東海北陸理学療法学術大会誌
第25回東海北陸理学療法学術大会
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  • ギプス後面開窓下に行う後深層筋群の拘縮予防
    中宿 伸哉, 山田 高士, 赤羽根 良和, 林 典雄
    セッションID: S-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】
    我々は、足関節部骨折に対する骨接合術において、術後ギプス後面の一部を開窓し、後深層筋群の拘縮予防を積極的に実施することで、早期の可動域改善が得られている。今回、早期運動療法を実施した症例についての成績を検討したので報告する。
    【対象】
     平成17年10月から平成20年5月までに手術療法が施行された症例のうち、固定後の術中透視にて軽度背屈位とした状態で脛腓間離開を認めなかった10名10足を対象とした。内訳はPA stage_III_が1足、SER stage_II_が3足、SER stage_III_が1足、SER stage_IV_が5足であった。術後のギプス固定期間は平均15.7日であった。運動療法は術後翌日より実施した。検討項目としてはギプス除去直後の背屈可動域の比較、全可動域獲得に要した期間、臨床評価としてはJoyの治療成績評価基準を用いた。
    【運動療法】
     長母趾屈筋(FHL)、長趾屈筋(FDL)のamplitude、excursion維持を目的に、自動屈曲、他動伸展運動を行なった。これらの運動はギプス開窓部にて、FHL、FDLの腱滑走、筋収縮を触診しながら実施した。また、FHL腱に対しては、開窓部より直接横方向への滑走操作を加えた。 ギプス除去後はwipping exerciseを中心とした自動運動を中心に拡大し、時期に応じて荷重を漸増した。
    【結果】
     ギプス除去直後の背屈角度は平均19.7°、健側は平均31.4°であった。全可動域獲得に要した日数は平均34.7日であった。Joyの評価基準では全例良であった。
    【考察】
     術中透視の確認にて比較的脛腓間が安定している場合には、早期にギプス下腿後面を開窓し、FHLならびにFDLの滑走、収縮を直接触診しながら行っている。また特にFHLは距骨後突起間を走行するため、癒着に伴う距骨の後方移動が制限されることが予想される。直接横方向への滑走操作による癒着の予防は隣接する後脛骨神経の滑走性も同時に維持でき、臨床成績の向上にも寄与したと考えられた。
  • ~歩行補助具に着目して~
    谷 勇介, 石月 亜由美
    セッションID: S-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】
     大腿骨近位部骨折術後の歩行能力関連要因の検討と受傷前歩行能力の早期再獲得に影響する要因について検討したので報告する.
    【対象】
     大腿骨近位部骨折術後患者13例(男性1例,女性12例.平均年齢81±5.8歳),術後荷重制限がなく,HDS‐Rが20点以上,受傷前歩行がT-cane歩行または独歩可能であった者とした.術式は人工骨頭置換術7例,髄内釘固定術6例であった.尚,対象者には本研究の主旨を説明し,紙面にて同意を得た.
    【方法】
     歩行順位尺度を補助の大きい順に平行棒,歩行器,四点杖,T字杖,独歩とし,関連要因は患側荷重率,疼痛,握力,等尺性膝伸展筋力を測定した.測定は各補助具で監視歩行が20m以上可能となった日と術後1週毎とした.荷重率は体重計に5秒間保持可能な最大荷重量を体重で除した値とした.疼痛はNumeric・Rating・Scaleを用い,等尺性膝伸展筋力はμ-Tas F1を使用した.
     歩行補助具と各関連要因はSpearmanの順位相関係数を用いた.また,術後4週以内に受傷前歩行能力を獲得した者(以下獲得群)6例と獲得できなかった者(以下非獲得群)7例に分け,Mann-WhitneyのU検定を用い比較した.有意水準は5%未満とした.
    【結果】
     歩行補助具と各関連要因は患側荷重率(rs=0.73,p<0.01),等尺性膝伸展筋力の健側(rs=0.37,p<0.05)患側(rs=0.43,p<0.01),疼痛(rs=-0.50,p<0.01)で相関が見られた.獲得群と非獲得群の比較では,2・3週目の患側荷重率が獲得群で有意に高値を示した(p<0.05).
    【考察】
     患側荷重率は患側肢の支持能力を反映し,歩行補助具はその補助や安定の役割をするため,患側荷重率が歩行能力向上に関与したと考える.また,高い荷重率の早期獲得により荷重位でのトレーニングが可能となり,受傷前歩行能力の早期獲得に繋がるのではないかと考える.
  • 熊谷 匡晃, 林 典雄, 岸田 敏嗣, 山田 浩之
    セッションID: S-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】足関節果部骨折は骨折部の転位や遠位脛腓関節の不安定性の存在による将来的な関節症性変化への移行が問題となるため、正確な整復と固定が重要となる。今回、全荷重後に骨折部の離開を呈した足関節果部骨折に対し足底挿板療法が有効であった症例を経験したので報告する。 【症例】40歳代の女性で掃除中に転倒して足部を捻り受傷した。8日後に観血的整復固定術が施行され、術後5日目より運動療法が開始となった。脳性麻痺による左片麻痺が認められたが、歩行は杖なし独歩自立であった。 【経過】術後3週でギプスシャーレとなり足関節のROM訓練を開始した。足関節および足趾の随意性はほとんど認められず痙性による内反尖足を認め、ROMは背屈-10°、底屈30°であった。tension band wiringの固定性に配慮しROM訓練は筋の不均衡による内反を伴った背屈にならないよう他動運動を中心に行った。術後7週で全荷重での歩行を開始し、T字杖歩行が可能となったが歩行時痛を訴えた。術後8週のレントゲンにて外果骨折部の離開が疑われた。ストレステストにてショパール関節ならびに母趾リスフラン関節の疼痛と不安定性を認め、歩行において踵離地が早くなり内側ホイップが出現していたため足底挿板を作成した。直後より歩行時痛は消失し、2ヶ月間の経過観察後運動療法を終了した。 【考察】足関節果部骨折の運動療法としては、軟部組織の癒着防止と伸張性の維持を目的として、早期から足趾の自動運動や等尺性運動が選択されることが一般的であるが、本例は脳性麻痺による左片麻痺があり他動運動を選択せざるを得ず、背屈制限が残存していた。歩行時の疼痛ならびに骨折部の離開が生じた原因としては、背屈制限により踵離地が早くなり内側ホイップを生じるとともにショパール関節およびリスフラン関節には外転ストレスが、距骨には外旋ストレスが発生したためと考えた。足底挿板療法としては踵部の補高と踵接地時の踵骨の直立化を保持することで下腿の前傾を促し、内側ホイップならびに足部の外転制動を図った。
  • ~単純X線とマルチスライスCTを用いて~
    小松 真一, 山田 新悟, 工藤 慎太郎, 木全 健太郎, 太田 慶一, 浅本 憲, 中野 隆
    セッションID: S-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】
     大腿骨距は,大腿骨頚部内側部の骨皮質から骨内部の海綿質に向かって垂直方向に突出する高密度の板状構造である.既に1870年代に報告されているにも関わらず,解剖学の成書における記載は少なく,その3次元構造は未だ明らかではない.今回,単純X線像とマルチスライスCT(以下,MSCT)像を撮影し,大腿骨距の3次元構造の解明を試みた.
    【対象と方法】
     対象は,愛知医科大学医学部解剖学講座が所有する大腿骨(晒し骨標本)である.単純X線像は,KXO-50G(東芝製)を用いて正面像と側面像を撮影した.MSCT像は,Asteion(東芝製)を用いて,大腿骨頚部の長軸に対して平行および垂直な多断面再構成像(以下,平行MPR像および垂直MPR像)を撮影した.
    【結果】
     単純X線側面像において,大腿骨頚部近位後面の骨皮質から小転子近傍の骨幹中央部に至る板状の高吸収域を認めた.正面像では,大腿骨距に相当する高吸収域は認めなかった.
     MSCT平行MPR像において,高吸収域の前端は小転子下縁の骨幹中央部で,後端は大腿骨頚部近位後内側の骨皮質であった.前端から後端まで続く板状構造を認め,その構造は大腿骨頚部内側が最も厚く,大転子に向かい徐々に薄くなっていた.垂直MPR像において,高吸収域の近位端は大腿骨頚部近位後内側の骨皮質で,遠位端は小転子下縁の骨幹中央部であった.高吸収域は,大腿骨頚部近位後内側の骨皮質から徐々に離れながら大転子の方向に広がり,遠位端に至る板状構造であった.その構造は大腿骨頚部後内側の骨皮質よりも厚く,骨幹中央近傍まで広がっていた.
    【考察】
     単純X線側面像とMSCT像において,描出された板状の高吸収域が大腿骨距であると考えられた.特にMSCT像により,大腿骨距の前端から後端と近位端から遠位端までの構造および厚さが明瞭になった.MSCTは大腿骨距の3次元構造の理解に有用であると思われた.
  • 三宅 秀俊
    セッションID: S-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】〈BR〉認知症を合併した大腿骨頸部骨折の症例に,歩行での自宅復帰に向けてICFを活用し活動向上訓練を行ったので報告する.〈BR〉【初期評価】H21.3.10〈BR〉H21.2.11受傷し3.5当院入院の70代女性.〈BR〉活動は車椅子で入浴全介助その他一部介助.歩行器歩行中等度介助.心身機能は股・膝関節ROM制限あり.下肢MMT2.理解・学習能力低下あり.〈BR〉要介護度4.病前は独歩自立,排泄は自立だが失禁あり.更衣や整容は嫁の介助を要し,入浴は通所リハで実施.通所リハ週5日,短期入所月1回利用.〈BR〉【目標】〈BR〉歩行にて家族の援助受け在宅生活継続.通所リハ週5日,短期入所月1回利用.〈BR〉屋内移動は歩行器監視.排泄・整容・更衣は軽介助.入浴は通所リハで実施.〈BR〉【問題点】〈BR〉活動は車椅子で入浴全介助その他一部介助.歩行器歩行中等度介助.〈BR〉心身機能は筋力・ROM・認知面問題あり.〈BR〉【アプローチ】〈BR〉立位・歩行で整容・排泄動作練習など活動向上訓練中心に実施.〈BR〉【退院時評価】H21.5.20〈BR〉歩行器・シルバーカー歩行監視.段差昇降手すりにて監視.食事は監視.更衣・整容・排泄は軽介助.入浴は中等度介助.〈BR〉ROM改善,MMT4,MMSE10点〈BR〉通所リハは病前同様.環境調整は手すりの設置,ベッド貸与行う.〈BR〉【考察】〈BR〉初期の活動は車椅子使用し中等度介助である.そこで活動向上訓練を行い,病前同様軽介助での活動再開に向けアプローチした.活動向上訓練に加え,認知面に対し屋外歩行や階段昇降を積極的に行った.その結果,排泄等立位動作中等度介助が,立位・歩行で口頭指示にて可能となる.屋外歩行を進め体力向上し,1日を通して軽介助で歩行での活動を獲得した.短距離であれば独歩・伝い歩きにて移動できるよう練習し監視にて可能となる.〈BR〉今回病棟生活で車椅子を使用せず介助下で歩行にて活動に介入し生活全般が活性化され廃用を改善することができ,歩行での在宅生活の再開に繋がった.
  • 竹本 雄一郎, 山田 佳彦, 北川 恒美
    セッションID: S-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】糖尿病教育入院は,糖尿病患者に対する糖尿病教育の場として取り入れられている.当院でも年間を通して糖尿病教育入院を行い成果を挙げている.しかし退院後に血糖コントロールが悪化して再入院する例も少なくない.そこで今回,糖尿病教育入院で運動療法が処方された患者29名にアンケートを実施し,退院後の運動療法の問題点を考察する. 【対象と方法】対象は2008年5月から1年間で当院に糖尿病教育入院し,運動療法が処方された29名(男性14名,女性15名,平均年齢65.7歳)で,運動療法介入前にアンケートを実施した.内容は変化のステージモデルを参考にして作成し 10項目に関してそれぞれ1(該当)~5(非該当)の5段階で回答してもらった.【結果】糖尿病に対する入院中の運動療法の実践に関しては95.8%が理解を示した回答をした.また,退院後運動療法を継続したいかという設問に対し,91.7%が1(継続したい)と回答したものの,具体的な運動療法の内容に関しては66.7%しか1(予定がある)を選択せず,有意に少ない傾向にあった(p<0.05). 【考察】アンケートの結果から,退院後も運動療法を続ける希望はあるものの,具体的な運動療法の予定が無いのが特徴である.要因として,入院中に行う自転車エルゴメータが退院後は実用的でないこと,当院のある市内には坂道が多いこと,また,高齢者が多い地域であり(65歳以上が35%以上)ウォーキングに適した患者が少ないことも挙げられた.そこで,個々の身体機能や家屋周辺環境に合わせた運動プログラムの立案や,居宅でできる体操を指導することの必要性が示唆された.  また,アンケートより変化ステージモデルの準備期や実行期の患者が多数を占め,運動効果を提示する必要性が考えられた.  今後の課題としては,退院後の運動療法の実施状況を把握することで,さらに効果的な指導が可能となると考える.
