本稿は,浦戸諸島野々島における人工洞穴「ボラ」の分布と利用に関する現地調査の速報である。松島湾を構成する中新統の松島湾層群の中でも,流紋岩質凝灰岩から成る松島層は,石材(野蒜石)や摩崖仏等に利用されてきた。そのような利用形態の一例として,松島湾地域や浦戸諸島野々島では崖線下に人工洞穴が掘られ,日常生活に利用されてきた。野々島では,島西側の崖線下に計65のボラを確認できた。現在の野々島では,いくつかのボラが物置として利用されるにとどまっているが,聞き取り調査の結果や現地調査で確認できた痕跡を総合すると,かつては煮炊きの場や風呂場として利用され,平地が少なく稠密な集落であった野々島の日常生活において重要な空間として活用されていたことが窺えた。このようなボラは,松島湾地域の自然環境と人間生活の関わりを考える上で好適な素材である。