と、どこで、どのように読んだかが多く語れた。園生活の中で好きな絵本として語られる際には、ストーリー以上に、記憶に残る人、モノ、場が大きな意味を持つことが明らかになった。

  • ―インドネシアY学園における特別活動を通じた教師の同僚性構築の試み―
    草彅 佳奈子, タタン スラトノ
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 63-68
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     近年、教育移転は多様化し、他国の優れた実践事例を取り入れる動きが、国レベルでも、草の根レベルでも起きている。2015年頃から特別活動が中東や東南アジアを中心に実践されている。しかし、一様に見えるこの特別活動への関心も、実は多様なレイヤーがある。エジプトやアラブ諸国では「日本型教育」が規律・協調性の育成を目的として実践されている。シンガポールでは国に貢献する人材を育成するため、市民・人格教育の一部として清掃活動が導入された。一方、インドネシアでは、草の根レベルで、人格教育やアクティブ・ラーニングの手法として取り組まれるようになった。

     本稿では、インドネシアY学園における授業研究に特別活動を組み合わせた事例を取り上げ、子どもの学びに焦点をあてた学びの共同体を構築する試みとして紹介する。また、その実践の意義と課題について論じる。

  • ―初年次必修科目「基礎演習Ⅰ」の事例検討―
    小林 寛子, 杉本 雅彦, 田澤 佳昭, 鈴木 亮太
    2020 年14 巻 p. 69-78
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     グローバル化する知識基盤社会やユニバーサル段階に達した大学教育の現状から、初年次教育の重要性が指摘され、各大学で様々な取り組みが行われてきている。本論文は、その1つの試みとして、アカデミック・スキルの育成を目指し、学生がその有用性を認識できるよう教材を工夫した「基礎演習Ⅰ」について報告したものである。2019年度に当該科目を受講した76名に、授業前後で学修内容についての理解度と価値の認知をたずねたところ、以下の点が明らかとなった。まず、学修したアカデミック・スキルについての理解度が有意に高まっていた。しかし、学修内容を有用だと感じるといった価値の認知の向上は見られなかった。したがって、今後、理解度の向上に影響した要因について検討を深めていくことが課題として残された。最後に、本論文で報告した事例を踏まえ、今後の初年次教育の在り方として、指導方法を工夫し、その効果について議論する必要があることを述べた。

  • ― 川崎大治の紙芝居観を中心に ―
    佐々木 由美子, 相澤 京子
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 79-88
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     児童文学作家である川崎大治は、戦前・戦中期に、保育問題研究会や日本教育紙芝居協会の一員として、幼児紙芝居の制作、研究、実演に従事し、幼児紙芝居という新たな領野を切り開いた。川崎は、日本教育紙芝居協会の幼児紙芝居の多くを手がけ、実際に紙芝居をもって農繁期保育所の運営にも携わってきた。川崎は、紙芝居をどのようなものとしてとらえ、どのような思いで創作していたのだろうか。また、保育と紙芝居との関わりをどのように考えていたのだろうか。川崎の紙芝居観を明らかにしていくことは、当時の保育における紙芝居を考える上でも有用だと考える。川崎の言説を蒐集・分析した結果、「芸術としての紙芝居」「楽しい教具としての紙芝居」「自己修養としての紙芝居」という3つのキーワードが浮かび上がってきた。子どもの中に入り、共に生活する中でうまれてきた川崎の幼児紙芝居は、現在の保育における紙芝居や教材としての紙芝居に大きな影響を与えたと言える。

  • 篠原 俊明, 小城原 舞, 渕上 京花, 平井 大樹, 篠崎 智歩, 小島 絵梨香, 齊藤 怜汰
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 89-96
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本研究は、女子大学生を対象に会場でのスポーツ観戦状況と会場でのスポーツ観戦阻害要因との関係を捉えることを目的とした。

     そのため、会場でのスポーツ観戦阻害要因尺度の作成を試みた。その結果、「無関心」「環境的制限」「人的欠如」「メディアの影響」から成る16項目4因子構造となり、信頼性も確認された。