  • -運動調査票を用いた検討-
    中澤 正樹, 松川 千賀子, 真方 淳一, 櫻木 聡, 後藤 忍, 石山 雅美
    セッションID: S-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】  当院では糖尿病患者に対して2週間の糖尿病教育入院を実施している。その中で理学療法士は運動療法の指導を担当しているが、患者の生活様式は多様であり指導した運動を継続させるには個々の生活背景を考慮した支援が重要となる。今回教育入院患者に対して入院時、退院時に運動調査票を実施し、生活背景および運動制限要因を患者自身が振り返り、退院後の運動を具体的に考える動機付けとなったため報告する。 【方法】  対象は当院に教育入院され医師より運動許可が得られた2型糖尿病患者12名(男性9名,女性3名,平均年齢59.2±8.8歳,BMI24.3±4.5,HbA1c11.3±3.2%)とした。方法は入院時、退院時に運動調査票(5段階の選択形式,記述式)を配布した。入院時は8項目(1運動の好き嫌い,2運動習慣,3種類,4頻度,5継続時間,6運動制限要因,7職業,8通勤手段)および1日の生活状況を具体的に記入し、退院時は7項目(1指導の満足度,2配布資料,3運動記録表,4入院中の運動内容,5生活背景確認の有用性,6運動継続,7退院後の運動内容)とした。 【結果および考察】  運動の好き嫌いに関して「好き」「どちらでもない」が多くを占め、運動は半数以上が実行していた。継続時間にばらつきがあり運動効果を高めるため30~60分の継続を推奨した。運動記録票に関して「グラフ化すると傾向が分かる」「記入が面倒」との意見があり、運動記録票は動機付けには有用だが内容の簡略化も提案された。生活背景からは「朝食前の運動は間違っていた」「日常生活で工夫すれば運動時間が作れることに気付いた」「家事も運動とみなせることが分かった」等の感想があった。運動継続に関して多くの患者が「継続したい」と回答し「忙しい生活でも工夫して運動時間を作りたい」など行動変化がみられた。しかし「仕事後の疲れ」「運動が嫌い」「関節痛」等様々な制限要因があり、今後は如何にこれらを考慮しながら長期的継続に繋げられるかが課題である。
  • 中立 大樹
    セッションID: S-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】  当院では2週間の教育入院(上限6名)が実施されている。今回この教育入院に対する理学療法士の関りについて現状と課題を報告する。 【現状報告】  当科は1週目水曜日に運動に関する講義を、2週目水曜日に実習を担当している。講義は、運動に関する基礎知識、意義、実際の方法、注意点などを指導している。実習は2週目昼食後に実施し、1周220mのコースを3周歩行し、これを3セット行っている。そして、1セット終了毎に自己測定による脈拍、RPEの測定を行い、患者状態、歩行速度、運動強度等のチェック、指導を行っている。また、運動前後でSMBGを行い、急性効果(運動前血糖値-運動後血糖値)の体験を運動の動機付けとすることが大きな目的の一つとなっている。2005.8.9~2007.12.25の教育入院終了者(平均年齢58歳)で臨床dateをまとめた。運動時の脈拍・RPEの平均は脈拍97.8±16.3bpm、RPE11.2±1.6であった。血糖値は運動前192.1±72.0mg/dl、運動後154.5±58.3mg/dlと低下した。しかし、14.3%の者に急性効果の上昇を認めた。そして、この上昇群は運動前血糖値100mg/dl以下で多発し、150mg/dl以下と範囲を広げると血糖値上昇者の75%が該当した。また、急性効果と運動前血糖値は正の相関を示し、運動前血糖値が高いほど大きく表れた。そして、インスリンの影響を受け、インスリン治療者では、急性効果は大きく、急性効果上昇者も少なかった。その他、特筆するような差、関係はなかった。 【課題とまとめ】  当院の実習では低強度の運動であるが、85.7%で急性効果を確認し、適切な運動が実施できていると思われた。しかし、今回のdateから、運動前血糖値以外に急性効果と関係するdateは認められず、入院前活動量や体力等の他の評価を充実させていく必要がある。
  • 塩本 祥子, 古矢 泰子, 竹田 幸恵, 野田 祐輔, 川北 整, 岩佐 和夫
    セッションID: S-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】TKAを目的に当院紹介入院となり、その経過において不随意運動を呈した患者の理学療法を経験したので報告する。
    【症例紹介】74歳、女性。平成21年2月下旬、整形外科入院。術前検査よりHbA1c13.4%、Glucose 808mg、尿ケトン体3+であり糖尿病性ケトアシドーシスと診断され、血糖コントロールのため内科転科。血糖値改善し手術適応となり、H21年3月下旬、理学療法開始。
    【理学療法評価及び経過】術前は起居動作可能であったが、変形性膝関節症による痛みと右上下肢を投げ出すような不随意運動のため歩行は介助が必要。不随意運動は安静時、運動時ともにみられ立位保持困難。4月初旬右TKA施行。4月中旬歩行器歩行開始、約1週間後シルバーカー歩行見守りにて開始。不随意運動は依然残存しており、神経内科受診、糖尿病性ヘミコレア及び右中大脳動脈閉塞と診断されグラマリール、バイアスピリン開始。5月中旬、不随意運動は改善傾向にあったがT字杖歩行など精神的緊張が高まると増強し軽介助を要する状態。経過観察のMRI画像の変化はなく、リハ医及び神経内科医にコンサルトした。現状をふまえた上で、PTでは坐位での運動、立ち上がり、歩行を中心に理学療法をおこなった。徐々に歩行は安定し、シルバーカー歩行は自立、T字杖歩行は見守りにて行うことが可能となった。
    【考察】不随意運動発現を糖尿病由来の症状としてチームで模索追及したところ、MRIのT1強調画像にて被殻に高信号を認めるなどの糖尿病性ヘミコレアに特徴的な所見が本症例にみられた。糖尿病に伴い、片側の不随意運動を呈するメカニズムやMRI画像の病理学的背景は不明であるが、自然経過で症状やMRI所見が改善することが知られており、本症例においても血糖コントロールをはかり、不随意運動の変化について意識しながらPTを継続していきたい。
  • 澤藤 州康, 吉川 昌子
    セッションID: S-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】  20年度に開始となった特定保健指導では、講習を受けた理学療法士しかポイント加算ができないため、19年度と同様、市民の健康増進を目的にこの教室を開催した。 【対象】  40~64歳の肥満傾向で血糖値・中性脂肪・LDLのいずれか高い者を対象に広報で公募した。平成20年9月から4ヶ月間、18:30~20:00に、毎週1回の頻度で16回開催した。参加者24名のうち、最後まで脱落しなかった17名(男性6名・女性11名、平均年齢57歳)を対象に検討した。 【内容】  メタボリックシンドロームや運動に関する30分程度の講習と、1時間程度の運動実技を行った。運動内容は準備体操、片脚バランス運動、レジスタンス運動、有酸素運動、整理体操の順に行い、運動にBGMを用いた。このBGMは著作権の配慮から「大垣メタボ音頭」などのオリジナルを作成し、一連の運動方法をDVDに編集して希望者に配布した。また歩数や体重などを毎日記録できる運動日記とグラフ化を課題とし、希望者には毎回体組成計で現状把握を行った。 【分析】  初回と最終に、体重、腹囲、体組成計による体脂肪率・筋肉量・内臓脂肪レベルを、また体力評価には長座体前屈、10回反復立ち上がり、2分間の開眼片足立ちを行い、対応ある2群のT検定(危険率5%未満)を用いて前後差の比較と、アンケートを行った。 【結果と考察】  体重、腹囲、体脂肪率(全身・右腕・体幹部)・内臓脂肪レベル、長座体前屈、反復立ち上がり、開眼片足立ちの項目に有意な改善を示し、平均で1.1kgの減量、2.8cmの腹囲減少、1.0%の体脂肪率低下など、体重や腹囲、体脂肪だけでなく体力も向上していた。アンケートでは血液検査値の改善(糖尿病6名のHbA1cが平均0.7%有意に低下)や、体調改善など継続者全員で実感していた。また運動日記や歩数・体重のグラフ化は、視覚的に変化が捉えやすいことや、大垣メタボ音頭は自宅でも楽しく運動が継続できるなど、運動への動機付けや習慣化の一助になっている。 【おわりに】  公募のため特定保健指導の対象ではなかったが、この教室によって肥満を解消できたことは、一般PTによる運動指導で十分に効果のあることが示唆できた。
  • ~ 肩関節周辺機能に着目して ~
    福吉 正樹, 永井 教生, 藤本 大介, 伊藤 孝信, 杉本 勝正, 林 典雄, 田久 浩志
    セッションID: S-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】
     SLAP lesionの保存療法において競技復帰に必要な条件を探るため、これまでの臨床成績を調査し、その成績に影響を及ぼす因子について検討することである。
    【対象および分類】
     平成18年10月から平成20年9月の間に投球にて肩痛を発症し、SLAP lesionの単独診断名にて運動療法が開始された246例のうち、治療経過ならびに成績、各種理学所見の記録が完全に揃った63例(平均18.1±3.3歳)を対象とした。これら対象を日本肩関節学会スポーツスコア(以下、Score)の能力・疼痛項目(計80点)にて点数化し、最終的に満点で復帰した完全復帰群34例と何らかの減点を認めた不完全復帰群29例(平均40.5±20.6点)に分類した。
    【検討項目】
     まず両群間において、損傷程度や治療期間及び初診時Scoreが臨床成績に影響を及ぼしていないか確認するため、χ2検定、t-検定、Mann-Whitney U検定にて比較検討した。次に、理学所見から競技復帰の関連因子を抽出するために、復帰程度を目的変数としたロジスティック回帰分析を行い、1)肩90度屈曲位での内旋制限、2)肩挙上制限、3)肩90度外転位での外旋制限、4)前胸部の柔軟性低下(以下、前胸部tightness)、5)僧帽筋機能低下の各項目における改善程度を説明変数として投入した。
    【結果】
     損傷程度や治療期間及び初診時Scoreにおいては両群間で有意差は認められなかった。一方、競技復帰の関連因子としては前胸部tightness(odds比:9.2、95%信頼区間:2.48~39.24、p=0.001)および僧帽筋機能低下(odds比:7.3、95%信頼区間:1.98~29.74、p=0.004)が採択された。
    【考察】
     SLAP lesionの発症機序としては、投球動作のlate cocking期における肩甲上腕関節での過剰な外旋や水平伸展負荷が原因とされるなかで、前胸部tightnessや僧帽筋機能低下は肩甲骨や胸椎の可動性に影響を及ぼし、その代償として肩甲上腕関節で生じる過剰な負荷を助長している事が考えられる。したがって、肩甲上腕関節での過剰な負荷を防止すべく前胸部tightnessや僧帽筋機能低下を改善させる事が痛みなく競技復帰させるために重要な因子である事が伺われた。
  • デジタルビデオカメラを用いた定性的研究
    永井 教生, 福吉 正樹, 藤本 大介, 伊藤 孝信, 杉本 勝正
    セッションID: S-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】
    投球障害に繋がる不適切な投球フォームの改善には指導者の理解が必要であることは言うまでもない。しかし指導者と我々では着眼点が異なっているのも事実である。本研究の目的は、フィールドで頻用される指導項目を用い、障害との関係を明らかにすることである。
    【対象】
    対象は投球時の肩痛や肘痛のため当院に通院する患者のうち、硬式野球部に所属する男子学生で経過観察し得た36名(平均年齢16.5±1.1歳)である。これら対象を、最終通院時にすでに痛みなく完全に復帰していた既復帰群13名とそうでない未復帰群23名に分類した。
    【方法】
    投球フォームの分析にはデジタルビデオカメラを用いて、正面および側面の2方向から撮影し、1)foot plant時の側面像において非投球側の肩峰と上前腸骨棘を結ぶ線が床面の垂線より投球方向に傾斜している場合を突っ込みあり、2)foot plant時の正面像において非投球側の胸郭前面が確認し得る場合を開きあり、3)late cocking期の正面像において投球側肩最大外旋位における投球側肘の高さが両肩を結ぶ延長線より低い場合を肘下がりありと規定した。両群とも初診時および最終評価時の投球フォームを分析し、3項目の改善の有無やそれぞれの関連についてχ2検定を用いて比較検討した。
    【結果】
    突っ込み、開きの2項目で既復帰群が未復帰群より有意に改善している割合が大きく(p<0.05)、肘下がりは両群間において有意差が認められなかった。また、3項目間の関連については、突っ込みと開きの間においてのみ関連性を認め、両者の一方が有意に改善していれば他方も有意に改善していた(p<0.01)。
    【考察】
    投球障害を引き起こす投球フォームとして、開きや肘下がりが述べられ、肩関節水平過伸展ストレスや肘関節外反ストレスが疼痛の原因になると考えられている。しかしながら、今回の結果では突っ込みの有無も観察する必要があることが示唆され、突っ込みも投球障害発生メカニズムに何らかの影響を及ぼしていると考えられた。
    フィールドで表現されている投球フォームの特徴を定量的に検討することが、今後の課題である。
  • 竹中 裕人, 水谷 仁一, 鈴木 達也, 久松 周平, 花村 浩克
    セッションID: S-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】 当院では投球障害患者に対し,デジタルビデオカメラ(DV)を用いて,フォームの評価・修正を行っている.DVを用いた定性的評価は臨床で比較的多く用いられているが,欠点として客観性や信頼性に劣ると言われている.しかし,同一被験者を複数人で評価することで客観性の弱点を補うことができる.そこで,我々は,定性的評価方法を用いて,当院における投球障害患者のフォームを観察した. 【方法】 対象は, 2008年5月から2009年4月の間に,当院を受診し,投球肩・肘障害と診断され,動作指導を行った33名(14.5歳±4.7).撮影方法は,DVで後方より撮影し,静止画で評価した.評価項目は,1:Wind-Up(WU)の骨盤「前傾・中間・後傾」2:WUの体幹「屈曲・中間・伸展」3:Early Cocking(EC)のステップ「in・真直ぐ・out」4:ECの投球側肩関節回旋角「2nd外旋90°以下・ 90°・ 90°以上」5:ECの体幹「屈曲・中間・伸展」6:Late Cockingの肘の高さ「下がり・両肩峰のライン上・上がり」とした.評価者は,理学療法士5名(投球障害患者を担当していない者)で1~6の項目をそれぞれ評価した.評価者5人の内4人以上が同一評価の場合を「客観性あり」とした. 【結果】 客観性ありの割合は,1:76%,2:76%,3:48%,4:73%,5:61%,6:67%であった.客観性ありと評価された内,1:WU骨盤後傾60%,3:EC体幹伸展72%などの特徴が見られた. 【考察】 客観性について,1,2,4では,評価にあたって明確な基準がないものの,33名中24名の対象者に客観性がみられた.そして,WU骨盤後傾は33名中14名,EC体幹伸展は33名中17名,などの特徴が認められた.今後、これらの項目の関連性などにも着目して検討していきたい. 【まとめ】 定性的評価方法を用い,投球障害患者のフォームの特徴が一部把握できた.
