東海北陸理学療法学術大会誌
第23回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O065
会議情報

育成年代におけるサッカー選手の傷害発生に関する調査
*椎木 孝道齊藤 和快若松 昌典福岡 重雄中山 貴幸
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】 我々は2005年より育成年代のサッカー選手に対してメディカルサポートを行っている。この2年間でみられた傷害発生状況を把握し、予防の可能性を探索することを目的に調査した。 【対象・方法】 クラブチーム所属の中学1年から高校3年の男子サッカー選手83名(2005年)、90名(2006年)を対象とした。調査期間は2005~2006年の2年間とした。対象者には研究の意味を説明し、同意を得た。練習・試合参加毎に作成しているリハビリ報告書から、休期間(全体練習から外れた期間)が2週間以上の選手を抜粋し、学年、外傷・障害、傷害の種類、部位、休期間を集計した。 【結果】 全発生件数は124件(2005年46件、2006年78件)で、外傷69件、障害51件、その他4件(骨肉腫、第2ケーラー病、盲腸)であった。学年別にみると、2005年は、中1は11件(23.9_%_)、中2は9件(19.6_%_)、中3は13件(28.3_%_)、高1は4件(8.7_%_)、高2は3件(6.5_%_)、高3は6件(13.0_%_)であった。2006年は、中1は9件(11.5_%_)、中2は23件(29.5_%_)、中3は14件(17.9_%_)、高1は13件(16.7_%_)、高2は9件(11.5_%_)、高3は10件(12.8_%_)であった。種類別にみると、捻挫43件(34.7_%_)、筋腱付着部障害16件(12.9_%_)、打撲14件(11.3_%_)、腰痛10件(8.1_%_)、疲労骨折9件(7.3_%_)、骨折7件(5.6_%_)、その他25件(20.2_%_)であった。部位別にみると、顔1件(0.8_%_)、上肢6件(4.8_%_)、腰・腹部15件(12.1_%_)、骨盤・股関節9件(7.3_%_)、大腿17件(13.7_%_)、膝13件(10.5_%_)、下腿6件(4.8_%_)、足関節・足部57件(46.0_%_)であった。外傷後の休期間は、平均32.9日(2005年)、30.8日(2006年)であり、休期間が1ヶ月以上の重症例は、2005年が26件(56.5_%_)、2006年が29件(37.2_%_)であった。 【考察】 育成年代のサッカーでは外傷よりも障害の発生頻度が高いといわれているが、今回の調査結果は外傷よりも障害の方が少なかった。育成年代特有の疾患とされる筋腱付着部障害の発生は、下肢の傷害に対する割合が15.7_%_と少なく、休期間が平均21.0日と外傷後の休期間よりも短い傾向がみられた。この原因は、練習・試合現場で実際に理学療法士が選手の状態をチェックして早めの対応ができること、監督・コーチの傷害に対する理解とメディカルスタッフとの連携が良好で、痛みを抱える選手を重症化させない環境が整っているからではないかと考えた。〈BR〉また、サッカーは下肢でのボールコントロールを主としたコンタクトスポーツであるため、下肢の傷害が多いといわれている。今回の調査でも下肢の傷害が多くみられ、特に足関節・足部の捻挫が外傷の58.0_%_を占めた。その殆どが非コンタクトでの受傷であり、受傷した選手にアジリティーやバランス能力の低下がみられる傾向があったことから、予防として体幹筋力やフットワークを含めたボディコントロール能力の向上を目的としたトレーニングが必要であると思われた。

著者関連情報
© 2007 東海北陸理学療法学術大会
前の記事 次の記事
feedback
Top