     次に会場でのスポーツ観戦状況をもとに対象者を「無関心者」、「潜在観戦者」、「観戦者」の3つに分類し、比較した。「阻害要因」は、無関心者は潜在観戦者、観戦者より有意に高値であった。下位尺度では、「環境的制限」には有意差がなく、女子大学生には距離や時間が阻害要因にならないことが明らかとなった。 「無関心」では、無関心者の値が潜在観戦者、観戦者より有意に高く、会場での観戦を考えてない者は、会場での観戦に関心を持たないことが明らかとなった。「人的欠如」および「メディアの影響」においても有意差が確認された。

  • ―10項目版と6項目版―
    鈴木 公啓
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 97-101
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

    This study aims to develop short forms of the self-consciousness scale( Sugawara, 1984), composed of 10 items and 6 items. In this study, factorial validity and criterion-related validity were examined. The latter was examined by confirming similar correlational patterns between relevant variables and the new scales compared to the original scale. Results indicated that the short forms of the selfconsciousness scale( SCS-10 and SCS-6) have good reliability and validity. These scales may contribute to future studies about self-consciousness.

  • ―絵本の場面を描く調査から―
    髙橋 文子
    2020 年14 巻 p. 103-113
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、幼児の「見たものではなく知っているものを描く」という象徴的、図式的描画の詳細を、描画意識という事物の認識の状態に着目して明らかにすることである。具体的な調査方法として、年長~年中児クラスを中心に絵本の読み聞かせを行い、その一場面の主人公を絵本を参照しないで描くという流れを設定した。2016年~2018年の3回に渡る調査の描画群や描画の様子の画像及びVTR等を基に、「投影的、象徴的な側面」、「写実的な表現への移行を想定した描画の発達段階の側面」、「経年変化の側面」から分析を行った。その結果、①なぐり描き的な描画から、対象の特徴(体の向きや顔や手足の、持ち物など)を象徴的に表そうとする描画意識②一本線の虫のように見えがちな表象から、次第に輪郭線を得て、面として形をとらえる描画意識の伸長③再現性よりも独自のストーリーを加えた再創造の傾向を確認した。

  • 宅間 雅哉
    2020 年14 巻 p. 115-128
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     イングランドの気候地名研究の一環として、「涼しい(“cool”)」を意味する古英語cōlを第1要素とし、水文景観以外の景観に関する名詞を第2要素として構成される地名32例を対象に、地名に込められた「夏に感じられる涼しさ」の原因を英語学(史的研究)以外の視点から考察した。第2要素が地形に関する名詞の場合は、西日の直射軽減、冷気湖、海風及び河川の冷却効果が涼しさの原因となる可能性を指摘した。 第2要素が植生に関する名詞の場合は、地名が指示する場所あるいはその近隣に、木々がつくり出す日陰と蒸発散の基盤となる樹林地の存在が涼しさをもたらす可能性を指摘した。そして第2要素が家屋などの構築物に関する名詞の場合は、教区教会を中心とする人里から離れ、起伏に富んだ道程を経て、標高の高い場所に孤立するそれらの立地条件を人がどのように受けとめるかが鍵になる可能性を指摘した。

  • ―応援席ハラスメントと指導者ハラスメントの視点から―
    藤後 悦子, 大橋 恵, 井梅 由美子
    2020 年14 巻 p. 129-139
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

    There are various types of harassments in children’s sports, including corporal punishment by coaches. Not only coaches but also cheering groups, especially bystanders of cheering groups, are important factors in harassment. The authors focused on psychological harassment by parents of team members, which is known as “bench- harassment” and investigated what parents expect or do not expect from coaches and parents of other team members(cheering groups)to identify conditions of sports harassment and improve the sports environment. A survey was conducted with parents( N=112)with children enrolled in elementary school and junior high school attending a private basketball club in the Kanto area. The results indicated that parents expected coaches to provide “concrete advice and welldesigned training” as well as “mental support.” On the other hand, they expected coaches to avoid “violence or violent language” or provide “low-quality training.” They expected parents of other team members to provide “support for the smooth operation of the team” and “mental support,” and avoid “attitudes inappropriate for adults” or “negative attitudes or behaviors.” The child-centered sports environment was examined from the perspective of children’s rights and sports principles based on the above results.