  • 飯田 博己, 中路 隼人, 加藤 貴志, 岩本 賢, 塚田 晋太朗, 尾関 圭子, 山本 隆博, 矢澤 浩成, 水谷 仁一, 岩堀 祐介
    セッションID: S-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】  われわれが考案した体幹回旋可動域測定法を用いて野球選手の可動域を測定し、その特徴について検討した。さらに、体幹回旋可動域と投球フォームとの関係について検討した。 【対象】  (研究1)2008年4月から2009年5月までに当院を受診した野球選手82名(年齢13.9±3.7歳)を対象とした。
     (研究2)研究1の対象から、投球フォームが比較的安定してくる年代といわれる高校生以上の選手34名を抽出し、さらに投球フォームの評価を行った選手27名(年齢17.7±2.9歳)を対象とした。 【方法】  (研究1)可動域測定は、端座位で肘関節伸展位、肩関節90°屈曲位で両手掌を合わせて随意的に体幹を回旋させ、角度計側を行った。投球側、非投球側を測定し、その差が自覚・他覚ともに明らかである10°以上の選手の割合を算出した。〈BR〉 (研究2)投球フォームをlate cocking期の体幹回旋運動、肩最大外旋以降の上肢スイングについて評価した。体幹回旋差の方向と投球時の体幹回旋運動および上肢スイングとの関係を検討した。 【結果】  (研究1)体幹回旋可動域は投球側58.8°、非投球側57.9°で有意差を認めなかった。投球側と非投球側の差が10°以上の選手は33.0%存在した。その詳細は、回旋制限の方向が非投球側22.0%、投球側11.0%であった。〈BR〉 (研究2)late cocking期の体幹回旋運動が不十分な選手の出現率は、全体として多数存在した。上肢スイングが内旋運動主体の選手の出現率は、体幹の回旋差なし22.2%、制限方向非投球側55.6%、投球側22.2%であった。 【考察】  野球選手の体幹回旋可動域は、繰り返される投球および打撃動作によって制限が生じる。本研究では投球側と非投球側の回旋可動域差が明らかな選手は、全体の約3割に存在し、その制限方向は両方向であった。加えて、非投球側方向への体幹回旋制限は非効率的な投球動作につながる可能性が示唆された。
  • 颯田 季央, 工藤 慎太郎, 橘田 正人, 松村 輝, 田口 梨恵, 浅本 憲, 中野 隆
    セッションID: S-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】
    肩甲下筋の機能については既に報告が見られるが,肩関節外転外旋位の機能に注目したものは少ない.今回,肩甲下筋の外転外旋位における形態および機能について若干の知見を得たので報告する.
    【方法】
    愛知医科大学医学部『解剖セミナー』に供された解剖実習用遺体5体8肢を対象とした.肩甲下筋を剖出し,起始・停止を確認した.さらに,肩関節下垂位と外転外旋位における変化を前面から観察した.なお,外転外旋位における観察は最終可動域とした.人体解剖は,愛知医科大学医学部解剖学講座教授の指導の下に行った.
    【結果】
    肩甲下筋は,肩甲下窩から起始し小結節に停止する「上部筋束」と,肩甲骨外側縁から起始し小結節よりも遠位に停止する「下部筋束」に分離できた.
    下垂位において,上部筋束は肩関節の前方を横走し,下部筋束は後下方から前上方に斜走していた.下垂位から外転外旋位に肢位を変化させると,上部筋束は肩関節の前方から後上方へ偏位した.一方の下部筋束の位置は変化することなく,上腕骨頭の前方に巻き付くように走行していた.
    【考察】
    肩甲下筋の走行から.同筋は以下の機能を有することが示唆された.
    1,下垂位においては,上部筋束が肩関節前方の安定化に寄与する.
    2,外転外旋位においては,下部筋束が肩関節前方の安定化に寄与する.
    3,外転外旋位においては,上部筋束は「後上方から前方」へ,下部筋束は「前上方から後下方」へ向かって上腕骨頭を関節窩に牽引し,上腕骨頭を求心位に保持する.
  • 海野 光信, 村上 忠洋, 佐々木 友也, 千邑 彰人
    セッションID: S-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】<BR>脳卒中片麻痺患者の麻痺側の体幹側屈筋力は非麻痺側に比べ低下していたとの報告があるが,体幹筋は両側性神経支配であるため筋力の左右差は生じにくいと考えられる.したがってこの左右差は体幹筋の運動麻痺自体によるものではなく,股関節周囲筋の運動麻痺により骨盤の固定性が不十分となり,その結果,二次的に筋力を発揮できない状態にあるものと考えた.今回の研究の目的は,体幹筋力の左右差に対し骨盤の固定性および下肢の運動麻痺の程度が及ぼす影響について明らかにすることである.<BR> 【方法】<BR>対象は一側大脳半球障害による片麻痺で,端座位保持が可能な9例とした.平均年齢は74歳で,下肢Brunnstrom stageは4が4例,5が2例,6が3例であった.体幹側屈筋力は体幹を直立させた端座位から徒手筋力計を用い,上腕近位部にて麻痺側と非麻痺側方向へ体幹側屈を行わせた時の筋力を測定した.この際大腿部を固定した条件(大腿固定)と,これに骨盤の固定を加えた条件(骨盤固定)にて測定し,さらに非麻痺側に対する麻痺側の筋力比を算出した.下肢の運動麻痺の程度はStroke Impairment Assessment Setの股関節得点にて検査した.<BR> 【結果】<BR>大腿固定における体幹側屈筋力は麻痺側が8.0±3.5kg,非麻痺側が9.7±3.1kgと有意に麻痺側が低下していた.骨盤固定では麻痺側が8.1±3.1kg,非麻痺側が9.2±3.0kgであり,差を認めなかった.大腿固定における体幹側屈筋力の筋力比と股関節得点はr=0.84であり,有意な相関が認められた.<BR> 【考察】<BR>大腿固定では股関節周囲筋の運動麻痺により骨盤の固定性が不十分となり,麻痺側の体幹側屈筋群が働きにくくなり左右差が生じていると考えた.またその際,下肢の運動麻痺が重度な者ほど骨盤の固定性が不十分であるため左右差が大きくなるものと考えた.<BR>
  • 宇佐見 和也, 谷野 元一, 寺西 利生, 生川 暁久, 上野 芳也, 矢箆原 隆造, 下村 武貴, 和田 陽介, 園田 茂
    セッションID: S-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】
     脳卒中患者の立位バランスは,歩行やADL,転倒率等との関係について多数報告されている.しかし,回復過程にある脳卒中患者の立位バランスの変化を経時的にみたものは少ない.そこで我々は,回復期脳卒中患者における立位バランスを退院まで計測し,その変化について検討した.
    【対象】
     当院回復期リハビリテーション病棟に入院し,入院2週時に静止立位が1分間保持可能で,6週以上在院した初発脳卒中片麻痺患者18名とした.年齢は57.2±12.2歳,障害側は右麻痺13名,左麻痺5名,入院時下肢Br.StageはStageIIが4名,StageIVが8名,StageVが6名であった.入院時FIM運動項目合計点は54.3±11点,発症から入院までの期間は28.0±8.8日で,在院日数は58.2±9.3日であった.
    【方法】
     計測にはActive Balancer(酒井医療社製)を用い,前方2m先のマーカーを注視させ,上肢支持なしでの自然静止立位を1分間計測した.計測時期は当院入院より2週時(以下,2w),4週時(以下,4w),6週時(以下,6w),退院時(以下,ENT)の計4回で,両足部の位置は2wに記録し,その後も同じ位置で計測した.計測項目は足圧中心(以下,Center of Pressure:COP)の総軌跡長と外周面積とし,その変化について検討した.
    【結果と考察】
     総軌跡長は,2wが157±54cm,4wが129±34cm,6wが124±31cm,ENTが118±35cmであった.2w,4w,6w,ENTの4群にて一元配置分散分析の後Bonferroniの多重比較を行った結果,2wと6w,2wとENTで有意な減少を認めた(p<0.01).外周面積では,2wが69±38cm2,4wが50±27cm2,6wが42±23cm2,ENTが31±13cm2であり, 2wと6w,2wとENT, 4wとENTで有意に減少した(p<0.01).2項目とも,2wから4wが有意差は認めなかったものの変化としては最も大きかった.これより,回復期脳卒中患者の立位バランスが改善していく過程として,総軌跡長と外周面積の減少は,入院から約1ヶ月までが変化としては大きく,それ以降は緩やかに変化していくという経過となった.今後は,動的な立位バランス能力等も考慮し,より詳細な検討を行っていきたい.
  • 堀場 充哉, 山下 豊, 和田 郁雄, 山田 健太郎, 松川 則之, 小鹿 幸生, 城川 哲也
    セッションID: S-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】
     心原性脳塞栓症は,主幹動脈の閉塞により広範梗塞をきたしやすく,脳梗塞のなかで最も予後不良な病型である.さらに,出血性梗塞の合併は,意識障害の遷延化や全身状態の悪化を来すため,リハビリテーションの目標設定に難渋する.
     出血性梗塞は,高齢や脳梗塞重症度とは独立した予後不良因子であると報告されているが,転帰に強く関連する運動機能の回復への影響は明らかでない.そこで,心原性脳塞栓症患者を対象に出血性梗塞の重症度と運動機能の回復について検討した.
    【対象】
     2004~09年までの6年間に,当院にて入院加療されたテント上の心原性脳塞栓症の連続例75症例を対象とした.そのうち,再梗塞や梗塞拡大を呈した16例を除外した59例(76.8歳,男性27例)について検討した.
    【方法】
     入院時の診療記録,頭部MRI,MRA,CT所見を後方視的に調査し,出血性梗塞の重症度による運動機能の回復程度を比較した.
     出血性梗塞の重症度は,経過中のMRI T2*強調像およびCT所見から,Fiorelliらの分類(Stroke,1999)に準じて,Hemorrhagic infarction (HI),Parenchymal hematomas type1 (PH-1),Parenchymal hematomas type2 (PH-2)に分類した.運動機能は,日本脳卒中学会 Stroke Scale委員会が報告した,脳卒中運動機能障害重症度スケール(JSS-M)を用いた.
    【結果】
     理学療法開始時と退院時のJSS-Mスコアの変化は,非出血性梗塞群(N-HT群)で18.99点から12.17点へ,HI群で17.32点から9.0点へ,PH-1群で23.67点から14.34点へといずれも有意に改善したが,PH-2群では27.68点から25.14点と改善がみられなかった.また,JSS-Mの改善率は,理学療法開始後1週では各群に差がみられなかったが,2週後にはN-HT群で35.9%,HI群42.3%,PH-1群27.1%,PH-2群3.6%と,HI群の改善率が最も高い傾向であった.
    【まとめ】
     軽度の血腫形成までの出血性梗塞は,出血性梗塞を発症しない症例と同程度に運動機能の回復が望める.また,回復速度はHI群で早い傾向にあり,点状出血は運動機能回復に悪影響を及ぼさない.
