東海北陸理学療法学術大会誌
第23回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O066
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肩関節外旋運動時にみられる体幹機能について
投球障害の理学療法にむけて
*川崎 秀和長壁 円鵜飼 啓史中島 啓照松本 康嗣内藤 浩一
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抄録

【目的】上肢は肩甲骨を介して体幹に連結し、肩甲骨の運動は肩甲上腕関節の運動をより効率化させ、広範囲な可動性を与える役割を担っている。近年コアスタビリティの概念がスポーツ障害予防に重要であるといわれているが、体幹筋群と上肢の関連性について十分に知られていない。今回、肩関節外旋筋力発揮時における体幹筋活動の特徴を表面筋電図にて検討を行った。
【対象と方法】健常者7名(平均年齢28.1±6.3歳 平均身長171.0±4.2cm 平均体重65.8±2.3kg)両側14肢を対象とした。被検者には、本研究の趣旨を説明し同意を得た。表面筋電計はNoraxon社製TeleMyo2400Tを用い、被検筋は運動側の棘下筋、僧帽筋下部、両側の外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋上部とし、電極部位はNgらによる研究結果を参照し貼付した。計測肢位は端座位にて肩関節外転90度の高さで肘を台に置き、肘関節屈曲90°前腕回内外中間位になるよう調整した。運動課題は肩関節外旋角度を0°、45°、90°でそれぞれ肩関節外旋を等尺性収縮で5秒間保持した。尚、外旋等尺性収縮は体重の5%の負荷量(HOGGAN HEALTH社製Micro FET2で視認)で施行した。得られた筋電図波形は整流化し、最も安定した1秒間の平均振幅を算出し、最大随意収縮の値で除した(以下%MVC)。統計処理は反復測定による一元配置分散分析、多重比較を行い危険率は5%未満とした。
【結果】%MVCは棘下筋が0°で25.7%、45°で40.1%、90°で72.0%であった。僧帽筋下部の%MVCは0°で17.2%、45°で28.7%、90°で53.3%であった。外旋角度が増大するに従い、漸増的に両筋の活動量増加がみられた(p<0.05)。体幹筋では運動側の同側内腹斜筋と、反対側外腹斜筋の%MVCが外旋角90°で他の角度より有意に増加していた(p<0.05)。
【考察】肩関節外旋角度の増加に伴い、棘下筋や僧帽筋下部の活動量も増加がみられた。外旋角度が増加するに従い、棘下筋の起始・停止部が近づくことで筋長が短くなり、設定した負荷量を維持するために筋活動量を増加させたものと思われる。また肩関節外転位での外旋運動をより効率化するために肩甲骨は内転位で固定される必要がある。肩甲骨固定筋の一つである僧帽筋下部はT7~T12の棘突起に起始し、肩甲骨棘三角部に停止しているため、外旋の固定として求心性収縮が生じると体幹は運動側とは反体側へ回旋する力が生じると思われる。運動側の内腹斜筋と反対側の外腹斜筋活動量が上昇したのは、この体幹の回旋不安定性を安定させるために生じたものと推察した。臨床において投球障害のなかには、肩甲胸郭関節機能の低下を基盤としているものが存在するが、肩甲胸郭関節へのアプローチのみならず体幹機能を考慮した理学療法の重要性が示唆された。

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© 2007 東海北陸理学療法学術大会
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