日本ハイパーサーミア学会誌
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進行肝細胞癌に対する温熱化学塞栓療法の有効性についての基礎的検討
古倉 聡兼子 俊朗飯沼 昌二西村 俊一郎松山 希一石川 剛半田 修内藤 裕二吉田 憲正吉川 敏一
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2005 年 21 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

われわれは, 切除不能肝細胞癌に対する温熱化学塞栓療法あるいは化学塞栓療法の治療効果を検討し, 腫瘍径が7cm以上の大きな腫瘍は化学塞栓療法単独ではその効果は期待できず, 温熱療法の併用ではじめて治療効果を認めた. そこで, われわれは, 腫瘍サイズと温熱化学塞栓療法の有効性との関連について, 担癌ラットモデルを用いて検討した. 肝細胞癌 (AH109A) を移植したラットをその腫瘍がまだ十分に発育していない移植5日後とすでにある程度まで発育した移植7日後の2群に分けてそれぞれを化学塞栓療法単独あるいは温熱併用化学塞栓療法を施行した場合, 腫瘍サイズの小さい時期に治療を行なった場合は, 温熱併用化学塞栓療法は, もちろんよく効くが化学塞栓療法単独でも満足いく治療効果が得られた. 一方, 腫瘍サイズが大きくなってから治療をした場合には化学塞栓療法単独では効果を認めず, 化学塞栓療法に温熱療法を併用してはじめて, その後の腫瘍の発育を抑制できた. 以上の臨床および動物実験結果は, 化学塞栓療法単独での治療には, 腫瘍の大きさから治療効果に限界があり, 大きくなった腫瘍には温熱療法の併用が必要であることを示している. 画像診断の進歩により, 最近ではかなり小さな腫瘍の段階で肝細胞癌が発見されることが多くなってきた. この時期に発見された肝細胞癌は, 肝切除でも化学塞栓療法でもあるいは近年急速に普及してきた経皮的局所療法 (ラジオ波など) のいずれでも根治可能であるが, 問題は, 大きく発育してから発見された肝細胞癌や多発肝癌である. これらは, 肝切除も化学塞栓療法も経皮的局所療法もいずれも単独では, 満足いく治療効果は期待出来ない. しかも, こういった症例の場合には肝予備能の低下している場合が多く, それを考慮して治療をする必要がある. 幸い, 温熱療法は正常肝への影響がほとんどないことから肝予備能の極めて低下している場合でも安全に施行可能である. したがって, 今回の検討から, 大きく発育してから発見された肝細胞癌や多発肝癌の場合には, 温熱併用化学塞栓療法を施行すべきと考える.

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