  • ~神経細胞樹状突起の形態変化に着目した検討~
    高松 泰行, 石田 章真, 濱川 みちる, 玉越 敬悟, 石田 和人
    セッションID: S-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】脳出血後の早期リハビリテーションは運動機能回復に有効であるとされているが、その作用メカニズムは不明な点が多い。そこで、運動機能回復メカニズムを解明するために、本研究では線条体出血モデルラットに対する早期リハビリテーション(トレッドミル走)が運動機能と脳組織に及ぼす影響を検討した。 【方法】深麻酔下にてWistar系雄性ラット(8週齢)の左線条体にコラゲナーゼ(Type IV)を注入し、脳出血モデルを作成した。脳出血後無作為に運動群、非運動群に分け、運動群にはトレッドミル運動(9 m/min、30分/日)を術後4~14日後まで実施した。運動機能評価にはBigioらによるMotor Deficit Score(MDS)テストを用いた。術後3日、7日および15日後に深麻酔下で灌流固定を行い、脳前額断面の凍結切片(40μm厚)を作成の上、H-E染色を施し、線条体残存体積及び大脳皮質の厚さを計測した。また、別の脳組織(術後15日)にGolgi-Cox染色を施した後、線条体及び大脳皮質(運動前野/補足運動野、一次運動野、一次感覚野)における神経細胞樹状突起の形態変化(長さ、分岐の複雑さ、スパインの密度)を解析した。なお本研究は名古屋大学医学部動物実験委員会の承認のもとで行った。 【結果】MDSテスト総合点では、運動群が非運動群に比べて有意な改善傾向を示した。線条体残存体積、大脳皮質の厚さは運動群と非運動群の間に有意な差は無かった。一方、線条体(非出血側)と大脳皮質運動前野/補足運動野(出血側)と一次運動野(出血側)での神経細胞樹状突起は運動群の方が非運動群に比べて長く、分岐もより複雑であった。さらに、大脳皮質一次感覚野(出血側)における運動群のスパインの密度は非運動群よりも有意に高かった。 【考察】脳出血後のトレッドミル走は運動機能の改善を促進することが示された。線条体残存体積、大脳皮質の厚さにはトレッドミル走による効果は認められなかったが、神経細胞樹状突起では形態変化が生じており、運動機能改善に関与している可能性が示唆された。
  • 池田 泰知
    セッションID: S-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    中枢神経系疾患における体幹機能障害は、坐位時の骨盤前後傾能力を観察することで確認可能である。健常者に比し、中枢神経系疾患患者は骨盤前後傾を自在に行うことができないケースが多い。そこで、中枢神経系疾患(脳卒中患者・脳性麻痺患者)と健常者での骨盤前後傾能力を客観的に捉えることを目的に調査を行った。
    【方法】
    対象者は、脳卒中患者10名(平均年齢65.5歳)、脳性麻痺患者10名(平均年齢13.0歳)、健常者10名(平均年齢32.0歳)、男女比3:2である。対象者はベッド上端坐位(膝関節90度屈曲位、足底接地)となり、自動的に骨盤を最大に前傾・後傾し、それぞれの肢位を側面よりデジタルカメラで撮影し、上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線と垂直軸とのなす角度を求めることで、基本矢状面での最大骨盤前傾・後傾角度を計測した。計測した角度を元に、前傾角度・後傾角度・前後傾角度の中点・前後傾の差の平均値を各々求め、健常者・脳卒中患者・脳性麻痺患者で比較を行った。尚、統計的検定にはt検定を用い、有意水準を5%以下とした。
    【結果】
    骨盤の前傾角度は健常者・脳卒中・脳性麻痺の順で角度が大きく、後傾角度は有意差が認められなかった。骨盤前後傾角度の中点は、健常者・脳卒中患者に比べ脳性麻痺患者の骨盤は後傾位にあった。骨盤前後傾角度の差では、脳卒中患者は健常者・脳性麻痺患者に比べ骨盤可動範囲に制限があった。
    【考察】
    脳性麻痺患者の骨盤は端坐位において後傾位にあり自動的に前傾を行うことが困難であることが示された。脳卒中患者においても健常人に比し前傾を行いにくいことが分かる。これは、体幹深層筋群の協調した運動が脳性麻痺患者・脳卒中患者において障害されていることを示すデータであると考えられる。今後は加齢による影響も考察できるよう、検討症例数を増やしていく予定である。
  • 田上 裕記, 太田 清人, 南谷 さつき, 黒木 光, 杉浦 弘通, 村田 公一, 酒向 俊治, 金田 嘉清
    セッションID: S-21
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】今回,慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)に対し嚥下に関するパフォーマンステストを行い若干の知見を得たので報告する。
    【対象】対象はCOPD患者69例(男性53名,女性16名),平均年齢73.0歳を対象とした。Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(以下GOLD)による重症度分類ではstage_I_が9例,stage_II_が30例,stage_III_が30例であった。コントロール群は健常高齢者15名(男性7名,女性8名),平均年齢72.7歳とした。全症例において嚥下機能に影響する脳・神経疾患が無く,食事は普通食摂取,意思疎通も問題はなかった。
    【方法】福地らの「嚥下性肺炎の診断と治療」を参考に,1)反復唾液嚥下テスト(以下RSST),2)水のみテスト(以下WST),3)頚部聴診法(以下CA),4)簡易嚥下誘発試験(以下S-SPT)の4項目を実施した。GOLDの重症度分類によりstage_I_群:A群,stage_II_群:B群,stage_III_群:C群,コントロール群:D群とした。4群間における各群間に対し,Tukeyの多重比較検定を用い検討した(有意水準:5%未満)。尚,研究にあたり対象者に目的や意義,有害事象を十分説明し,文章による承諾を受けインフォームドコンセントを行った。
    【結果】RSST及びCAについてA群の値はD群の値と比較し有意に異常値が多かった(p<0.05)。また,B,C群の値はA群の値と比較し有意な増減は認められなかった。S-SPTにおいてB,C群の値はD群の値より有意に異常値を示し(p<0.05),A群とD群間において有意差は認められなかった。WSTではいずれも有意差は認められなかった。
    【考察】OhtaらはCOPDの軽症例においても嚥下障害を有することを示し,RSSTの有用性を報告している。今回の結果より,S-SPTはCOPDの中等症及び重症例において嚥下障害の検出に有効であった。RSST及びCAは軽症COPD患者における嚥下障害の検出に有効であることが示唆された。
  • 上田 有紀, 飯田 有輝, 伊藤 武久, 篠原 務
    セッションID: S-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 2003年「NICUにおける呼吸理学療法ガイドライン」が作成され、多くの施設で新生児に対する呼吸理学療法が施行されている。当院NICUでも無気肺の発生した症例に対して呼吸理学療法を実施していたが、さらに2008年10月からは挿管にて人工呼吸器管理している児に対して早期から呼吸理学療法を行い、無気肺の予防に努めている。しかし、その有効性については不明な点が多い。そこで呼吸理学療法による無気肺の予防的介入の有効性について後方視的に検討した。〈BR〉 【対象】  2007年3月から2009年6月までに当院NICUに入院し挿管にて人工呼吸器管理を要した児92例(平均在胎週数33w3d平均体重2028.1±909g)において、早期から呼吸理学療法を介入した(介入群)29例(平均在胎週数32w5d平均体重1836.2±937g)と予防的に呼吸理学療法介入しなかった(非介入群)63例(平均在胎週数33w6d平均体重2116.5±889g)を対象とした。挿管中に死亡または転院した例は除外した。〈BR〉 【方法】 介入群は医師により状態が安定したと判断し体位交換が可能となった時期から呼吸理学療法を開始し、排痰体位、振動と気管内吸引を行い3時間毎の体交スケジュールを理学療法士が決定した。 介入群と非介入群における無気肺の発生件数をカイ2乗独立性の検討を用いて分析した。〈BR〉 【結果】  介入群の無気肺発生率は3.6%で非介入群では19.6%であり、早期からの無気肺の予防的介入は無気肺を予防する傾向がみられた。(p=0.06)。さらに、出生体重2500g未満の児のうち肺疾患症例のみでの検討では、無気肺を有意に減少させた(p=0.036)。〈BR〉 【考察】  NICUにおいて早期からの呼吸理学療法介入は無気肺発生を予防することが示唆されたが、介入時期や神経学的予後などの合併症については今後も検討する必要があると考えられる。
  • ~長期人工呼吸器管理から離脱へ向けた治療経験~
    水谷 拓真, 井上 登太
    セッションID: S-23
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】  近年,患者のADL・QOL向上を目的に呼吸管理サポートチーム(以下,RST)の活動報告が散見し,チーム体制による呼吸ケアの有用性が検討されつつある.しかし当院は,未だRSTの統制が確立しておらず効率的な呼吸ケア提供に至っていない.今回,包括的アプローチにより長期人工呼吸器管理から離脱に成功した症例を経験し,チーム医療の重要性について若干の知見を得たので報告する.〈BR〉 【症例紹介】  80歳代男性.てんかん発作に誤嚥性肺炎を併発し当院入院加療.入院時BGAは,pH;7.227,PCO〈SUB〉2〈/SUB〉;69.8torr,PO〈SUB〉2〈/SUB〉;84.0torr,HCO〈SUB〉3〈/SUB〉〈SUP〉-〈/SUP〉;29.0mmol/L,BE;1mmol/L.入院前ADLは自立レベルだったが肺気腫を合併しており,喫煙歴40本/day×40年.〈BR〉 【治療経過】  <リハビリ介入前>入院時より不穏状態に加え多量の痰貯留を認め第12病日,急性増悪にて心肺停止となる.CPRで回復するも経口挿管管理となり第22病日気管切開を施行.離脱困難のため第53病日目よりリハビリ開始.〈BR〉<リハビリ経過>ALB;1.9 g/dl,Hgb;8.1g/dl,低栄養・貧血を呈し,AC;24.0cm,TSF;10.0mm,AMC;20.8cmと著名な皮膚・筋委縮を認めた.そこで,Dr,PT,Ns,CE,NSTで症例検討を1回/週開催.血液データ・BGA結果を確認し,人工呼吸器の設定・栄養配分を調節し,リハビリでは離床訓練や体位ドレナージにてVAP予防・循環動態の改善に努めた結果,第102病日,人工呼吸器離脱に成功し第123病日に転院.〈BR〉 【考察】  今回,定期的に症例検討を開催し各職種の専門性を治療に有効に反映した事で,本症例は第120病日目には,ALB;3.4g/dl,Hgb;11.0g/dl,AC;26.0cm,TSF;15.4mm、AMC;21.1cmと有意な改善を得た.しかし,依然として呼吸ケアへの認知度は低く問題事項も遅々されているのが現状である.各専門職がチームの中で明確な役割を提供していくため,今後,より職種間のコンサルテーションを充実し患者ケアの質向上を目指しチーム医療の有効性を浸透させていきたい.
  • 石田 修也, 塚越 智, 守山 成則
    セッションID: S-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】間質性肺炎患者(以下,IP)の理学療法(以下,PT)について,病状活動期から開始した報告は少ない.IPの活動性の指標としては「SP-D」「KL-6」などの特異的血清マーカーが利用されており,今回指標としたSP-Dは109.8ng/mlが活動期・非活動期のカットオフ値とされている.昨年度の新人症例発表において病状活動期のIP症例に関する1例報告を行った.今回,さらに2症例に対してPTを実施する機会を得たので,集約した知見をここに報告する.
    【症例】診断名は3症例すべて非特異型間質性肺炎.症例1, 50代女性.入院後14週目よりPT開始,開始時SP-D 211.0ng/ml .症例2, 70代男性.入院後6日目よりPT開始. 開始時SP-D 435.8ng/ml.症例3, 40代男性.入院後3週目よりPT開始. 開始時SP-D 382.6ng/ml.
    【経過・結果】PTは全症例において,初期は呼吸状態の改善を目的にリラクセーション,呼吸コントロールを施行した.呼吸状態改善後は呼吸体操,筋力トレーニング,持久力トレーニングを追加し施行した.全症例で退院時にADLの改善を認めた.一方で,症例1と2において著明な運動耐用能の向上を認めたものの,症例3においては維持される結果となった.さらに,向上が認められた症例はSP-Dが非活動期まで改善を認めたのに対し,維持となった症例では退院時においても活動期のままであった.症例1の経過は,開始時, MRC息切れスケールGrade5,胸郭可動性低下,努力性呼吸,呼吸補助筋過緊張,歩行不可,Barthel Index(以下,BI)15点であった.開始後2週目に胸郭可動性,呼吸様式が改善し,経過とともに歩行が可能となり,退院時にはSP-D 61.8ng/ml,連続歩行距離250m,BI80点となった.
    【考察】今回の結果より,IP患者において,病状活動期からのPTがリラクセーションや呼吸コントロールによる呼吸状態の改善,運動療法や呼吸コントロールによる運動耐用能の改善・維持を可能にすると考えられた.また,PTの目標設定として活動期であれば運動耐用能の維持,非活動期であれば改善とすべきと考えられるため,SP-DなどによりIPの活動性を把握することがPTを進めていく上で有用であると考えられた.
