抄録
【目的】
近年、様々な障害に対して、トレッドミル歩行の研究成果が報告されている。しかし、介入の際に重要な要因となる歩行速度を決定する基準は確立していない。
脳性麻痺児(以下CP児)では、平地歩行での快適歩行速度(以下、快適速度)をそのままトレッドミル歩行速度として適用すると異なる反応が得られることがある。これは、日常で多く経験している平地歩行での快適速度とトレッドミル歩行では生体反応が異なることが推測される。
そこで本研究では、トレッドミル歩行と平地歩行における快適歩行速度を比較し、トレッドミル歩行における特性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
Aセンターに入所するCP児5名(平均15歳2ヶ月)を対象とした。対象者は全員、日常生活においてコミュニケーションの問題はなかった。
快適速度とは、対象者が一番楽な歩行速度とした。比較のため最速速度も記録したが、最速速度とは、走ることなく歩行できる最大の速度とした。
平地歩行では、各歩行速度で14mの平らな直線を3回ずつ歩行した。トレッドミル歩行では、まず快適速度を決定し、その後手すりを掴んで1分間歩行した。次に、最速速度を決定し、同様に1分間歩行した。
なお、歩行の際は普段使用する歩行補助具を用いた。測定は、安静時の脈拍に戻った時点、もしくは5分程休憩をとった時点で再開した。両歩行ともにビデオ撮影を行い、歩行速度、歩幅、ケイデンスを算出した。
対象者のうち2名については、後日同様の測定を行い、再現性を変動係数(以下CV)で示した。
また、比較のため、健常人5名(平均24歳4ヶ月)について、上記と同様の方法でデータ収集した。
研究にあたって、すべての対象者に説明の上で同意を得た。
【結果】
CP児では、トレッドミル歩行の快適速度は平均1.96±0.42km/hで、平地歩行の快適速度は平均3.56±0.31km/hであった。また、歩幅はトレッドミル歩行での快適速度で平均42.0±7.3cm、平地歩行での快適速度で平均56.3±6.9cmであった。ケイデンスに関しても、快適速度、最速速度ともにトレッドミル歩行より平地歩行で大きかった。
CP児における各歩行での再現性は、トレッドミル歩行での快適速度でのCVが6.4%、平地歩行での快適速度でのCVが0.8%と高い再現性を示した。
また、最速速度および健常人の測定においても概ね同様の変化を示した。
【結論】
CP児ではトレッドミル歩行は平地歩行に比べて快適速度は有意に遅いことが明らかになった。また、再現性は高いがトレッドミル歩行では平地歩行に比べて歩行パラメータのばらつきが大きいことが示された。