季刊地理学
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特集論文
中国・内モンゴル渾善達克沙地における植生変動とその要因
──1982年~2014年の衛星データによる検討 ──
咏梅境田 清隆
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2016 年 68 巻 1 号 p. 15-30

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抄録
本研究は,近年沙漠化の進展が著しいと言われ,北京市や天津市で急増した砂塵暴の発生源として注目を集めている錫林郭勒草原の渾善達克沙地に注目し,植生指標の変動とその要因を各種気象データから検討した。まず1981年~2014年までのAVHRR/GIMMSとMODIS/TERRAの衛星データを使用し,生育期間である4~10月における植生量を算出した。植生量の指標として4~10月積算NDVI値を用い,その年々変動と長期変動の時空間的変化を調べた。次に,渾善達克沙地内10観測点の気温と降水量のデータを用い,これらがNDVI値の変動に及ぼす影響を検討した。最後に,家畜頭数変化,植林の人為的影響がNDVI値に与える影響を考察した。その結果,対象期間30年を通じてNDVIは明瞭な増減傾向を示さなかったが,2003年以降に値が低くなる傾向がみられた。4~10月積算NDVIを目的変数として, 3~10月の月毎の降水量と気温を説明変数として重回帰分析を行った結果,NDVI実測値と予測値との重相関係数は0.91と非常に高い値が得られた。家畜頭数の増減は年々の植生変動に直接結びつくものではないが,増加傾向にあった家畜頭数のもとで干ばつが発生する場合には植生量が急激に減少することが明らかとなった。
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© 2016 東北地理学会
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