東海北陸理学療法学術大会誌
第23回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O005
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義歯の有無における姿勢・動作の相違の検討
*内原 大輔
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キーワード: 義歯, 姿勢・動作, 評価
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抄録
【はじめに】
 義歯は失われた歯,口腔粘膜など軟組織の代わりになる人工臓器である。我々理学療法士が関わる高齢者は義歯を使用している者も少なくない。
 噛み合わせの調整により身体能力の向上を得られるという報告はなされているが,義歯の有無により姿勢・動作が変化するのかを言及した報告は少ない。
本研究では義歯の有無という身体条件の違いにより姿勢・動作の相違を評価し,その影響を検討したので報告する。
【方法】
 対象は脳卒中左片麻痺者1例。下肢B.R.S.5,筋力はMMTで非麻痺側上下肢4,著明な高次脳機能障害は認めず,T字杖にて院内歩行自立であった。義歯は歯科医の調整した両顎義歯を使用。また,義歯無にて麻痺側下肢の挙げ難さを訴えていた。
 尚,対象者とその家族には本研究の概要を説明し同意を得て測定を行った。
測定は身体に15標点(左右肩峰,肘頭,尺骨,股関節中心,膝関節中心,外果,第5中足骨頭)を付け,静止立位を5秒間保持後,合図にて歩き始めた。義歯の有無の条件で,3回ずつ測定した。歩き始めは麻痺側下肢から振り出し,補装具はT字杖を使用。足の挙げ易さも聴取した。
 測定機器は三次元動作解析装置(VICON612 Oxford Metrics社製),床反力計を使用し,立位時の下肢関節角度・下肢関節モーメント,歩き始めから1歩目までの非麻痺側股関節モーメント,第5中足骨頭の床面からの距離を測定した。尚,立位保持の関節角度・関節モーメントは5秒間の中1秒間の平均値を算出した。
【結果】
 静止立位時の各関節屈曲角度は左下肢義歯有で股関節3.2度,膝関節9.3度,足関節-9.7度,義歯無で股関節4.8度,膝関節10.9度,足関節-8.5度であった.関節モーメントは義歯有足関節底屈モーメント16.2N,義歯無で21.3Nであった.歩き始めの麻痺側T.O時の右股関節モーメントは義歯有は義歯無より小さかった.第5中足骨頭の最大離床距離は両条件とも5cmであった.対象者は義歯有の方が足を挙げ易いと訴えた.
【考察】
 立位保持にて義歯有で下肢関節が伸展傾向にあった。つまり,体幹・下肢が伸展し「起きた」状態となっていた。これは,両顎義歯を装着したことにより,下顎骨が引き下がり,頚椎が屈曲,反射的に側頭筋や頬骨下顎筋などにより下顎骨を後上方へ引き上げ,頭位の調整を行うため僧帽筋や肩甲挙筋を収縮させ頭部を後方に引く動作が起こり,シナジーにより身体の伸展筋群が活性化され引き起こされたのではないかと考えた。歩き始めに非麻痺側股関節伸展モーメントが小さいのは,身体の伸展筋群が活性化されたと共に,頭位が後方に位置し,矢状面にて頭部と股関節中心の位置が近づいたため,小さい力で支持できたものと考える。
【まとめ】
1.義歯の有無による姿勢・動作の検討をおこなった。
2.義歯の有無が姿勢・動作に少なからず影響を及ぼしていた。
3.義歯のチェックアウトには姿勢・動作の評価も必要ではないかと考えられた。
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© 2007 東海北陸理学療法学術大会
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