2010 年 27 巻 1 号 p. 25-30
胸壁浸潤を伴う原発性肺癌に対して術前温熱化学放射線療法を施行し, 組織学的に完全奏功が証明された一例を報告する.
症例は55歳男性. 右上葉原発性肺癌cT3N0M0, stageIIBと診断された. 腫瘍が胸壁に浸潤し, 腫瘍背側には閉塞性肺炎を伴っていた. また, 腫瘍の急速な増大傾向を認めた為, 術前に温熱化学放射線療法が施行された. 放射線は, 10 MV X線を用いて総線量40 Gy照射し, シスプラチンとビノレルビンの併用化学療法を施行した. 温熱療法はサーモトロンRF-8を使用し, 放射線照射後30分以内に1回40分, 週1回, 計4回施行した. 温熱化学放射線療法後のCTでは腫瘍の壊死性変化を認めた. 完全切除が施行され, 組織学的検査では生存腫瘍細胞を認めなかった. 17カ月経過し再発を認めていない.