抄録
本研究は,学生の特徴に応じた指導の示唆を得るため,看護大学2,3年生72名を対象に質問紙調査を実施し,【尺度構成による学生の対人関係】,【声掛けの受止め方】,【平常時と実習期間中の心身の状態の変化】との関連を量的・質的に分析した。尺度構成による学生の対人関係の傾向は,親和不全・見捨てられ不安が有意に高い結果を示した(p<0.05)。見捨てられ不安にある学生は,実習指導者からの声掛けの受け止め方に関連(p<0.05)があり,また,平常時に比べ実習期間中は,疲労や倦怠感・睡眠障害にも弱い相関を示した(r=0.392,p<0.05)。
実習指導者の表情・態度に敏感な学生が多く(90.3%),実習指導者からの声掛けの体験内容の自由記述を分析した結果,嬉しい声掛けとして『不安・緊張の緩和』,辛い声掛けとして『不快な態度』などが抽出された。実習指導者と学生間の関係形成は,学生の対人関係の傾向より実習指導者の表情,態度の変化に敏感で心身の状態の変化においても関連があった。
実習は学生にとって,ストレスフルな環境であると同時に成長する場でもあり,実習指導者の声掛けひとつが,学生の安心感や意欲の向上,身体症状に影響を及ぼすため,実習指導者は学生との対応時,対人関係の傾向を考慮した声掛けが必要であると示唆された。