Thermal Medicine
Online ISSN : 1882-3750
Print ISSN : 1882-2576
ISSN-L : 1882-2576
Reviews
超音波による分子的治療, 遺伝子発現の変化, 遺伝子導入, アポトーシス誘導および薬剤活性化の機構
吉田 徹近藤 隆小川 良平QING-LI ZHAOMARIAME A. HASSAN渡部 明彦高崎 一朗田渕 圭章庄司 美樹工藤 信樹LORETO B. FERIL, JR.立花 克郎MIKHAIL A. BULDAKOV本田 昂塚田 一博PETER RIESZ
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 23 巻 3 号 p. 113-122

詳細
抄録

がん治療における分子イメージング技術や分子標的治療法が注目されている. 超音波は診断のみならず, がん治療への応用も進んできており, さらに分子レベルでの生物作用の解明が必要とされる. 本稿では特に分子生物学的見地から超音波によるアポトーシス誘導, 遺伝子発現の変化および遺伝子導入について概説した. また, 抗がん剤であるドキソルビシンの増強作用についても触れた. これらの生物作用は高い強度の超音波照射で認められることはわかっていたが, 最近の研究で低強度のパルス波でも認められることが判明した. 低強度のパルス波でもキャビテーション発生が認められ, これによる機械的作用と生体膜との相互作用が分子レベルの生物作用を考える上で重要となる. そのため, キャビテーションの発生を促進する微小気泡や生体膜を修飾する手法が超音波を利用した治療に考慮されるべきである.
 最近の研究の進歩により, 超音波により細胞内へ遺伝子導入ができること, 遺伝子制御された細胞死であるアポトーシスが誘導されること, 照射された細胞での遺伝子発現が変化することが明らかとなった. 機械的エネルギーの代表とも言える超音波が遺伝子の発現および制御にも大きく関わることがわかり, 今後の治療応用が期待される.

著者関連情報
© 2007 日本ハイパーサーミア学会
前の記事 次の記事
feedback
Top