東海北陸理学療法学術大会誌
第25回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: C-12
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腸骨に付着する筋群を広範囲に切除した症例の歩行分析
*中山 善文長尾 恵里金井 章後藤 寛司柴田 佳子米川 正洋
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抄録

【目的】  悪性骨盤腫瘍の根治手術において腸骨に付着する筋群を広範囲に切除したにも関わらず、補助具なしに歩行可能となった症例の歩行分析を行うこと。 【対象】  症例は10代の女性。右骨盤Ewing肉腫。7年前に根治手術が行われ、仙腸関節から臼蓋直上までの腸骨全切除と、腸骨に付着する中殿筋、小殿筋、腸骨筋の全層切除、腹斜筋、大腿筋膜張筋、縫工筋、大腿直筋、大殿筋の部分切除が行われた。切除した腸骨の一部は加熱処理後に再建に利用され、部分切除された筋群は可及的に処理骨に縫着された。終診時、股関節可動域制限はなく独歩可能だが、Duchenne徴候を認めた。 【方法】  課題は 10mの自由歩行とし、赤外線反射マーカーを身体35箇所に貼付し、三次元動作解析装置(VICON社製)と床反力計(AMTI社製)にて三次元位置データと床反力を計測した。表面筋電計(NORAXON社製)にて中殿筋、大殿筋上部・下部線維、大腿筋膜張筋、大腿直筋、内側広筋、外側広筋、長内転筋の歩行と同期した筋電図を記録した。歩行時の関節角度、関節モーメント、筋活動電位を算出し、健側および健常者(20代の女性1名)との比較を行った。 【結果】  患肢立脚期を通して左骨盤挙上、右股関節外転位を呈し、荷重応答期から前遊脚期にかけて外部股関節外転モーメントが作用していた。立脚期の右中殿筋、大殿筋下部線維、大腿直筋、長内転筋の筋活動電位の平均値は高値を示し、健側比較、健常人比較とも有意に増大していた。筋活動電位の高値は遊脚期においても持続した。 【考察】  立脚期において外部股関節外転モーメントを発生させ、股関節内転筋の制御により歩行安定性を得ていると考えた。中殿筋、大殿筋下部線維の筋活動電位の高値は、最大随意性筋力の低下による相対的高値化と考えた。遊脚期にも高値を呈したことは、筋弛緩能力の低下を示唆し、筋の機能低下を裏付けていると考えた。

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© 2009 東海北陸理学療法学術大会
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