  • 木村 健夫, 俵 祐一, 夏井 一生, 伊藤 恭兵, 大曲 正樹, 中野 豊
    セッションID: S-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    重症肺炎による長期人工呼吸管理後の患者は廃用が進行し離床に難渋することが多い。今回、著明な筋力低下に加え、座位姿勢で腹痛・嘔気等を生じたため離床が遷延した症例を経験したので報告する。
    【症例】
    67歳・男性。診断名:重症肺炎。発症前は活動的な生活をしていた。発熱と全身の関節痛により近医受診、肺炎像を認め当院紹介受診となった。
    右肺優位に濃厚な浸潤影を認め、酸素化も著しく不良のため、即日、人工呼吸管理となった(P/F比 53)。なお、本人に説明を行い、本報告の同意を得た。
    【経過】
    第43病日に人工呼吸器離脱完了(MMT上肢3、体幹・下肢2、血液生化学検査Alb 2.3g/dL,Cr 0.30mg/dL)。
    端座位練習は第53病日に開始。端座位となると苦悶性顔貌を呈し腹痛・嘔気を生じた。リクライニング車いすでも呼吸困難・腹痛・嘔気等を生じ20分が限界であった。その後も車いす座位耐久性は30分程度であった。
    立位練習は第78病日に開始。立位は股・膝屈曲位で、体幹も屈曲していたが、股・膝伸展をサポートし体幹中間位とすると疼痛が軽減した。立位練習は最小限の介助で行い、自身の筋収縮を促した。第113病日にはMMT体幹・下肢3、歩行器歩行30m可能となり、第147病日には杖歩行病棟内自立となった。
    【考察】
    長期人工呼吸管理後には臥床による廃用が認められるが、低栄養や全身性炎症を呈する重症肺炎ではさらに蛋白質異化が亢進し、著明な筋力低下を呈しやすい。本症例では座位時に腹部症状をきたし、さらに離床を難渋させる原因となっていた。年齢や発症前の活動性を考えると可及的速やかに活動レベルを向上させる意義は高く、座位から立位レベルの訓練に切り換えたことは的確な判断であったと考える。しかし、時間的側面から考えると、著明な筋力低下がある状況での立位・歩行はセラピスト介入時以外の離床効果は小さく、結果的に病棟内自立となるまでは離床遷延は生じていたといえる。
  • 吉原 由佳子, 上村 さと美, 篠永 正道, 北川 恒実, 原田 俊一
    セッションID: C-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】今回,単純ヘルペス脳炎により呼吸障害・四肢麻痺を呈し,人工呼吸器管理を経て在宅復帰に至った症例を経験した。本人に同意を得た上でここに報告する。【症例】40歳代女性。主婦。発症前はAPDL自立。【現病歴】H21.1.1より頭痛・発熱が出現した。1.9当院へ入院,人工呼吸器管理となった。第11病日より理学療法介入となる。第18病日のMRI,FLAIRにて脳幹外側,側頭葉内側に高吸収域を認めた。【初期評価】意識レベルはJCS1桁,人工呼吸器設定モード[FiO20.3,SIMVにてpressure support10cmH2O,PEEP5cmH2O],心拍数83回/分,呼吸数18回/分,SpO2100%だった。呼吸様式は胸式優位で浅く,呼気の短縮を認めた。四肢・体幹の分離運動は可能だったが極めて低緊張だった。【治療経過】介入時より自発呼吸は見られたが呼気の短縮を認めたため,呼吸介助と呼吸訓練を行った。第19病日に抜管となり,呼吸数19回/分,O23ℓにてSpO2100%だったがPCO252mmHgと上昇を認めた。第21病日にO2offとなり端座位訓練,第33病日に立位訓練,第35病日に歩行訓練を開始し,第53病日にはロフストランド杖で自立に至った。第61病日に外泊訓練後退院となった。退院後も,外来にて呼吸筋を中心とした体幹の促通を行った。退院後約2ヶ月は筋力低下と1秒率低下を認めたが,4ヶ月後には正常レベルに回復した。現在は主婦業へ復帰している。【考察】安静換気時の呼気の短縮は呼吸中枢の障害によるものと考える。そのため呼気の延長を口頭で促すとともに腹部に手を当て手掌面からの感覚入力も促した。その結果,退院時には呼気は延長した。退院後も呼出力の低下を認めたのは人工呼吸器装着後の廃用も原因と考える。身体機能において麻痺は近位部に優位に認めたため体幹を中心にアプローチした。
  • 田中 夏樹, 岡西 尚人, 稲葉 将史, 山本 昌樹
    セッションID: C-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】  今回、右後足部外側に原因不明なしびれと疼痛を呈した症例に対し、運動療法を施行し症状が消失した。本症例における病態の考察とともに、症状の経過に準じて行った運動療法について述べる。なお、症例には本発表の主旨を説明し、同意を得ている。 【症例紹介】  症例は40代の女性。スキー中に左ACLを断裂し、1ヶ月後より当院にて理学療法を開始した。左ACL断裂より10ヶ月後にエピソードなく右後足部外側にしびれと疼痛が出現し、徐々に増悪した。他院にて腰部MRI検査、腓腹神経の神経伝導検査を行ったが原因不明と診断された。 【初期理学所見】  右足関節底背屈0°でのSLRは20°で右後足部外側のみに疼痛を訴えた。右足関節底背屈0°で踵骨を徒手的に回外させると同様の症状が出現し、同部に歩行時痛も訴えていた。右踵骨外側の皮膚の可動性は低下しており、フットプリントでは凹足傾向であった。また、梨状筋、腓腹筋に圧痛を認めた。 【治療および経過】  疼痛出現2週後から週3回のペースで治療を行った。治療は梨状筋や腓腹筋のリラクセーションを行い、後に踵骨外側の皮膚の滑走性改善と踵骨の他動回外運動を行った。治療開始1週後に歩行時痛は消失し、4週後に足関節底背屈0°でのSLRが80°となり、症状は消失した。 【考察】  本症例の症状は、足関節底背屈軸より遠位部における腓腹神経外側踵骨枝(以下、外側踵骨枝)の滑走不全が原因であり、症状の改善には外側踵骨枝の滑走性改善が必要であると考えた。しかし、外側踵骨枝周辺組織への操作を行ったところ右後足部外側の疼痛が著しかった。そのため、梨状筋や腓腹筋のリラクセーションから行い、より中枢の坐骨神経、腓腹神経の滑走性改善を促したところ、外側踵骨枝周辺組織への操作が可能となった。<BR>本症例の病態は原因不明とされたが、詳細な所見を基に解剖学的に病態考察を行い、的確なアプローチを行うことで症状の改善を認めた。
  • 勝井 洋, 遠藤 瞳, 後藤 聡, 鳥居 滋志
    セッションID: C-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【患者情報】患者は70歳女性.疾患は腰椎すべり症で左下肢の強いしびれを呈していた.右膝のTKAオペ目的で入院しROM制限・荷重困難等無く経過したが、本人は左下肢のしびれの訴えにより退院を拒否された。その後、しびれに対するアプローチを中心に行うこととなった。
    【評価結果】主訴は左大腿外側・下腿外側上1/3~外果のしびれであった.MRIより,L4前方すべり,下部腰椎椎間板の後方膨隆がみられた.整形外科的テストでは,SLR ・FNSTともに陰性であった.脊椎アライメントは胸腰椎彎低下,腰椎前彎低下がみられた.また腹筋MMTは3であった.
    【治療歴】エクササイズ指導として,Spine Dynamics療法の四股で仙腸関節の上方すべりを促し,四股捻転で仙腸関節上部離開,肩甲骨・胸椎柔軟性改善を促した.脊椎彎曲支持の為の脊椎抗重力筋強化として立位体幹深部筋強化を行った.治療開始初日は下腿の痺れの範囲は外果~上20cmで強さは5/10であったが,開始8日目には痺れの範囲は外果周囲のみで強さは1/10まで改善した.しびれが軽減し、本人も不快感が気にならないレベルとなり,今回の指導後9日目に退院した。
    【考察】脇元の提唱するSpine Dynamics療法は,脊椎の支持性を骨性から筋性へと促し,脊椎の彎曲運動を促し脊椎以下の関節への負担を軽減することを目的としている.今回の症例も脊椎の柔軟性低下により脊椎の荷重緩衝作用が低下し仙腸関節への負担が増大したと考えた.今回の症状は博田による仙腸関節機能異常の診断基準に一致しており,関連痛によるしびれの可能性もあると考えた.そこで脊椎柔軟性を確保し,脊椎の彎曲支持の為の抗重力筋トレーニングを行うこととした.
    【まとめ】しびれの症状に対し,MRI所見や整形外科テストの結果と症状の一致しない症例に遭遇することがある.このような症例に対し,脊椎支持性からの評価・考察を加えることで,原因を探ることが出来る可能性があると考えた.
  • 多職種アプローチの必要性について
    徳力 康治, 北沢 友衣, 藤島 千里, 葛巻 知子
    セッションID: C-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】慢性炎症性脱髄性神経根炎(以下CIDP)対称性に運動、感覚障害が侵される多発神経根炎で、上下肢の遠位部または近位部に脱力と感覚障害が起こると規定されている。病因は自己免疫疾患で、疫学的には、人口10万人当たりの発症率は、0,3から0,5%で男性に多いと推定されている。今回、発症時86歳のCIDP症例を訪問リハや多職種での支援により在宅生活を継続出来ている症例の経過と現状の問題について報告する。なお症例には発表の同意を得ている 【症例紹介・経過】86歳男性、軽度認知症の妻と二人暮らし。平成18年2月頃より下肢の脱力と手指の動きにくさを自覚、同年3月座位保持も不安定となった為、A病院入院となりCIDPの診断確定する。入院中に、グロブリン療法等で改善し車いす駆動可能、手すりを用いたトランスファーが可能となる。本人が在宅生活を希望し、平成18年11月より当院で訪問診療、訪問看護、訪問介護開始となる。平成19年4月PTが着任し訪問リハ開始となる。訪問リハ開始時は、MMT上肢3から4レベルで右手指の巧緻性低下を認めた。下肢3レベル体幹3レベル(右<左)ADLは、トランスファー軽度介助でポータブルトイレも介助であった。PT着任後、通所リハも起立練習や歩行練習を行いたいとの希望から開始、その後ポータブルトイレ自立、洋式トイレへの車イスでの移動が自立。現在は、浴室への移動、手すりを用いてトイレまでの歩行が可能となった。 【まとめ】ADL拡大の要因として本人のもう一度歩いてトイレに行きたいという意欲と、リハにより獲得したADL能力を訪問看護師や通所リハスタッフ、通所介護スタッフが上手く活用してくれた事が大きいと考える。在宅を支える上では、多職種による多方面からのアプローチの必要性を改めて考えさせられた。現在、妻の認知症が進んできており老々介護問題で今後の方向性を検討する時期に来ている。
  • ~ADL自立度向上をめざして~
    宮守 祐輝, 平 昇市, 奥佐 千恵, 笠原 知子, 川口 久美子, 金子 正樹, 菊谷 恭子
    セッションID: C-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     今回,入院前はセルフケアが自立していたが,入院中に活動性が低下し,全介助状態になった視力障害を有する症例を担当する機会を得た.本症例に対し,接し方の工夫によって信頼性のある評価結果が得られ,訪問リハ介入へと繋がり,ADL自立度が向上した経験に若干の考察を加え報告する.
    <症例紹介>
     70代男性 30代後半より全盲
    <現病歴>
     胃潰瘍のため活動困難となり入院.臥床状態が続き活動性低下.ADLは食事以外全介助,廃用症候群により理学療法開始.
    <経過>
     初回のリハ介入時,自発運動はみられず指示動作も拒否のため困難であった.これは本症例が突如自宅から病室という異なる環境におかれたことで,視力障害の影響により混乱と不安感が生じ,動作に対する恐怖心から動けない状況だったことが最も大きな原因と考えた.
     そこで理学療法を施行する際に,声のトーン・言葉選び・触れ方を工夫することで,恐怖心や不安感を除去し,安心感・信頼感を与え動作できるよう試みた.結果,徐々に自発運動を促すことができ,ADLの拡大・歩行獲得に必要な身体機能を有し,排泄動作等ADL自立意欲があることも評価できた.しかし,院内ADLに変化はみられなかった.これは本症例の視力障害の影響によると考え,ADL拡大のためには在宅生活場面での動作を行うことが必要ではないかと考え,訪問リハを含めた退院計画を進めた.訪問リハ介入3週で,排泄動作は誘導のみで可能になるなど,ADL自立度の向上がみられた.
    <まとめ>
     本症例は視力障害を有し,自発運動や院内ADLの拡大に難渋した.そのため接し方や関わり方の工夫が,動作を促し身体機能を評価するために重要であった.またADL拡大のためには環境に対するアプローチも必要であり,訪問リハ介入によって在宅ADL自立度は向上した.ADL向上には接し方や環境なども考慮することが重要だと,本症例を通じ経験できた.
  • 森 慎太郎, 堀場 充哉, 山下 豊, 原田 直太郎, 梅村 淳
    セッションID: C-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】パーキンソン病(PD)に対する薬物治療の効果改善を目的として視床下核(STN)をターゲットにした脳深部刺激療法(DBS)はPDの運動症状全般に効果がある。一方STN-DBS施行後に幻覚、妄想、moodの変化、前頭葉機能低下など多彩な精神症状を呈する場合がある。今回、STN-DBSを施行したPD1症例について、転倒を頻発させた要因を検討した。 【方法】PD発症後26年、術後3年4ヶ月を経過したPD1症例について、UPDRS、色彩マトリックス検査、HDS-R、MMSE、TMT検査、簡易前頭葉機能検査(FAB)、画像診断を用いた評価を行った。 【結果】UPDRSは術前で115点、術後7か月で77点と改善、術後3年4か月で115点と術前点数まで悪化。術後2年6か月でのCT所見より脳室、脳溝は若干拡張、側脳室の拡張が以前より軽度に目立つ印象、深部白質に軽度の虚血性変化を示しているとの診断を受けた。術後3年4か月にて色彩マトリック検査10/36点、HDS-R16点、MMSE21点、TMT-Aは完遂できず、FAB6/18点であった。 【考察】UPDRSより術後1年間においても姿勢は前傾を示し、立位は支えなければ倒れてしまう状態であった。歩行動作では前方突進がみられ姿勢反射障害に対する改善は不十分であった。しかし症例は独歩を開始、転倒してしまう状況であった。前頭葉機能低下では多彩な症状を示すが、行動抑制にとって前頭葉が重要な役割をはたしていると言われており、前頭葉損傷患者を対象とした実験的観察において検証されている。TMT-Aでは行動に保続がみられ完遂不可、FABでも前頭葉機能の障害が予想された。また画像診断より脳実質の萎縮が若干ではあるが診断され、色彩マトリック検査、HDS-R、MMSEからは軽度の認知症が予想された。しかし、MMSEの詳細をみると見当識についてはできている反面、図形模写や計算ができないなど前頭様症状に有意な症状を示した。 【まとめ】STN-DBS術後、前頭葉機能の悪化により行動抑制困難となり、歩行意欲を抑えられず、転倒を招いた。
  • 小栗 華佳, 和田 陽介, 生川 暁久, 川上 健司, 山田 佳代子, 野々山 紗矢果, 日高 慶美, 大沼 さゆり, 寺西 利生, 園田 ...
    セッションID: C-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     脳卒中患者の運動麻痺肢への訓練法には様々なものがある.近年,注目されている随意運動介助型電気刺激装置(Integrated Volitional control Electrical Stimulator:以下,IVES)は随意筋電に比例した刺激強度で電気刺激を行う装置であり,筋収縮の強弱に合わせた麻痺筋の再教育が期待できる.本研究では,脳卒中片麻痺患者の麻痺側足関節背屈機能に対するIVESの有効性を検討したので報告する.
