季刊地理学
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津波により高所移転した集落の「低地居住」要因の検証
── 山口弥一郎の指摘と東日本大震災前後の唐丹本郷 ──
熊谷 誠南 正昭
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2021 年 73 巻 2 号 p. 77-93

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抄録

釜石市唐丹町本郷は,三陸の津波常襲地にあって,昭和三陸津波後の高所移転集落として知られる。かつて山口弥一郎は,元の集落位置へ戻る「原地復帰」への懸念を指摘したが,「原地」には防潮堤建設等により居住はできなくなっていた。一方で,昭和津波浸水域を含む「低地」への居住が拡大していた。東日本大震災では,高所移転地では浸水被害を免れた一方で,「低地」は壊滅的な被害を受けた。東日本大震災後の復興事業に伴い,同津波浸水域への居住は法的に禁止され,「低地居住」への懸念も解消された。本稿は,唐丹本郷におけるこのような変遷の過程を,「低地居住」の実態と要因群も含めて,明らかにした。

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© 2021 東北地理学会
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