抄録
【はじめに】<BR>アキレス腱断裂は、スポーツ障害の中でも発生頻度は高く前十字靭帯断裂と並んで最も重傷度の高い疾患である。治療方法は、手術治療と保存治療とに大別される。当院では保存治療により競技復帰までのリハビリテーションを実施している。今回、剣道により受傷した10代半ばの症例に対して保存治療にて理学療法を施行した。発生メカニズムの考察と再断裂に対するリスク管理について報告する。<BR>【症例紹介】<BR>10代半ば女性。受傷機転は、剣道の練習中に左足で蹴り出した後、振り返った時に受傷した。剣道歴6年のキャリアがあり、部活の練習は週に6回であった。ホープは、早期の競技復帰である。<BR>【当院の保存治療スケジュール】<BR>受傷から3週間まで最大底屈位でギプス固定、非荷重でフロアタッチである。3週~4週で楔型補高短下肢装具に移行し、9週~10週までに踵部の楔状パッドを外していく。この時期の就寝時はシーネ固定をする。10週移行でパッドが全て外れたら、室内で装具なし歩行を許可。12週以降で外出時装具なし歩行の許可となる。【理学療法評価】理学療法は、受傷後9週目より開始。Thompson squeeze testは、健側と比して減弱。患側足関節関節可動域は、背屈0°、膝伸展位背屈0°、底屈45°。下腿最大周径は、右側30.5_cm_、左側29.5_cm_。足関節周囲筋の徒手筋力検査は、左側は3~4。<BR>【理学療法】<BR>9週目より開始し、下腿三頭筋のマッサージ及びストレッチ、距腿関節のモビライゼーション、足関節底背屈・内外反の抵抗運動、坐位・立位で踵部挙上、自転車エルゴメーターを実施。【理学療法経過】理学療法開始から4週目のThompson squeeze testは、健側に比してやや減弱していた。初期評価時と比べ若干の回復傾向が認められた。足関節可動域は、背屈15°、膝伸展位背屈5°。<BR>【考察】<BR>今回の報告では、発生要因の1つとして考えた腓腹筋の伸張性低下にともなう伸張反射に着目してリスク管理指導を行なった。症例は、剣道の競技中に患側で蹴り出した後、振り向いたところで受傷している。蹴り出す時には、背屈位から急な膝伸展・足関節底屈の動きを必要とする。この動作の繰り返しにより、腓腹筋に乳酸など疲労物質が蓄積しγループの興奮性を高め、筋の伸張性は低下し伸張反射が生じやすい状態になっていたと推察した。伸張反射後の急激な下腿三頭筋の収縮が繰り返されたことが受傷要因の1つではないかと考えた。関節可動域検査の結果からも二関節筋である腓腹筋の伸張性低下が確認された。このことから、日常生活でのリスク管理は、下腿三頭筋に伸張反射が生じやすい状況に注意するように指導した。今後競技復帰した時に、腓腹筋の伸張性向上や疲労物質の蓄積をさけることによって、γループの興奮性を低下させていくことが、本症例にとって再発を防止する1つの方法論ではないかと考察した。