    【対象】
     初発脳卒中でStroke Impairment Assessment setの足関節運動機能(以下SIAS-F)が2点の片麻痺患者2名である.症例A:51歳,女性,右被殻出血による左片麻痺で発症後期間は39日であった.症例B:34歳,男性,右中大脳動脈領域の梗塞による左片麻痺で発症後期間は72日であった.
    【方法】
     両膝関節屈曲60°の椅子座位にてIVES(OG技研社製,PAS system)の電極を麻痺側前脛骨筋の運動点に配置した.筋の随意収縮力に応じたIVESからの低周波電気刺激の補助を受けながら,背屈運動を最大努力で15分間行った.IVESによる介入は,通常のPT・OT訓練に追加して7日間実施し(以下,刺激期間),次の7日間は通常訓練のみとし(以下,休止期間),これを2セット繰り返し計28日間とした.SIAS-Fとビデオ撮影による刺激期間前後の随意足関節背屈角度を評価した.
    【結果】
     症例A:SIAS-Fは開始時2点から1回目刺激期間後3点と変化し,以降3点のままであった.足関節背屈角度は開始時17.4°から1回目刺激期間後19.3°,1回目休止期間後18.1°から2回目刺激期間後21.5°と変化した.
     症例B:SIAS-Fは開始時2点から1回目刺激期間後3点,2回目刺激期間後4点と変化した.足関節背屈角度は開始時6.9°から1回目刺激期間後12.3°,1回目休止期間後12.3°から2回目刺激期間後13.0°と変化した.
    【考察】
     脳卒中回復期の麻痺側足関節背屈へのIVESを試みた.2症例ともにSIAS-Fと背屈角度は刺激期間のみで改善し, 休止期間で改善を認めなかったため,前脛骨筋の中等度麻痺においても,IVESは有効な背屈促通訓練になる可能性が示唆された.
  • 櫻田 隆悟, 内山 恵典, 鈴木 啓介, 田中 正宏, 横田 耕平, 阿部 包愛
    セッションID: C-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     Opsoclonus-polymyoclonia-syndrome(以下OMS)は,注視方向とは無関係に生じる外眼筋のmyoclonusに小脳失調を合併したものをいう.OMS症例は希少なため,OMSに対する理学療法について考察を交えて報告する.
    【症例提示】
     80歳代男性,4ヵ月前にOMSを発症し,ステロイドパルス療法にて症状緩解し,ADL自立にて独居していた.今回,OMS症状が再燃し,当院にて加療目的に入院となる.
    【理学療法評価と経過】
     初期評価として,ROM両足関節背屈10°,鼻指鼻試験両側+,MMT四肢5,体幹屈曲2,berg balance scale(以下BBS)6点,FIM78点であった.姿勢分析として,端座位は,右肩甲帯・頚部にmyoclonus認めるが座位バランス良好.平行棒内立位は,体幹前傾,骨盤後傾,股関節屈曲外旋位,膝関節軽度屈曲位にて足部が外側を向き,後方重心.また,上肢のmyoclonus増強により立位保持困難となる.本症例は,座位と比較して立位にてmyoclonusが増加し起立や歩行などの重心が高い位置での動作が困難であった.これらへの治療的アプローチとして,理学療法開始当初は,協調性改善を目的とした訓練を中心に行っていた.しかし,ステロイドを中心とした薬物療法が奏効し,OMS症状が緩解した事により,体幹筋力低下,足関節の背屈可動域制限による立位時の後方重心化が姿勢や動作に影響している事が顕在化してきた.それらにターゲットを絞った訓練を行っていき,最終的に姿勢及び重心が矯正され,立位・歩行の安定がなされた.最終評価として,ROM両足関節背屈15°,鼻指鼻試験両側-,MMT両上肢5,両下肢4,体幹屈曲3,BBS62点,FIM96点となり,T字杖歩行獲得とご家族の介助が得られ,自宅退院となった.
    【考察】
     今回,OMS症例の理学療法を実施する上で重要であった点は,OMS症状の出現により表在化し難い問題点を早期から発見することである.また,今後の再燃の可能性もあり,Weak pointを事前に情報収集できる状況も必要であると考えられた.
  • その結果からの1考察
    近藤 将人
    セッションID: C-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    臨床の現場で本症例のような若年発症で強い症状を呈するPD病患者に携わることは非常に珍しく貴重な経験を得た。そこで今回、患者本人の了解のもと、その外来対応、生活指導、リハビリの経過について報告をする。
    【対象】
    患者: M・K氏 47才 男性 平成6年頃右手の振るえに気づくことで発症 診断名:Parkinson Syndrome (dystonic-Parkinsonism)  UPDRS score 62 (H19 11 21) 症状:右優位の固縮、振戦、ジスキネジア、ジストニア 重症度:Hoehn &Yahr 5(off)~4(on) ジスキネジアの出現により、服薬治療の限界となり、症状改善のため週1回の外来通院リハ併用となる。
    【対応と経過】
    PTは、本人の服薬による症状管理の徹底に併せ、常時頻繁に出現し変化するon/off症状(急激な強いすくみ、固縮、ジストニアの出現)による狭所、人ごみ、横断歩道通過時等の転倒等の本人の症状特性に対し、移動を中心とした指導・訓練を行い、本人のdemandでもある障害者野球チームの参加と、needであるoff対応の獲得を目的に、下肢を中心とした関節可動域訓練、キャッチボールを取り入れた重心制御、バランス訓練、屋外屋内での実用歩行訓練などを行いつつ、自宅での生活指導を行った。
    【結果】
    服薬管理に合わせ、通院リハ、生活指導等を行い現在では、障害者野球チームの練習でファーストを守る事も可能となり、訓練室内では10メートル程度のダッシュ、スキップなどが行え、活動範囲が拡大した。 【考察とまとめ】 On/Offの差が激しいが基本的な身体機能が高い症例では、症状出現に精神不安が大きく影響しているのではないか。また、offの不安には、身体機能を維持し徹底した反復動作訓練等による動作完遂への自信、安心感が安定した能力の発揮に繋がるのではないかと考えられた。
  • 異常筋緊張に難渋した経験
    金子 正樹, 平 昇市, 奥佐 千恵, 笠原 知子, 川口 久美子, 宮守 祐樹, 浜田 秀剛
    セッションID: C-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】本症例は脳梗塞と同時に大腿骨頚部骨折を受傷。初期に異常筋緊張増悪・仮骨性筋炎の発症を呈した。これらに対し治療方針を確立しアプローチした結果、仮骨性筋炎の所見は改善された。この経験に若干の考察を踏まえ以下に報告する。
    【理学療法評価】
    症例紹介:80代男性 診断名 脳梗塞・右大腿骨頚部骨折 障害名 右片麻痺・失語症
    現病歴:左前頭葉、左頭頂葉内側に皮質性の小梗塞,左内頸動脈に狭窄が認められた。また発症時に転倒し、右大腿骨頚部骨折も確認されγネイルにて整復。
    B.R.S.:上肢5 手指4 下肢4
    感覚検査:麻痺側重度感覚鈍麻 JCS:2桁
    筋緊張:安静時において全身の過緊張傾向が強く、特に、股関節屈曲・外転・外旋、膝関節屈曲、足関節底屈を強める。動作時にも患側下肢の異常筋緊張が特に強まり苦痛な表情となる。
    【考察】本症例は、麻痺と大腿骨頚部骨折が同時期におこり身体イメージがより大きく崩れていたと考える。そのため安静・動作時ともに異常筋緊張がより増悪し、大腿骨頭は前方の組織に圧迫ストレスを加えたと考える。鳥巣らによると仮骨性筋炎に対しては安静が優先されるとある。本症例は常に異常筋緊張を起因とする不良肢位が維持され、大腿骨頭が腸腰筋を圧迫していたため一般的な安静の目的とする効果は得られないと判断した。そこで血流と不良肢位改善の2つに治療方針を確立し、安静ではなく運動によるアプローチを選択した。
    【おわりに】今回、多くの要因が重なる症例に起こった仮骨性筋炎に対し、2つの治療方針を確立しアプローチしたことで屋内歩行自立に至った。この経験を生かし、今後は早期より血流と不良肢位の改善に治療方針を確立しアプローチを施行する事により、仮骨性筋炎の予防、より高いレベルでの歩行獲得に繋がると考える。
  • 後藤 聡, 遠藤 瞳, 勝井 洋, 鳥居 滋志
    セッションID: C-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】左踵骨骨折により6週間固定し,その後の荷重・歩行訓練時の足関節痛でリハビリに難渋した症例で,抗重力下で筋力訓練を効率的に行うための脊柱機能の柔軟性改善に着目し,足部痛症状の改善がみられたので報告する.なお,報告に際し患者様本人の了承を得た.
    【患者情報】28歳,男性,転落事故により,左踵骨骨折を呈す.踵骨をK-wireで6週間固定,K-wire抜去後足底板装着にて荷重訓練など行った.患部の炎症症状,下腿三頭筋の筋萎縮・柔軟性低下など器質的問題がみられた.
    【主訴】荷重訓練や歩行時右側立脚期のけり出し時に下腿三頭筋の伸張痛が出現した.
    【評価】脇元らにおける脊柱柔軟性テストを用い肩内外旋テスト,膝立て内旋テスト,体幹回旋テスト,膝抱え込みテストを行い,胸椎,腰椎,仙腸関節の可動性低下がみられた.
    【治療】座位姿勢から体幹回旋運動を行う四股捻転で仙腸関節の離開,さらに体幹回旋により肩甲骨・胸椎可動性を出すことで胸椎の柔軟性向上を狙った.また,四つ這い姿勢から体幹の屈曲伸展運動を連続的に行うキャットを用い,脊柱の関節柔軟性を向上させ生理的彎曲の確保を狙った.これらを指導し,リハビリが休みとなる3日間を自主トレーニングのみ行った.
    【経過】自主トレーニング後、患部の器質的問題は依然あったが,全ての脊柱柔軟性テスト項目に改善がみられ,抗重力下での筋力・歩行訓練時の疼痛に改善が見られた.
    【考察】トレーニング前の脊柱柔軟性テストから,脊柱柔軟性低下が示唆され,床からの衝撃吸収作用の低下,オーバーコントラクションの原理より重力下において患部にかかる負担が過大となり疼痛によりリハビリが難渋していたといえた.そこで,自主トレーニングにて脊柱の柔軟性を改善させたことにより,抗重力下での床からの衝撃を効率よく脊柱が緩和させたことにより,患部での負担が軽減し症状が改善したものと考えられた.