  • 埴田 健司, 石井 国雄
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 141-151
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本研究では、ピンクと青の衣服を着ることが、ジェンダーに関する自己認知と他者認知に及ぼす影響を検討した。実験では、参加者にピンクあるいは青の服を着てもらった状態で、女らしさ・男らしさに関する自己認知と他者認知を測定した。自己認知はIATにより潜在的側面を、質問紙による自己評定により顕在的側面を測定した。結果、潜在測定では、ピンクの服を着た参加者は青の服を着た参加者に比べ、自己と女らしさの連合が強くなっていた。顕在測定では服の色の効果は見られなかった。他者認知は女性と男性の刺激人物に対する印象を測定したが、ピンクの服を着た参加者は青の服を着た参加者に比べ、女性の刺激人物を男らしいと評定していた。この効果は男性の刺激人物に対しては見られなかった。これらの結果は、衣服を着用すると、その衣服に連合している概念が自己認知に対しては同化効果を、他者認知に対しては対比効果をもたらすことを示唆している。

実践報告
  • 上野 昌之
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 153-161
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     アイヌ文化振興法のもとで始まった「伝統的生活空間(イオル)の再生」が行われている。イオル再生事業とはアイヌ民族が古来伝統的な生活の場と考えてきた空間を復元し、アイヌ文化を伝承していこうというものである。その中でアイヌ民族の受け継いできた知恵(ウパシクマ)の継承をめざし、伝承者を育成していこうという事業が白老で行われている。アイヌ民族の儀式がアイヌ語ででき、舞踏や工芸、自然に関する知識など様々なアイヌ文化を伝承し、普及していく人材の育成が行われている。アイヌ民族の若者が、3年間の専門教育を受け伝統的なアイヌ文化を学んでいる。すでに第4期目となり、これまでに優秀な人材が輩出され教育や文化伝承などで活躍している。ここではアイヌ文化伝承者育成事業の学習カリキュラムを分析することでアイヌ民族の伝承活動のあり方、事業の趣旨を明らかにし、後継者の育成の観点からこの事業の持つ問題点と課題を考察する。

  • 内田 仁志
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 163-173
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本研究は小学校国語科指導において佐藤学氏(本文では佐藤と表記する)が提唱する「学びの共同体」における授業改革の在り方と筆者の提唱する「ルールのある学び合い」の授業を比較し、どちらが教師の指導と児童の学力保障の両方に有効かを述べたものである。検証のために小学校3年生国語科教材「ちいちゃんのかげおくり」での実践を試みた。その結果、学び合いにはルールを設けることが有効であることが明らかになった。

  • ―砂場を対象としたビデオカンファレンスの事例から―
    及川 留美, 金 瑛珠, 小野崎 佳代
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 175-182
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     平成29年に告示された保育所保育指針に職場における研修のさらなる重要性が示された。しかし実際の保育現場においては、研修の時間の確保やその実施方法について試行錯誤が続いている。

     B保育園では、2014年度より研究者と全職員が参加する参加型園内研修を実施している。2018年度に実施した参加型園内研修は、研修担当保育者のファシリティのもと、砂場と2歳児クラスに設置した定点カメラの実践映像をもとにしたビデオカンファレンスであった。その特徴は、研修の最後の全体討議において明日からすぐ実践できることを全体で共有し、実際に実践した点にある。

     砂場での遊びを対象とした研修事例から、保育実践の循環構造を体現できる構成となっていたこと、定点撮影をした映像から研修での討議内容を実践し、そのことによる子どもたちの変化を実感できたことが、2018年度の研修の特徴としてあげられた。これらのことから、保育者たちのより主体的な参加を促す研修となっていたと考えられる。

研究ノート
  • ―4歳児が絵本を探す様子に着目して―
    浅井 かおり, 浅井 拓久也
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 183-188
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本研究は、A幼稚園における4歳児クラスの絵本選びの様子に着目し、特定の絵本の選択要因について何が想定されるのか、事例を通して検討した。その結果、学級担任が読み聞かせをしたことのある絵本であること、友達よりも先に見たいという気持ちがあること、自身のお気に入りの絵本やお気に入りの場面がある絵本であることが仮説として示された。何の絵本を楽しんでいるか、絵本を通して何を育んでいるかの理解だけではなく、絵本を選ぶ際の要因にも目を向けることが幼児一人一人の理解を更に深めることに繋がると考えられる。

