抄録
【はじめに】現在リハビリテーション領域では、電気刺激が筋力増強の目的で用いられている。とりわけ近年は、高周波刺激が皮膚の刺激が少なく深部にまで刺激を加えることができるとされている。本研究は高周波刺激が骨格筋に及ぼす影響について超微形態学的に検討した。
【方法】<高周波刺激>実験にはwister系の雄ラット(8週令)6匹を用いた。麻酔下にて通電を行った。通電部位は前脛骨筋で、針を用いて通電を行った。針が外れないよう刺激部位をテープで固定した。刺激は高周波刺激装置を用い、10KHzで前脛骨筋の収縮が認められる強度で20分間間歇的に通電した。<組織観察>刺激終了後、生理食塩水を還流させ血液を除去した後、2.5%グルタールアルデヒド固定液50ccを還流して筋を固定し、前脛骨筋を採取した。採取した前脛骨筋はグルタールアルデヒド液に1日浸した後、1%オスミウム酸溶液に1時間浸し、その後定法によりエタノール系列で脱水を行い、エポキシ樹脂で包埋した。その後70nmの厚さで横断と縦断に薄切し、1%酢酸ウラニールと鉛染色液で電子染色を行い、電子顕微鏡にて観察した。本実験の全過程でラットの処置に関しては「名古屋市立大学医学部動物実験ガイドライン」を遵守した。
【結果】非刺激群の横断面では、ミトコンドリアが血管近くの筋周膜付近に多く存在し、筋原繊維周囲にも筋原繊維を取り巻くように配列しており、血管の形状は多くは楕円形であった。縦断面では配置に粗密があるが、横紋の明帯部分の付近を中心にミトコンドリアが多数観察され、ミトコンドリアが長軸に沿って集中的に観察される部位も散見された。一方刺激群の横断面では、非刺激群に比べミトコンドリアが筋原繊維周囲に多く観察された。また、そのうちの多くには其質の破壊が観察され、内膜のクリステが極めて不明瞭なものも散見された。血管の形状は楕円形から円形に変わり、その直径は拡大していた。縦断面では、ある筋原繊維間には多くの場所でミトコンドリアが長軸に沿って集中して長細く配列していることが観察された。
【考察】非刺激群の横断面で、刺激群の血管の形状が変化したことは筋収縮により血流量が増加していることを示している。刺激群の血管が拡張していた理由として、電気刺激による筋収縮により、活動筋に重点的に血流が配分されたのではないかと推測される。また、筋の収縮は滑走説が有力であるが、その際にはATPが分解してできるエネルギーを必要とする。ミトコンドリアはATPを供給するために筋原繊維の周囲に点在しているが、今回筋を直接刺激し、収縮させたことにより、通常より強い筋疲労が示唆される。そのためミトコンドリアは効率良くエネルギーを供給できるよう配列をなした後、ATP供給が追いつかず、破壊につながったのではないかと思われる。