  • 中山 善文, 長尾 恵里, 金井 章, 後藤 寛司, 柴田 佳子, 米川 正洋
    セッションID: C-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】  悪性骨盤腫瘍の根治手術において腸骨に付着する筋群を広範囲に切除したにも関わらず、補助具なしに歩行可能となった症例の歩行分析を行うこと。 【対象】  症例は10代の女性。右骨盤Ewing肉腫。7年前に根治手術が行われ、仙腸関節から臼蓋直上までの腸骨全切除と、腸骨に付着する中殿筋、小殿筋、腸骨筋の全層切除、腹斜筋、大腿筋膜張筋、縫工筋、大腿直筋、大殿筋の部分切除が行われた。切除した腸骨の一部は加熱処理後に再建に利用され、部分切除された筋群は可及的に処理骨に縫着された。終診時、股関節可動域制限はなく独歩可能だが、Duchenne徴候を認めた。 【方法】  課題は 10mの自由歩行とし、赤外線反射マーカーを身体35箇所に貼付し、三次元動作解析装置(VICON社製)と床反力計(AMTI社製)にて三次元位置データと床反力を計測した。表面筋電計(NORAXON社製)にて中殿筋、大殿筋上部・下部線維、大腿筋膜張筋、大腿直筋、内側広筋、外側広筋、長内転筋の歩行と同期した筋電図を記録した。歩行時の関節角度、関節モーメント、筋活動電位を算出し、健側および健常者(20代の女性1名)との比較を行った。 【結果】  患肢立脚期を通して左骨盤挙上、右股関節外転位を呈し、荷重応答期から前遊脚期にかけて外部股関節外転モーメントが作用していた。立脚期の右中殿筋、大殿筋下部線維、大腿直筋、長内転筋の筋活動電位の平均値は高値を示し、健側比較、健常人比較とも有意に増大していた。筋活動電位の高値は遊脚期においても持続した。 【考察】  立脚期において外部股関節外転モーメントを発生させ、股関節内転筋の制御により歩行安定性を得ていると考えた。中殿筋、大殿筋下部線維の筋活動電位の高値は、最大随意性筋力の低下による相対的高値化と考えた。遊脚期にも高値を呈したことは、筋弛緩能力の低下を示唆し、筋の機能低下を裏付けていると考えた。
  • 予後を含めた運動療法介入の効果の検討
    影山 昌利, 高木 大輔, 内藤 美沙希, 佐々木 嘉光
    セッションID: C-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】
     ブラウン・セカール症候群(BSS)と中心性頚髄損傷(CCS)単独の予後及び運動療法介入の効果に関する報告は多いが、合併例に関しての報告は少ない。今回BSSとCCSを合併した症例を経験し、予後を含めた運動療法介入の効果の検討を行った。尚、本人に口頭・紙面で説明し同意を得た。
    【症例紹介】
     60歳代後半男性。平成21年1月23日にトラック荷台より転落。頚髄損傷・第2腰椎圧迫骨折・左下腿骨折受傷しA病院に入院。2月5日に左下腿骨折に対する固定術施行。2月12日に腰椎コルセット完成し翌日よりリハビリ開始。3月9日に当院転院。
    【入院時現症】
     精神状態良好。ASIA運動スコア右12点(上肢2点・下肢10点)、左40点(上肢20点・下肢20点)。感覚スコア触覚左右56点、痛覚右56点、左10点。左半身C5以下温痛覚脱失。深部感覚異常なし。機能障害尺度Cレベル。MMTは右上肢が分離運動不十分につき評価不可、右下肢0~3レベル、左上下肢3~4レベル。TUG19.1秒、10m歩行19.0秒。歩行はサイドウォーカー近位監視レベル。FIM107点で病棟内車椅子自操レベル。
    【経過】
     平成21年3月9日からPT・OT訓練開始。3月19日より肝炎でベッドサイド訓練のみ実施。4月1日より訓練室で再開。4月2日にT字杖歩行訓練開始。4月15日に屋内四輪型歩行車歩行自立。5月8日より片脚スクワット訓練追加。5月22日に屋内T字杖歩行自立。6月5日に自宅退院。
    【退院時現症】
     ASIAスコア変化なし、機能障害尺度Cレベル。MMT右下肢0~3レベル、左上下肢4~5レベル。TUG11.7秒、10m歩行10.19秒、T字杖歩行自立。FIM112点。
    【考察】
     ICCP臨床試験ガイドラインによると、ASIA機能障害尺度においてCからD以上へと回復する割合は93%と報告されている。本症例はASIA機能障害尺度においてCレベルから変化がなく、明らかな麻痺の改善は認められなかった。今回の結果からBSSとCCSを合併した症例においては単独例と比べて麻痺の改善は乏しいが、運動療法介入により筋力・バランス・歩行能力等の身体機能とADL能力向上が認められる可能性が示唆された。
  • 清水 恒良, 見田 忠幸
    セッションID: C-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】人工股関節全置換術(以下THA)の術前、術後ともに股関節可動域制限と跛行を呈し、股関節周囲筋及び骨盤、体幹を考慮したアプローチにて跛行が改善された症例を経験したので若干の考察を加え報告する。
    【症例紹介】症例は50歳代の女性である。変形性股関節症(以下股OA)と診断されTHAを施行した。術後より理学療法を開始、術後9週で退院し外来通院となる。
    【評価及び理学療法】初診時の術後5週にて関節可動域(以下ROM)は右股関節屈曲100°、内転5°、内旋10°であり、徒手筋力検査(以下MMT)は右股関節屈曲筋群3、外転筋群3、外旋筋群2であった。圧痛とtightnessは腸腰筋、大腿筋膜張筋、中殿筋、外旋筋に認め、thomas test、ober test、patric test、freiberg’s testで陽性を認めた。骨盤傾斜角(X線像における左右の上前腸骨棘の2点間線と水平線との角度差)4°の患側下制を生じ跛行が認められた。理学療法は患側の腸腰筋、大腿筋膜張筋、中殿筋、外旋筋と健側の内転筋の滑走性と伸張性の改善を図り、術後11週でROM、MMTは健側同等、整形外科テスト陰性となり骨盤~体幹回旋可動域訓練、股関節周囲筋の協調性訓練を術後16週まで追加施行した結果、骨盤傾斜角-1°に減少し跛行が改善された。
    【考察】術前より股OAによる疼痛回避性の跛行が見られ、股関節周囲筋の拘縮、短縮、spasmによる滑走性、伸張性の低下が考えられた。THAにて股関節機能は是正されたが、股関節周囲筋の拘縮、短縮は残存し、患側の相対的外転位、健側の相対的内転位となり跛行していた。浅野らは股関節周囲筋の協調性低下が跛行の一要因であると述べており、筋力向上に加え股関節周囲筋の協調性の重要性を示唆している。症例も筋力低下と協調性の低下が著明に現れており、股関節及び体幹の可動域改善及び筋の協調性向上が跛行改善につながったと考えられた。
  • 後藤 寛幸, 足立 恵一, 坪井 歩, 甘井 努, 大嶋 義之, 齋藤 好道
    セッションID: C-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】 多発交通外傷後,まず車椅子ADL自立の後,装具処方と積極的な起立・歩行訓練により歩行自立となった症例を報告する. 【症例】 55歳男性【診断名】骨盤骨折(右寛骨臼骨折など),両下腿開放骨折(右脛腓骨二重骨折,左脛骨骨幹部骨折,左足関節内果骨折),左リスフラン関節脱臼骨折,神経因性膀胱,両坐骨神経損傷に伴う両膝関節から遠位の麻痺.【合併症】糖尿病【病歴】H19.7.20軽トラック運転中乗用車と正面衝突し受傷.心タンポナーデに対し心嚢ドレナージ.骨盤骨折に対し両内腸骨動脈塞栓術,両血気胸に対してトロッカー挿入し救命.8.3(左)脛骨髄内釘,足関節内果CCS,(右)脛骨近位CCS,遠位K-W骨接合.股関節臼蓋螺子にて骨接合.右脛骨偽関節形成の為,10.12プレート固定,骨移植施行後創感染.10.31右下腿前面皮膚11.19腓腹筋弁,分層植皮施行.H20.1.29当院初回入院.右下腿偽関節のため右下肢免荷.先ず上肢・体幹筋力強化を実施.4.22車椅子ADL自立で退院.10.28右部分荷重可能となり歩行訓練目的に再入院. 【入院時評価】 両下腿感覚重度鈍麻.MMT(右/左)大殿筋(1/1)大腿四頭筋(2/3)両前脛骨筋,下腿三頭筋収縮なし.両上肢4.右下腿前面骨癒合部の骨突出あり,皮膚面湿潤.脚長差3cm(左>右) 【経過】 起立,push up訓練実施.装具は右PTB免荷装具(モールドタイプ),左プラスチック短下肢装具を作成.PTB 免荷装具にインナーシェルを工夫し右腓骨骨折線への衝撃緩和,創傷保護実施.右全荷重開始後,両金属支柱付短下肢装具作成.MMT大殿筋(2/2)大腿四頭筋(4/4)両上肢5と筋力向上し歩行器装具歩行自立に至った. 【考察】 骨癒合の時期をみてPTB装具を処方し起立・歩行訓練を行うことで,両下肢近位筋と体幹筋力向上が図り,実用歩行の可能性が出た後に両短下肢装具を再作成し歩行自立に至った.
  • 鳥居 滋志, 勝井 洋, 後藤 聡, 遠藤 瞳
    セッションID: C-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】25歳男性で前十字靭帯損傷の患者で手術後10週目で15cmの段差から降りて着地をするトレーニングの着地時に疼痛の訴えがあった。膝関節を中心に治療を行っていたが疼痛の改善が見られないため脊柱のアライメントに着目して評価しトレーニングを指導し疼痛の改善が得られたため報告する。【目的】柔軟性が低下しており骨盤の前湾を減少させ姿勢を保持しているため脊柱の柔軟性を出し胸・腰椎にて荷重が分散できるよう患者に対し座位四股を指導した。【経過】脂肪体・膝窩筋・ハムストの柔軟性を獲得できるよう治療を行ったが疼痛の消失には至らなかった。【評価】問診より小学生からサッカーをしており中学生の時に腰痛を訴え他院にて腰椎すべり症と診断された。Swayback姿勢である。SLR右60度左40度であった.体幹伸展で下位腰椎が強く動き胸椎の動きが少ない、体幹屈曲では胸・腰椎の動き・骨盤の前傾が減少し可動域は低下していた。【方法】10分間施行し、座位四股を施行前後でスクワット動作・体幹可動域の比較をする。【結果】着地時の後方重心が減少し疼痛が消失した。体幹可動域では、前屈可動域において改善が見られた。【考察】胸・腰椎が平板化していることで骨盤を後傾方向へ向かわせ脊柱にかかる荷重を骨盤で支えていると考えた。スクワット時も骨盤の前傾が減少しており大腿直筋が伸張され癒着のある膝蓋骨下外方に牽引力が増し膝蓋骨の圧迫が強くなった。そしてハムストリングスのスパズムにより膝蓋下脂肪体の引き込みが減少し膝蓋骨が膝蓋下脂肪体を圧迫し疼痛が出現したと考えた。疼痛の改善が見られた考察として脊椎の柔軟性が出た為骨盤での荷重の分散が胸・腰椎でも行えるようになり荷重の負担が軽減され骨盤の前傾への動きが出現した。またハムストリングスが短縮から開放され筋機能が向上し脂肪体の引き込みが出来るようになり疼痛が減少した。
  • 固定力と可動域・相反する項目に対して
    伊神 和史
    セッションID: C-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】ギプス包帯やキャスティングテープは固定力に優れ、安静が保てる反面、可動域制限が生じやすく、急性期に不可欠なアイシングも困難である。副木によるソフトシーネでは、固定力不足で特に回旋方向に動いてしまう事がある。テーピングによる固定では、カブレなどの皮膚障害や安易な荷重で安静が保てないおそれがある。安静固定と可動域制限という相反する二つの課題が重要となるが、今回早期回復が必須の症例に対してギプスシーネにテーピング併用することで固定力を保ちつつ、可動域制限を最少にする事が出来たので報告する。
    【方法】足関節内反捻挫の小学生に対して、加水硬化ギプスシーネ(日本シグマックス社オルソグラス)を用い、患者の足型に合わせて成型した。固定は弾性包帯に加えて、ホワイトテープで固定強度を強め、毎回ギプス固定角度を変更し、外した際に底背屈させた。
    【結果】固定期間中も可動域の改善が認められ、ギプス除去時の制限は最少であった。
      【考察】足関節捻挫は完全断裂のオペ症例から湿布安静の軽症例まで様々であるが、早期の不充分な固定は治癒を遅延させ、必要以上の固定は可動域制限を生じさせる。急性期における安静固定とその後の可動域改善が重要で内反捻挫の場合、距骨が脛腓関節に入り込む構造上、長期固定で背屈可動域制限が生じやすい。内反方向のみ制御して、早期からの底背屈は、浮腫、可動域、感覚器において有効と考える。今回急性期固定の工夫と毎回巻き直しによる固定角度対応、底背屈によって、可動域制限を最少に早期の回復をみた。
    【まとめ】ギプスを毎回外して、可動域に対応する方法は、巻き直す手間が発生するが、早期に治療しなければならない症例に対しては非常に有効といえる。
  • 藤井 壮司, 田中 寛, 酒井 達也, 喜多 由加里, 加藤 正貴, 土田 隼太郎
    セッションID: C-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【はじめに】
    変形性股関節症に至るケースとして,先天性股関節脱臼の既往や臼蓋形成不全が因子としてあげられる.これら疾患は両側性に発症することが多い特徴があるため両側への治療の必要性が高いと考えられる.今回,臼蓋形成不全と診断され片側股関節痛を訴える症例に対し治療を行ったので報告する.
    【症例紹介】
    症例は26歳女性.先天性股関節脱臼・装具治療の既往歴がある.平成16年頃より左股関節に違和感出現.平成18年頃からは右寝返りの際に,左股関節前面に疼痛,脱臼感が出現する.現在は椅子に座り靴を履く時に脱臼感が出現する.
    【理学・X-P所見】
    骨盤後傾/前傾(右/左),筋力評価では左股関節周囲筋に低下を認めた.しかし,右外旋筋のみ左より低下.ROMでは股関節外転30°/25°,内転5°/0°,SLR(外旋位)70°/75°.Thomas Test陰性/陽性,片脚立位時の動揺(右<左).歩行では左下肢への重心移動が不十分.CE角23°/21°.臼蓋荷重面に軽度の骨硬化・骨棘がみられる.関節裂隙の狭小化・骨頭の変形はみられない.右大腿骨骨頭が外上方に偏位.
    【治療・経過】
    右外側hamstrings stretch,左腸腰筋stretch,左深部外旋筋再教育を施行.結果,骨盤のアライメントの改善,右外旋筋の筋出力向上,左内転可動域拡大,更に歩行でも左下肢への重心移動が改善され,靴を履く際の疼痛も軽減した.
    【考察】
    本症例において疼痛側だけでなく,反対側に対しても治療を行い疼痛軽減が図れた.理学・X-P所見から,右内転筋優位により骨頭が外上方に偏位し,さらに骨盤後傾により骨頭の被覆率が下がっていると考え,骨盤のアライメント改善から右大腿骨骨頭のアライメント改善を図った. 右骨盤の前傾が得られ,左股関節屈曲筋群の過緊張が軽減される事で立位歩行時の股関節の伸展が出やすくなる事で,左側への重心移動が改善された.
    【まとめ】
    両側性に発症する疾患に対しては,片側のみに症状が出現している症例においても両側を治療することで,疾患の進行を遅らせる効果が大きいと考えられる.