  • ―2013年6月第1週におけるとある求人情報誌の事例の分析―
    長内 優樹, 内間 望
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 189-196
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本研究は、長内(2017)の外的妥当性を検証することを目的に、モチベーションに類する語それぞれの使用回数と広告内での語の共起関係の2点に注目し、同求人誌の別時期の号の分析を試みた。その結果、モチベーションに類する語のそれぞれの使用回数は、「やる気」「ヤル気」「意欲」「モチベーション」の順に多く長内(2017)を支持していた。また、広告内での語の共起関係においては、「やる気」と「ヤル気」は「経験」と「歓迎」に共通して共起しており、長内(2017)を部分的に支持した。

  • 佐藤 久恵
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 197-202
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本稿では、雑誌『令女界』(大正11(1922)年9月号)を中心に、小野さつき訓導殉職について書かれた記事について考察した。特徴は、『令女界』に掲載された6点の文章のうち、学生時代の小野さつき訓導を直接知る人の記述が3点、掲載されているということである。当時の『令女界』の読者層が女学生くらい以上の年齢層にあったため、宮城県高等女学校内の愛読者を集め、レポートさせる企画を掲載したこと、雑誌『少女の友』『婦人世界』と誌面上の差別化を図ったとも考えられる。当時の殉難事件への反響と亡くなった小野さつき訓導への礼賛が世間の中で凄まじい一方、『令女界』では、質素で素朴な人柄と殉職につながらざるを得なかった気性とが記されている。2021(令和3)年には、小野訓導の殉難後100 年を迎えるが、この事件が現在に至ってどのような意味を持つかということについては継続して考察してきたが、今回は『令女界』の掲載文を考察の軸とし、1922(大正11)年9月、同時期に発行された他誌と比較をした。『令女界』においては等身大とも言える「小野さつき」が描かれたが、その後『令女界』は当時の社会が批判的に描いた「女学生」を紙上に優先させ、「聖職者教師像」に結びつけて描くことを避けたのではないかと考えられる。

  • ―大学理科教員養成系学部と看護士養成系専門学校における比較―
    田中 元, 鈴木 哲也
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 203-208
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     大学(理科教員養成系学部)および専門学校(看護士養成系)において新入生たちが作成した「電気」に関するイメージマップを、高校理科分野の教科書から得たコーパスと照合しながら分析した。比較すると理科教員養成系で得られたマップには、教科書で用いられる理科用語がより多く現れたと言えるが、これらはけっして大きなウエイトを占めるものではなかった。最も大きな相違は、「発電」という言葉に代表されるクラスタが看護士養成系には現れず、理科教員養成系に特異的に現れる点である。そしてこの違いは、教科書を経た学習経験の違いに由来するのではなく、理科教員養成系を志望する学生の気質から来るのではないかと思われる。

  • ―体験型の学習の振り返り記述を通じて―
    吉田屋 幸子
    原稿種別: 研究論文
    2020 年14 巻 p. 209-212
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     本研究では、保育士養成課程の学生に対し、施設実習の前に障害者支援施設での体験学習を行い、学生が体験活動をどのように感じたかさらに学生にどのような気づきがあったかを調査した。活動後に行ったグループワークや振り返りシートにおいて、学生が障害者をどのように捉えているのか明らかになった。 近年の実習生の傾向等を踏まえ、これからの保育士養成課程における施設実習前の実習体制を形成する努力が、さらに今後も求められることが示唆された。

原著
  • ――個別性の把握と一般化・普遍化の両立に向けて――
    山﨑 善弘
    2020 年14 巻 p. 221-231
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/21
    ジャーナル フリー

     従来の近世地域社会論では、それぞれの地域社会の個別性の把握(分現状を克服することは容易ではないが、大島真理夫が提起した「幕藩制支配の地域類型」論を参考にするとともに、その問題点をも浮き彫りに析知)は緻密になされているが、その一般化・普遍化(総合知)がなされているとは言い難い状況にある。しかし、地域社会の個別性の把握と一般 化・普遍化とは矛盾せず、むしろ両立して初めて真の地域社会論といえる。 しながら、最終的に私の研究に引き付けて、地域社会の個別性の深い把握 とその一般化・普遍化の両立に向けた考察を展開した。

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