季刊地理学
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論説
経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の受入れにみられる大都市集中傾向
—東京大都市圏における動向とその背景—
斉藤 美沙季宮澤 仁
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2020 年 72 巻 3 号 p. 143-161

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抄録

 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者は,日本の病院・介護施設において就労しながら国家試験合格を目指している。同候補者に対する学習・生活支援は受入施設に一任され,支援につながるフォーマル・インフォーマルな資源の分布状況には地理的な差異が存在する。そして,候補者の受入れと合格の状況にも地域差がみられる。本研究ではEPA外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れを専門職育成の地理的条件にかかわる重要な問題として捉え,その地域的傾向の一端を明らかにすることを目的とした。そのために,近年同看護師候補者の受入数の急増に加えて国家試験の合格率も上昇傾向にある東京大都市圏を対象地域とした。同看護師候補者とその受入病院に対するインタビュー調査および既存統計の分析の結果,東京大都市圏における受入れの背景には,① 系列病院間の近接性を活かして候補者支援を効率的・効果的に実施し,特に近年受入れを拡大している大手病院グループの存在,② 国際化を視野に入れた地方自治体による学習支援,③ 候補者を支えるさまざまな学習資源や宗教施設ならびにエスニック・ビジネスの集積,④ 同じく公共交通機関による移動の容易さの4点があることを指摘した。

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© 2020 東北地理学会
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