抄録
ハイパーサーミアによるがん治療を効率よく行うために, 温熱応答に関わるシグナル伝達因子のはたらきを選択的に制御し, がん細胞の増殖を抑制しようとする分子標的がん治療が近年注目されている. 温熱応答に影響を受ける細胞内シグナル伝達にはp53を介した経路, JNKを介した経路, Aktを介した経路, NBS1を介した経路, 古典的MAPキナーゼ経路およびp38-MAPキナーゼ経路がある. これらはそれぞれ細胞死, 細胞生存, 細胞増殖, および細胞分裂停止などを誘導する. 我々はこれまでにcDNAアレイとプロテインマイクロアレイを用いて, 温熱によって誘導される遺伝子とタンパク質の発現を分析してきた. この論文では, これまでの知見と我々の研究結果をふまえて, 温熱に誘導される遺伝子およびタンパク質について紹介する.