抄録
わが国の1970年代における都道府県間人口移動の様相がいかなる地域的パターンの人口移動圏として抽出され得るかを吟味するため, 主として主成分型因子分析の適用により若干の分析を行ってみた。その結果, 研究対象期間の1971~72年, 1973~75年, 1976~80年の各期間とも, 主として東京・大阪を中心地とした東日本・西日本圏の2大人口移動圏がわが国の人口移動の基本的次元を示したが, 期間を追うごとに, 西日本圏の衰退傾向が看取され, わが国の人口移動圏は西日本圏を中心としてその再編成過程にあることが明らかとなった。すなわち, 上記の期間におけるわが国の人口移動圏は, 東日本圏が東京と神奈川を核として次第にその内周県を移動中心地に組み込み, 強固な圏域を示していくのに対して, 西日本圏では九州圏が独自の圏域を確立し, 副次的人口移動圏の阪神・山陽圏が中国圏として成長していくなどの複雑な人口移動の動向を明らかにすることができた。したがって, わが国の人口移動圏は, 東日本圏, 西日本圏, 九州圏, 中京圏の基本的パターンに, 躍進中の中国圏と東京圏を加えた地域的パターンとして捉えることが可能となった。