東海北陸理学療法学術大会誌
第24回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P099
会議情報

在宅復帰支援の介入に対し拒否を示した症例
*谷口 あゆみ
著者情報
キーワード: 症例報告, 在宅復帰, 片麻痺
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
今回,退院前訪問や自宅の情報収集など在宅復帰へ向けたアプローチに対して強い拒否を示したが,根気強く対応をすることで自宅退院が可能となった症例を経験したので報告する.
【症例紹介】
56歳男性.平成18年11月17日発症の右被殻・視床出血,開頭血腫除去術施行.左片麻痺(左利き).発症から約半年後当院入院.本人の希望は職場復帰(運送業)であり,家族構成は妻,長女,次男の4人家族で,キーパーソンは妻である.
【入院時評価】
ブルンストロームステージは左上肢2手指2下肢2,麻痺側上肢廃用手.筋力は右上下肢MMT3~4レベル.感覚は表在,深部感覚ともに消失.コミュニケーションは構音障害あるも問題なし.院内移動は車椅子にて自立.機能的自立度評価表(以下FIMと略す)は83点であった.改訂長谷川式簡易知能評価スケール26点.リハビリテーション(以下リハビリと略す)に対し積極的であったが,障害受容ができておらず,家族(妻)も障害受容できていなかった.
【経過】
リハビリ開始時はプラスチック短下肢装具(以下SHBと略す)装着,四点杖使用し30m程度歩行可能であったが,軽介助レベルであった.理学療法では歩行練習を中心に実施し,退院時に歩行はSHB装着しT字杖にて60m可能となるも,注意障害や病識の低下などにより,監視ははずせなかった.また,FIMは91点であり,清拭,浴槽への移乗,移動の項目が低かった.
【考察】
リハビリ開始時に本人・家族(妻)を含め,カンファレンスを行ったが,両者ともに障害受容ができておらず,更にコメディカルスタッフからの援助に対してはすべて強い拒否の姿勢であった.その後,何度もカンファレンスを行ったが,両者の態度は変わらなかったが,本人は初めての外泊の際,病前の生活が困難であることが理解できた.それ以降は本人だけは退院へ向けての支援に理解を示し,スタッフに対して柔軟な姿勢がみられるようになった.退院へ向けての問題解決として、スタッフミーティングでは,頻回な外出や外泊を勧め,必要な情報を本人から得,その情報をスタッフ間で共有し,それぞれの専門分野での問題解決方法を計り,本人に提示した.その解決方法を本人は自宅で実際に行なったり,あるいは必要な情報を本人から妻へ提供するなどを繰り返すことで,最終的には入浴は通所サービスを利用し自宅退院可能となった.

著者関連情報
© 2008 東海北陸理学療法学術大会
前の記事 次の記事
feedback
Top