  • 工藤 貴司, 中村 和美, 佐野 光浩, 堀野 広光, 松本 武士, 高塚 俊行, 金子 和代, 山根 達也, 千田 亜香
    セッションID: C-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    今回右TKA術後5日目において荷重痛が強く歩行困難であった症例を経験した。そこで機能改善に加え姿勢制御に着目しアプローチを行い良好な結果を得たので報告する。なお症例に対しては、十分な説明を行い、同意を得た。
    【症例紹介】
    70代女性。診断名は両変形性膝関節症。FTA:190°腰野のOAグレード:3 JOAscore:35点BMI:27.6% 既往歴はH11脳梗塞、腰椎脊柱管狭窄症。術前ROM:右膝屈曲60°伸展‐10。術後1日目より理学療法開始し術後23病日目で転院となった。
    【術後5日目評価】
    右下肢全体に重度の腫張を認め、内転筋群・半膜、半腱様筋で短縮、大腿筋膜張筋(以下:TFL)・腓腹筋で過緊張であった。ROM:右膝屈曲65°伸展-15°右足背屈5°腰椎可動性低下。MMT:右膝伸展3。立位姿勢は胸椎伸展、骨盤後傾、右股関節外転・内旋、膝関節屈曲、足部回内位で重心は左側優位。右下肢への荷重は半膜様筋腱移行部・腸脛靭帯・腓腹筋でNRS6の疼痛を認め困難であった。
    【問題点】
    急激な膝アライメント変化による半膜・半腱様筋への伸張ストレス増大により、術前からのTFL~腸脛靭帯の過緊張に加え、股関節内旋姿勢を作っていた。加えて骨盤後傾・腰椎可動性低下により、後方重心を胸椎伸展にて代償。さらに右膝伸展制限は伸筋群の活動性低下・Knee in姿勢を引き起こし、膝内側への荷重ストレスが増大し疼痛増強の要因と考えた。
    アプローチとして半膜、半腱様筋・TFLに対して筋コンディショニングを行い膝伸展制限の改善を図った。膝伸筋群・腹部・殿筋群の筋力強化に加え、下部体幹を安定させる事で荷重痛軽減を図った。
    【結果】
    膝伸展-15から-5°へ改善し立位姿勢では骨盤後傾位から前傾方向へ促され、右膝伸展も促進されている。術後13病日目では荷重痛なくT字杖歩行が見守りで可能となった。
    【考察】
    荷重痛に対して機能的な問題だけでなく、姿勢制御に着目し介入することで効率良く疼痛を軽減し、T字杖歩行獲得に繋げる事ができたと考えられた。
  • せいかつしゅうかんびょうきょうしつさんかしゃのとくせい
    向井 武志, 永阪 知寛, 山本 有加里, 宮本 陽子, 下地 高也, 大川 貴正, 大川 光
    セッションID: O-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】 理学療法を進めるにあたり、身体的問題と平行して行わなければならない問題に心理的問題がある。個々のセルフ・エフィカシー(以下、SE)は、行動の先行要因の主要な要素となる変数である。また、トランスセオレティカル・モデル(以下、TTM)は、行動変容を理解するために用いられ、もともとは、不健康な習慣的行動の変容を説明あるいは予測するために開発されたものである。そこで今回、生活習慣病教室参加継続率に一般セルフ・エフィカシー(以下、GSES)およびTTMがどのような役割を果たしているのかを明らかにすることを目的とした。 【方法】 第1回生活習慣病教室に参加した19名のうち、同意が得られた15名(平均年齢65.8±7.6、男性6名、女性9名)を対象とし、GSESおよびTTMについて口答で説明後聞き取り調査を行った。また、これらの結果と第2回生活習慣病教室参加継続率との関連を検討した。 【結果】 第2回生活習慣病教室への参加継続率は全体で53%(15人中8人)、内訳としては、GSESが非常に高い0%(1人中0人)、高い傾向にある71%(7人中5人)、普通0%(1人中0人)、低い傾向にある40%(5人中2人)、非常に低い100%(1人中1人)を認め、TTMでは無関心期50%(2人中1人)、準備期100%(6人中6人)、維持期12%(8人中1人)を認めた。 【考察・まとめ】 今回の結果より、行動の先行要因となるSEの高低は参加継続率への影響は少ない可能性が認められた。しかし、TTMにおいては参加継続率および割合において準備期に属するものが高値を認め、行動変容段階の把握が参加継続率に重要な役割を示すのではないかと考えられる。また、参加継続率を高めるためには、行動の変容段階に適した資料を使用し、適度な欲求と誘因を持続させる環境を整えることが重要と考えられる。
  • 山? 節子, 大嶽 昇弘, 木村 小百合, 笠野 由布子
    セッションID: O-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】 宿泊実習の目的を「利用者の生活全体を見させていただき、一生活者としての利用者を全人的に対応することの大切さを理解する」としている。この実習における学生の抱く不安について検討し、今後の実習のあり方を考察する。〈BR〉 【方法】 対象:理学療法学科2年生45名の内、記載漏れのない42名とした。〈BR〉 手順:調査1― 宿泊実習及び実習3(体験見学6日)における不安を不安調査 票(STAI)を用いて調査した。〈BR〉 調査2― 実習前に自由記述させた不安項目に対し、実習中の不安程度を5段階で回答させた。〈BR〉 調査3―「宿泊実習の目的達成が出来たか」「何を学んだか」を記述させた。〈BR〉 調査日― 1.2は実習前後に、3は実習後に実施した。〈BR〉 【結果】 調査1-1)状態 STAI値によると、不安は実習前に比べ実習後に有意に低下した。(p<0.01)〈BR〉 1-2)不安が高いと見られる学生9名(特性STAI平均値+1SD以上)は、状態不安値が実習後に低下しなかった。〈BR〉 調査2- 「宿泊実習で何を学べばよいか」の不安は、ほぼ全員が感じ実習中も同様な不安を感じていた。「心身状態」「トラブル」「宿泊」に対しての不安は、6割以上が感じていたが、実習中に解消出来ていた。〈BR〉  調査3- 目的達成は「出来た」「少し出来た」40名、「出来なかった」2名であった。「他職種理解が出来た」「生活に対する意欲を感じられた」「生活とは何かが少し分かった」等を学んだ。〈BR〉     【考察】 1 ・実習における学生達の不安は大きいが、実習後には有意に低下した。しかし、緊張が高いと判断した学生達の不安は、実習後も低下しなかった。早期に学生の特性を把握し個別指導に生かしたい。〈BR〉 2 ・宿泊実習では、「何を学べばよいか」の不安が多かったが、ある程度の実習効果を挙げていた。今後はビデオ等を用いて目的を十分理解・考察させ、より効果ある実習としたい。 利用者に対し全人的に対応できる理学療法士を育てるためには、本実習は有効であると考える。  
  • 中川 仁
    セッションID: O-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】医学教育では集団力学による相乗的学習効果を期待してグループ学習が多く取り入れられるが、必ずしも効果をもたらすとは限らない。その原因としてグループ内環境が考えられる。今回、グループ編成法が個人の理解促進に与える影響をグループ効率の視点から調べた。 【方法】研究の主旨を学生に口頭で説明し、同意書が得られた本校理学療法学科1年生35名を対象に調査を行ない、Y-G性格検査「D'」の者(A)、ストレスコーピングアンケートより「相手を思いやる」と回答した者(B)、ストレスチェック質問票で「人間関係を築くことができる」と回答した者(C)、男性のみ(D)、男女半数(E)の5グループを編成した。 【結果】各グループ内での個人成績の一致率はAが55.0%、グループ効率では18.0%と最も高かった。グループ内の個人間の解答の一致率とグループ効率の相関を観るとr=0.07であった。グループ内の不一致数をみるとAが最も少なく、Eが最も多かった。その不一致数の正解率を観るとD以外は高い一致率となった。個人間の一致率と不一致問題の正解率の相関はr=-0.39という結果となった。しかし、グループ内での不一致問題の正解率とグループ効率の相関はr=0.86という高い相関が得られた。 【考察】個人間での解答の一致率が高いからといってグループ効率が高くなる、あるいは、不一致数の正解率が上がるとは言えないことが示唆された。また、講義を通して個人得点が平均3.46点(P<0.01 t=5.36)、グループ討議後にさらに平均2.72点(P<0.01 t=6.45)上昇した。これらは、一斉講義法の限界を示すとともに、グループダイナミクスの影響が個人の学習にさらなる効果をもたらす価値があることが示された。これらのことから、「積極性」や「相手を思いやる」といった情意側面がグループ効率を挙げる要因であることが明確化された。 【まとめ】グループ学習で個人の理解度を向上させるためには、「積極性」や「思いやり」など、情意面に配慮したグループ編成が必要である。
  • 西田 裕介, 久保 裕介
    セッションID: O-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】理学療法教育課程における臨床実習は、その特性上、学生を中心に実習施設と養成校との相互関係によって成り立っている。つまり、臨床実習中は、養成校でも学生の状態を適切に把握し、介入する必要がある。本研究では、以下の2つの検討を通して、学生のストレス状況の経時的変化を捉えることができたので報告する。 【倫理的配慮】対象者(検討1・2)には、口頭および文書にて十分な説明を行い、研究参加への同意を得た。 【検討1】本学理学療法学専攻4年生1名(男性)を対象に、8週間の臨床実習(総合実習)における自律神経活動(心拍変動解析)および精神的ストレス(POMSを用いたアンケート調査)の経時的変化を検討した。評価は、実習1週間前から測定を開始した。データは1週毎に平均し、その値を比較した。その結果、交感神経活動(生理的緊張状態を反映)および精神的ストレスは、実習開始1週目、2週目に著明に増加し、この実習初期を過ぎれば、精神的に安定してくることがわかった。 【検討2】本学理学療法学専攻3年生29名(男16名,女13人名)を対象に、4週間の臨床実習(評価実習)中の生理的(毎日の早朝時心拍数)ストレスおよび精神的ストレス(POMSによるアンケート調査)の経時的変化を定量的に評価した。データは、1週毎に平均し、その値を比較した。その結果、生理的ストレスは,実習期間が進むにつれ増加する傾向があり、心理的ストレスは、実習初期に著明に増加するが実習最終週になると減少する傾向が認められた。 【結論】今回の検討より、精神的ストレスは、実習初期(2週目前後)に急激に増加し、この時期を過ぎると安定してくることがわかった。つまり、実習初期(2週目前後)に実習施設および養成校が連携し、学生に対して適切な介入を行うことで、過度な精神的ストレスを抑制し、実習(体験や学習)時の良い環境が構築できるのではないかと考えられる。
  • 松村 純, 横川 正美, 塩本 祥子, 森 健太郎, 三秋 泰一, 洲? 俊男
    セッションID: O-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
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    【目的】  
     端座位での側方リーチ動作練習によってリーチ側への荷重が促されることが考えられるが,リーチ距離と荷重量の関係を検討した報告は少ない.本研究では,様々なリーチ距離でのリーチ動作におけるリーチ側への荷重量と,その際の座圧中心の移動距離,および頭部・体幹・下肢の動きを比較検討することとした.
    【方法】  
     本研究の内容を説明し,参加の同意が得られた健常男性15名(平均年齢24.9±4.0歳)を対象とした.運動課題は端座位での右側方へのリーチ動作とした.被験者に最大リーチ動作を3回行わせ,最大リーチ距離(max)を求めた.次に,maxの20%,40%,60%,80%のリーチ距離を算出し,各リーチ距離での測定を1回行った.分析には動作の最終肢位を用い,三次元動作解析装置の処理画像から頭部傾斜,肩甲帯傾斜,骨盤傾斜,下腿傾斜,体幹の各角度を算出した.また,座面下の重心動揺計から,左右方向の圧中心点(COP X),前後方向の圧中心点(COP Y),右側検出台の垂直方向への床反力を体重で除した荷重量比(RFz/体重)を求めた.
    【結果】  
     各測定値をリーチ距離20%,40%,60%,80%およびmaxとの間で比較した結果,RFz/体重は20%から60%にかけてリーチ距離の延長とともに有意に高値を示し,60%以降はほぼ全体重がリーチ側にかかっていた.骨盤傾斜,COP Xはリーチ距離の延長とともに有意に高値を示した.さらに単回帰分析を行ったところ,骨盤傾斜とCOP Xとの間でR2=0.95の直線回帰で示された.
    【考察】  
     本研究の結果から,荷重を促すという目的のもとリーチ動作を行う場合,最大リーチ距離の60%程度のリーチ動作で十分効果が得られるのではないかと考えられる.また,骨盤傾斜とCOP Xとの関係から,骨盤傾斜がリーチ動作中のCOPの移動距離の目安となることが示唆された.
  • 竹内 真太, 西田 裕介
    セッションID: O-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/21
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】心拍リズムと運動リズム間の同期現象(CLS)は,心血管系と活動筋との間で協応が起こることから,血液の循環効率がよい状態を示していると捉えられている。そこで本研究では,心拍出量と動静脈酸素含有量格差の積で表される酸素摂取量を用いてCLS時の運動の効率を検討することで,心血管系と活動筋の間での血液の循環効率を明らかにすることを目的とした。
    【方法】対象は健常成人男性8名(年齢23±2歳,身長170.7±8.26cm,体重62.4±8.26kg)とした。方法は,歩行リズムを120steps/minに合わせ,心拍数120bpmで定常状態となるよう調節されたトレッドミル上で10分間の歩行を行った(CLS群)。十分な休息の後,同様のトレッドミル速度と傾斜にて,対象者の好みの歩行リズムで10分間歩行を行った(自由歩行群)。主な測定項目は,心拍数と酸素摂取量とした。各プロトコル間の心拍数および酸素摂取量の比較には,対応のあるt検定を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。本研究は,聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認のもと実施した。
    【結果と考察】心拍数は両群間で有意差は認められなかった。心拍数に差がないことから,両群間における活動筋への血液供給量には差がないと考えられる。一方,酸素摂取量は,CLS群23.0±2.33l/kg/min,自由歩行群21.1±2.33l/kg/minであり,CLS群が有意に高値を示した。これは,CLSの発生によって,活動筋の弛緩のタイミングと筋への血液流入のタイミングが一致し,活動筋への血液流入がスムーズに行われ,効率よく血液が利用されたためと考えられる。その結果,筋の有酸素的代謝が亢進し,酸素摂取量が増加したのだと推測される。したがって,CLS時には歩行時の活動筋への血液供給が効率よく行われている可能性が示唆された。
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