東海北陸理学療法学術大会誌
第25回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: C-5
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活動性が著しく低下した視力障害を有する症例
~ADL自立度向上をめざして~
*宮守 祐輝平 昇市奥佐 千恵笠原 知子川口 久美子金子 正樹菊谷 恭子
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キーワード: 廃用, 全盲, 訪問リハ
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抄録

<はじめに>
 今回,入院前はセルフケアが自立していたが,入院中に活動性が低下し,全介助状態になった視力障害を有する症例を担当する機会を得た.本症例に対し,接し方の工夫によって信頼性のある評価結果が得られ,訪問リハ介入へと繋がり,ADL自立度が向上した経験に若干の考察を加え報告する.
<症例紹介>
 70代男性 30代後半より全盲
<現病歴>
 胃潰瘍のため活動困難となり入院.臥床状態が続き活動性低下.ADLは食事以外全介助,廃用症候群により理学療法開始.
<経過>
 初回のリハ介入時,自発運動はみられず指示動作も拒否のため困難であった.これは本症例が突如自宅から病室という異なる環境におかれたことで,視力障害の影響により混乱と不安感が生じ,動作に対する恐怖心から動けない状況だったことが最も大きな原因と考えた.
 そこで理学療法を施行する際に,声のトーン・言葉選び・触れ方を工夫することで,恐怖心や不安感を除去し,安心感・信頼感を与え動作できるよう試みた.結果,徐々に自発運動を促すことができ,ADLの拡大・歩行獲得に必要な身体機能を有し,排泄動作等ADL自立意欲があることも評価できた.しかし,院内ADLに変化はみられなかった.これは本症例の視力障害の影響によると考え,ADL拡大のためには在宅生活場面での動作を行うことが必要ではないかと考え,訪問リハを含めた退院計画を進めた.訪問リハ介入3週で,排泄動作は誘導のみで可能になるなど,ADL自立度の向上がみられた.
<まとめ>
 本症例は視力障害を有し,自発運動や院内ADLの拡大に難渋した.そのため接し方や関わり方の工夫が,動作を促し身体機能を評価するために重要であった.またADL拡大のためには環境に対するアプローチも必要であり,訪問リハ介入によって在宅ADL自立度は向上した.ADL向上には接し方や環境なども考慮することが重要だと,本症例を通じ経験できた.

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© 2009 東海北陸理学療法学術大会
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