抄録
【はじめに】
膝疾患患者の膝蓋靱帯を運動器超音波検査で観察すると,膝蓋靱帯が弛み治療すると弛みが減少していることがある.
今回膝疾患患者と健常者の膝蓋靱帯の弛みの程度を観察し,客観的評価の指標となりうるか検討した.
【対象と方法】
対象1:2010年3月1日~同年6月4日の期間に演者が担当した膝疾患患者92名の中で,運動器超音波検査を実施したものは47名だった.そのうち膝蓋靱帯部を観察したものは20名で,膝蓋靱帯が背側に凸を示すものが10名,膝蓋靱帯が膝蓋骨から脛骨粗面を結んだ直線に並行なものが10名であった.
対象2:健常者11名22脚(男性5名,女性6名)を対象に内側広筋(以下VM)・外側広筋(以下VL)収縮時の膝蓋靱帯の動きを観察した.測定肢位は背臥位で膝窩部に枕を入れ膝30°屈曲位とした.観察・測定は運動器超音波診断装置(GE Healthcare LOGIQ P6)を用いた.筋収縮は低周波治療器スーハ゜ーテクトロンHP200(テクノリンク製)を用い,双極通電法で目的筋を最大限に収縮させた.測定部位は膝蓋靱帯部の長軸走査で膝蓋骨から脛骨粗面までを描出した.測定は1)筋収縮前,2)VM収縮後,3)VL収縮後に行った.膝蓋骨から脛骨粗面までを直線で結び,この直線から最も離れた膝蓋靱帯表層までの垂線Lの距離を測定した.また筋収縮前Lに対する筋収縮後Lの割合を求めて平均値を算出した.
【対象1の症例】
60歳代女性,入浴中に転倒し左膝を強打,左膝蓋骨骨折.VM委縮あり.明らかに膝蓋靱帯は背側に凸を示していた.垂線Lは0.36cmであった.
【対象2の測定結果】
1)筋収縮前は0.33±0.14cmだった.2)VM収縮後は0.18±0.07 cm,56.6±26.8%だった.3)VL収縮後は0.16±0.08 cm,50.3±26.6%だった.
【考察】
VLがより膝蓋靱帯を伸張させた.これはVM斜線維が膝蓋骨を内側に牽引すること,VLが大腿四頭筋中最大であることから,VLの方がより膝蓋骨を上方牽引したと考える.対象1と2を比較すると,膝蓋靱帯の弛みが類似する例がみられた.
【結語】
VM・VLの収縮は膝蓋靱帯を伸張させた.筋機能や膝蓋骨の動き,脛骨回旋を考慮すれば,膝蓋靱帯の形態・動きが客観的評価の指標となりえよう.