東京未来大学研究紀要
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Print ISSN : 1882-5273
原著
障害者差別解消法とインクルーシブ教育の課題
上田 征三金 政玉
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2016 年 9 巻 p. 21-30

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抄録

 障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)は、障害のある人が障害のない人と同等の権利を行使できるようになるために、あらゆる形態の差別の禁止や合理的配慮を基本原則として差別の定義に明記している。わが国ではこれを受けて、改正障害者基本法(2011 年8 月)の第4 条(差別の禁止)があり、その実定法として具体化したものが障害者差別解消法である。その法律の施行(2016 年4 月)を前に、政府は基本方針で「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」について言及しているが、「正当な理由」及び「過重な負担」が抽象的に拡大解釈される可能性があり、「ものさし」(ガイドライン)の役割を果たす行政機関ごとの対応要領及び事業分野ごとの対応指針が適切に作成され公表されることが必要である。また、文部科学省は障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針(案)を示したが、今後の課題としては、インクルーシブ教育の理念の具体化に欠かせない合理的配慮の基盤となる「基礎的環境整備」の取組と地域の理解と支援が重要である。

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