日本ハイパーサーミア学会誌
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デキストラン・マグネタイト複合体 (DM) を用いた携帯型誘導加温装置の開発
in vitroにおける加温特性および家兎VX-2腫瘍における抗腫瘍効果
田澤 賢次和田 重人八塚 美樹斎藤 智宏田澤 賢一長野 勇五十嵐 功一古田 勲長江 英夫
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2003 年 19 巻 2 号 p. 79-87

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抄録

デキストラン・マグネタイト複合体 (DM) はsubdomain粒子のコロイド状懸濁液であり, 交流磁界中で効率良く発熱することが知られている.DMを用いた誘導加温は, 従来の局所温熱療法の様々な問題点を克服しうる新しい方法として注目されている.臨床応用に際してより簡単に使用できることを目的とし, 携帯型の誘導加温装置の開発を行ったので本稿において報告する.
新しい装置は200Vの交流電源 (最大出力3kW) で使用が可能である.サイズは0.4×0.4×0.4mときわめて小型で, 周波数は100~500kHzの範囲で連続的に調節することが可能である. DM懸濁液の濃度は過去の実験結果を参考に, in vitroの実験では14mg Fe/ml (0.25M), 28mg Fe/ml (0.5M), 56mg Fe/ml (1.0M) を使用した.結果として1) DMの温度はDMの濃度に比例して上昇, 2) DMの温度は磁場強度の二乗に比例して上昇することが明らかになった.さらにDM濃度28mg Fe/ml, 磁束密度5.2mTの実験条件下において, DMの温度上昇は周波数299kHzで約8℃/min, 418kHzで約14℃/minであった.これらの結果は従来の装置における加温特性と同等であった.さらに家兎VX-2腫瘍において本装置による抗腫瘍効果を評価した.本装置を使用した温熱療法により, 対照群 (n=3) と比較して治療群 (n=8) では有意な腫瘍成長阻害効果が確認され, 肺転移の出現率が減少していた.以上本研究から, 局所癌治療のための本携帯型加温装置の有用性が確認された.

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