抄録
【はじめに】
脳性まひ(以下CP)児は身体の姿勢・動作機能だけでなく、自律神経系の反応性の低下などの種々の神経機能低下が報告されている。なかでも、自律神経は身体機能の調節に関与していることから、CP児においても規則正しい日常生活をおくるためには自律神経系の改善が重要である。そこで、抗重力姿勢活動を中心としたリハビリテーションがCP児の自律神経系に及ぼす影響について検討した。
【方法】
1.対象:外来通院中のCP児12例(患児群)と同年齢の健康児11例(健康児群)とした。さらに患児群を粗大運動能力分類システムによって5段階に分類し、I、II、IIIを軽症群、IV、Vを重症群とした。
2.リハビリテーションの内容:リハビリテーションは抗重力姿勢活動を中心に実施した。尚、時間は40分間とした。
3.自律神経系の評価:加速度脈波計による心拍変動を計測した。これにより得られた数値のうちLF/HF値を自律神経活動の指標とした。患児群はリハビリテーション前後に測定し、健康児群は安静時のみ測定を行った。
【結果】
1.リハビリテーション前の軽・重症群と健康児群の比較:重症群は、LF/HF値が0.58±0.32であり、健康児群の1.02±0.61に対して有意に低値を示した(p<0.05)。軽症群と健康児群には有意差が認められなかった。
2.患児群のリハビリテーション前後の比較:LF/HF値は、リハビリテーション前が0.89±0.97、リハビリテーション後は1.50±1.01であり、リハビリテーション後が有意に高値を示した(p<0.05)。
3.軽・重症群のリハビリテーション前後の比較:重症群は、LF/HF値がリハビリテーション前の0.58±0.32から、リハビリテーション後は1.30±0.95となり、リハビリテーション後が有意に高値を示した(p<0.05)。軽症群は変化を認めなかった。
4.リハビリテーション後の軽・重症群と健康児群の比較:LF/HF値は、3群で有意差を認めなかった。
【考察】
自律神経系の指標として用いたLF/HFは交換神経機能の指標とされていることから、全症例におけるリハビリテーション前後の比較では、LF/HF値の有意な上昇がみられ、交感神経系の亢進が考えられた。さらに、軽症群より重症群の方が交感神経系の亢進が大きいと考えられた。このことは、自律神経系の反応性の低下が報告されている重症児においても、加速度脈波のLF/HF値を指標とすることによって重症児の交感神経系の反応性を評価できる可能性が考えられた。また、リハビリテーション後の重症群と健康児群との間に有意差が認められなくなったことは、リハビリテーションによって健康児群と同等の自律神経系のバランスを示した可能性が考えられた。