東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P097
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100円で出来る車椅子坐位補助具を作製して
*吉村 孝之小島 佳子櫻井 健司高田 祥尚小森 愛子
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抄録

【目的】
介護老人保健施設(以下老健)では多くの入所者が日中、車椅子で過ごしている。坐位姿勢保持が困難になると、上肢支持を要す坐位姿勢となり、日常生活活動(以下ADL)が障害されるという悪循環になる。木之瀬らは簡易坐位能力分類表(以下分類表)によって坐位姿勢を評価し、坐位に問題がある場合はモジュラー型車椅子を処方している。しかし、当老健の車椅子は標準型であるため、個々に適した処方は困難である。そこで、良坐位姿勢保持を目的とした車椅子坐位補助具(以下坐位補助具)を安価に作製することで、ADLにどのような影響が出るのかを研究したので、報告する。
【方法】
1.対象
当老健の全入所者113名の坐位能力を分類表にて評価した。坐位保持のために上肢支持を要す38名のうち、コミュニケーション可能で、時間経過とともに骨盤が後傾し、姿勢が崩れる2名を対象とした。
2.方法
坐位補助具を作製することで車椅子使用時の良坐位姿勢保持を試みた。予備実験として大渕らの先行研究に準じ、坐位補助具を作製したところ、「木製であるため殿部に痛みが生じる」「坐位補助具がシート上で動いてしまう」「個々に坐位姿勢が異なる為、繰り抜く部分を個別に設定する必要がある」といった問題が生じた。そこで我々は、素材を100円ショップで購入可能なプラスティックボードに変更し、坐骨結節の位置を計測することで、個別に坐位補助具を作製した。坐位補助具を車椅子シート上に固定し、その上に使い慣れたクッションを置いて使用した。費用は100円で、安価に作製することが出来た.
坐位補助具使用前後でのADL変化を検討するために、車椅子自己駆動後の坐位姿勢、食事動作の様子を観察した。
【結果】
坐位補助具を使用すると車椅子自己駆動後の坐位姿勢の崩れが少なくなった。自己駆動速度は有意差を認めなかった。
食事動作では介助量が軽減し、食事時間も短縮した。1名は処方後、自ら麻痺側上肢を使用して食事される様子が観察できた。
【考察】
坐位にて次第に後傾してしまう骨盤を中間位に保持することで、体幹の前傾や頸部中間位保持がしやすくなるため、リーチ範囲や視野範囲の拡大につながり、ADLが遂行しやすくなると考えられる。
当老健の多くの入所者は高齢で慢性期であることから、著しい機能回復は難しいため、使用する道具への工夫が重要となる。まだ研究段階であり、実用化に向けての継続研究が必要ではあるが、限られた予算、環境、道具の中で、症例に適した坐位補助具を処方するための一つの方法を提案できたのではないかと考えられる。
【まとめ】
・骨盤を固定するため上肢が使いやすくなり、食事時間の短縮や食べこぼしの減少、麻痺側の積極的な使用が観察された。
・車椅子自己駆動後の坐位姿勢が崩れにくくなった。
・100円という安価で作製したため多くの入所者に処方しやすくなった。
・長時間使用時の皮膚に及ぼす影響、坐位補助具の耐久性の検討が必要である。

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© 2008 東海北陸理学療法学術大会
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