日本ハイパーサーミア学会誌
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拡大肝切除におけるHeat Shock Protein 70発現の意義 : preconditioningとgeranylgeranylacetone投与の効果
櫻井 洋至野口 孝伊藤 偉織阪井田 麻祐子
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2003 年 19 巻 2 号 p. 89-98

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抄録

拡大肝切除後の残存肝障害が軽減される機序を解明することは臨床的に有意義であるが, 本研究の目的はpreconditioningやHSP誘導効果を有するgeranylgeranylacetone (GGA) 投与の細胞保護効果につき評価しシグナル伝達因子NF-kBとの関係よりHSP70の細胞保護効果を明らかにすることである.
方法 : ウィスター系雄性ラットを用い90%肝切除モデルを作成前処置なしのN群, 肝切除術48時間前にpreconditioningとして30分の肝温阻血再灌流を行うP群, 肝切除前7日間GGA 200mg/kg体重を経口投与するG群を分類.生存率, HSP70やNF-kB発現 (ウェスタンブロット法) ならびに残存肝細胞のアポトーシス (DNA fragmentation assay) につき検索.
結果 : 各群の7日生存率は N群0%, P群40%, G群62.5%.90%肝切除後のHSP70発現はP群で術前値の5倍, G群で7倍の発現増強を認めた.NF-kB p65発現はN群に比しP, G群では有意に低値に留まった.残存肝細胞のアポトーシスはP, G群に比しN群で有意に高度であった.
結論 : 広範肝切除術前の肝阻血 (preconditioning) やGGA投与は残存肝細胞のviabilityを維持し, アポトーシスを制御して術後残存肝障害を軽減する.その機序としてHSP70発現がNF-kB発現を抑制し炎症反応の過剰な応答を制御している可能性がある.

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