抄録
【背景・目的】近年、転倒による骨折が身体活動の減少を助長し、結果的に寝たきりとなる高齢者が増加している。基礎体力や骨量減少がその主な原因であると考えられ、骨密度と身体活動との関連が述べられている。一方、衝撃力の強い運動は骨量を高めるとの報告もあるが、行っているスポーツの種類で運動の強さを段階付けする主観的な方法で評価しており、運動強度を客観的に評価して骨密度との関連についての報告はない。そこで、運動強度を客観的に評価し、骨密度と運動強度との関連を検討するとともに、骨密度と強く関連する要因について検討した。
【方法】対象は地域の転倒予防教室、健康教室、老人クラブ、市民講座の参加者で、地域在住の前期高齢女性36名(69.1±2.9歳)とした。骨密度は踵骨の定量的超音波測定法[QOS]を採用した。身体活動は、歩数(歩)、運動量(kcal)をライフコーダEX(スズケン社製)によって自動的に算出されたものの1週間分の和、分類した低、中、高の各運動強度の1週間分の合計時間(秒)をそれぞれ求めた。現在及び過去の運動習慣は国民栄養調査に準じ(1回30分以上、週2回以上、1年以上運動を継続しているか)、カルシウム摂取はカルシウム自己チェック表にて調査した。骨密度と各要因間の相関分析にはSpearmanの順位相関係数(ρ)を用いた。現在及び過去の運動習慣は運動習慣の有無で群分けしてMann-WhitneyのU検定を行い、骨密度の差を検討した。なお、有意水準は5%未満とした。
【結果】骨密度と高強度(ρ=0.10)、中強度(ρ=0.06)、低強度(ρ=0.04)、いずれも運動強度との相関はみられず、統計的に有意な相関が認められた要因は年齢(ρ=-0.36)であった。その他の要因は、それぞれ歩数(ρ=0.06)、運動量(ρ=0.15)、カルシウム自己チェック表(ρ=0.06)で有意な相関はみられなかった。また、骨密度と過去の運動習慣(p=0.41)とは有意な差はみられなかったが、現在の運動習慣(p=0.05)には有意な差が認められた。
【考察】骨密度と運動強度との関連はみられず、現在の運動習慣(1年以上運動を継続している)に関連がみられた。このことから、一時的な強い運動が骨密度に与える影響は少なく、運動の強さに関わらず、現在の継続した運動が骨密度の減少を緩やかにする可能性が推察された。