抄録
【目的】健康関連体力の1つに呼吸循環フィットネス(CRフィットネス)があげられる。一般にCRフィットネスの指標として、自転車エルゴメーター・トレッドミル等で運動負荷テストを行い、最大酸素摂取量(VO2max)の測定が行われる。一方、障害者では、運動負荷テストを実施することは困難である場合や、可能であったとしても最大負荷まで引き上げることは難しいことが多い。本研究は、障害者のCRフィットネスレベルを運動時の心拍数(HR)から予測可能であるか調べた。
【方法】障害者25名を対象とし、自転車エルゴメーターでの漸増負荷(ランプ負荷)による運動負荷テストを行った。テスト中はPOLARスポーツ心拍計を使用、HRをR-R間隔で連続モニターし、記録した。負荷は10W3分間のウォーミングアップから開始し、その後1分毎に5W増加するランプ負荷とした。HRが120beats・min-1のときのパワーアウトプット(W)を記録した。その後、心拍数がテスト開始前の10%以内になるまで安静とした。引き続きVO2maxを算出するために、自転車エルゴメーターで3段階負荷の最大下運動テストを行った。最大下運動テストでは呼気ガス分析器を用い酸素摂取量(VO2)の測定と同時にHRを測定した。VO2とHRの直線関係および年齢に基づく予想最大HR(220-年齢)からVO2maxを算出した。ランプ負荷テストにおけるHR120beats・min-1 のWと最大下運動テストから算出したVO2maxの関連を分析した。
【結果】被験者全員が自転車エルゴメーターでのテスト遂行が可能であり、内容を理解する知的能力を有しており、テストは完遂された。ランプ負荷テストにおけるHR120beats・min-1 のWは、平均44.4±24.5W(10~104W)であった。最大下運動テストから算出したVO2maxは、平均1.6±0.6L・min-1(0.8~3.3 L・min-1)であった。HR120beats・min-1 のWとVO2maxはピアソンの相関分析でr=0.75、p<0.0001と有意な相関がみられた。
【考察】HR120beats・min-1 のWとVO2maxに有意な相関がみられたことから、運動時の心拍数からVO2maxの予測が可能であることが明らかとなった。このことから、最大運動が不可能な障害者や疾患により運動制限のある人でも、最大運動テストを行うことなくHRからCRフィットネスレベルの予測が可能となることが明らかとなった。
【まとめ】運動時のHRからVO2maxの予測は可能であり、CRフィットネス予測に有用な方法であると考える。