東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P079
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訪問リハにてADL指導ができ,活動量・活動意欲が向上した一症例
*林 真由美井舟 正秀諏訪 勝志川北 慎一郎久保 佳子
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キーワード: 訪問リハ, ADL指導, 活動量
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抄録

【はじめに】
今回,COPDがあり肺炎の急性増悪にて入院した症例を担当した.自宅生活を想定したADL指導が行なえないまま自宅退院となったが,訪問リハにて入院中にできなかった指導ができ,活動意欲・活動量の向上がみられたので若干の考察を加え報告する.なお,今回の発表に関してその趣旨を説明し,症例・ご家族様に同意を得ている.
【症例紹介】
80歳代,男性.診断名:肺炎・COPD.職歴:僧侶.初回入院前のADLは自立.妻と二人暮し.
【現病歴】
平成19年6月上旬より呼吸苦と右胸部の疼痛あり.7月上旬当院入院し,8月上旬よりPT開始.8月下旬,訪問リハの希望なく自宅退院し,初めてのHOT導入ということで9月上旬より訪問看護開始.その後肺炎により何度か入退院を繰り返す.自宅にて入浴希望あり,訪問看護スタッフに同行し入浴評価・指導し,リハの必要性を実感していただき11月上旬より訪問リハ開始.
【8月退院時の状態】
両下肢の筋力は4-.両膝に疼痛あり.歩行は携帯酸素を引き,ふらつきあり.耐久性は10~15m程度.動作時SpO2が70%台後半にまで低下することあり.リハ以外では殆ど病室から出ることなし.排泄も病室のトイレを使用.入浴動作・更衣動作は呼吸苦の訴えなく,洗体・洗髪共に自力で可能だがSpO2は80%台に低下あり.入浴に関しては症例・妻に指導を行った.呼吸と動作の同調は,指導・練習しても上手にできなかった.症例・妻共に疾患に対して関心がなく,理解度も低かった.
【訪問リハ開始後1ヶ月】
家屋構造は1階・2階共に広く,部屋数も多い.居室は2階で1階へは殆ど行かない.部屋から出ることが殆どないため掃除が十分に行えていなかった.そこで移動時に休息をとるため廊下に椅子を設置し,入浴方法の指導や1階での昼食を摂ることなどでトイレ以外でも部屋から出る習慣づけをした.よって活動量が向上し,動くことに対して意欲も向上した.また,感染予防のために部屋の換気や掃除,加湿の指導も行った.さらに退院時には困難であった呼吸方法が,少なくとも指導時は上手になってきた.
【考察】
退院後,訪問リハにて初回入院時に行えなかったADL指導・環境整備が行え,更に屋内移動・入浴など活動量を向上させることができた.症例・妻の病識の乏しさもあり,特に入院生活は活動性が低く呼吸苦などの自覚症状もなく,生活困難も感じず,休憩しながら生活を送れば特に問題はないと考えていた.入院中は把握できなかった自宅での生活も,退院され,実際の生活に困難さが生じ,実際の生活場面でアプローチすることで症例・妻共に疾患に対し関心を持っていただき,活動意欲や活動性が向上したと思われる.また,医療機関の他部門と連携をさらに充実させ,よりよい在宅生活を送れるように援助していきたい.

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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