東海北陸理学療法学術大会誌
第26回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: S-3
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ゴムバンドを用いた麻痺側下肢の振り出し介助について
Swing Assist Spiral Bandの紹介
*間瀬 和人
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キーワード: 片麻痺, 遊脚期, 振り出し
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抄録
【はじめに】片麻痺BRS2から3への移行期において、麻痺側下肢随意伸展可能で支持性はあるが、随意屈曲が出来ずに歩行での振り出しに介助を要する症例を経験することがある。片麻痺患者に用いる装具の多くは足関節底屈を制御する短下肢装具や膝関節を伸展位に固定する長下肢装具であり、遊脚期の下肢全体の振り出しを介助するものはみられない。今回ゴムバンドを用いる事で安価で簡単に振り出しを介助する方法Swing Assist Spiral Band (以下SASB)について紹介する。
【SASBの概要】骨盤帯から趾尖にかけて麻痺側下肢全体にゴムバンドを二重螺旋状に巻く事により、麻痺側下肢全体の屈曲を介助する。
【材料】セラバンド(Hygenic社製、Extra Heavy)幅14cm×長さ270cm程度(対象の下肢長、下肢周径、腹囲、下肢伸筋緊張による)
【介助のメカニズム】麻痺側下肢は立脚後期に伸展するが、ここでSASBは最大に伸張された状態となり張力を高める。この張力により麻痺側下肢の遊脚初期における振り出しの加速を得ることができる。
【適用】脳卒中片麻痺(BRS2~3)などで随意的な下肢伸展が可能だが、随意的な下肢屈曲ができない例。自力で端坐位保持出来る程度の体幹機能を有すること。
【除外】麻痺側下肢伸筋痙性の強い例
【症例紹介】56歳女性、診断名:脳梗塞(左中大動脈領域)。7病日より立位練習開始(BRS2)。8病日より歩行練習開始(BRS2)。麻痺側下肢の振出に介助を要するためSASB導入。22病日よりBRS3、自力での振り出しが可能となった為、SHBへ移行。
【考察】徒手での介助が不要である為、訓練を進めるなかで療法士は患者の全身に注意を配りやすくなった。SASBは麻痺側下肢の立脚後期に最大に伸張されるため、遊脚初期の加速度を最大にするには、立脚後期に麻痺側下肢でしっかりと蹴り出すことが求められ、立脚後期の歩容改善にも利用することが出来た。この症例での麻痺側下肢の振り出しに介助を要した期間が2週間と長くない。そのため安価で簡単に装着のできることも、早期に歩行練習を開始するうえで好条件といえる。
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© 2010 東海北陸理学療法学術大会
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