東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-054
会議情報

通所介護利用者における生活機能調査
移動能力を中心として
*八木 幸一小田 咲子内藤 貞子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】 高齢者における自立度の低下について移動能力の低下が大きな要因となっていることが考えられるが、その実態は明らかになっていない部分が多い。今回、要支援者および要介護者に対し東京都老人総合研究所によって開発された「おたっしゃ21」を実施し、その中から移動能力に関する項目を分析しその実態を解明することを目的とした。 【方法】 デイケアセンターの通所者と対象に、介護度と歩行・転倒に関する関係を「おたっしゃ21」の調査結果から検討した。対象は208名(男性105名、女性103名)平均年齢77.5歳。介護度は要支援1、12名。要支援2、38名。要介護1、41名。要介護2、69名。要介護3、33名。要介護4、15名。要介護5、0名であった。対象者に対し「おたっしゃ21」の21項目の調査を個別に聞き取りにて行った。質問項目は21項目のうち「この1年間に転倒したことがありますか?」「現在転ぶのが怖いと感じますか?」「一人で外出ができますか?」「1キロぐらいの距離を続けて歩くことができますか?」「一人で階段の昇降ができますか?」「物につかまらないでつま先立ちができますか?」「握力は男性29キロ以上、女性19キロ以上ですか?」「開眼片足立ちは男性で20秒以上、女性で10秒以上ですか?」「5メートル歩行は男性で4.4秒以上、女性で5秒未満ですか?」の9項目を採用した。 【結果】  1年間の転倒経験では、要支援1から要介護3までは増加傾向にあったが要介護4では減少した。転倒に対する恐怖感では、要支援1が58.3%で一番低く要支援2が94.7%と一番高値を示した。一人での外出は、要支援1が58.3%の人が不可能で最低値で要介護度4が86.7%で最高値であったが介護度との相関はなかった。1キロの連続歩行では要支援1が50%、要支援2が68.4%、要介護1が46.3%、要介護2が75.4%、要介護3が72.7%、要介護4が86.7%の人が不可能で介護度との関係はなかった。一人での階段昇降では要支援1では8.3%が不可能で介護度が増すにつれて不可能の割合が増加し要介護4では86.7%の人ができなかった。つかまり立ちでは、要支援1で58.3%が不可能と答えたが要介護度2以降は不可能な人の割合が急激に増加し要介護4では可能な人はいなかった。握力は要支援1では33.3%、要支援2では65.8%、要介護1では80.5%、要介護2では68.1%、要介護3では60.6%、要介護4では73.3%が基準値以下であった。開眼片足立ちでは要支援1が75%、要支援2が94.7%、要介護1が95.1%、要介護2が92.8%の人が基準値以下で、要介護3、4では基準値以上はなかった。5メートル歩行速度では要支援1で58.3%、要支援2で68.4%、要介護1で65.9%、要介護2で84.1%、要介護3で84.8%、要介護4で86.7%が基準値以下であった。 【考察】 結果より、転倒経験に関しては介護度との相関はなかったが要介護4では減少していた,これは介護度4では歩行の機会が減少する要因が考えられる。これに対して歩行時の転倒恐怖感では要支援1以外ではいずれも高い値を示している。特に要支援2では94.7%と要支援1に比べ急激に増加していた。また外出可能や持続歩行では要支援2と要介護1の間で機能の逆転がみられ転倒恐怖感の強さがこの原因の1要因と考えられる。階段昇降では介護が増すにつれて不可能の割合が段階的に増加し介護度を判定するための指標となりうる項目であると考えられる。身体機能を見る項目においては、握力では要支援1以外は基準値を下回る人が多く、また開眼片足立ちでは要支援1では25%が可能であったがそれ以外では不可能な人がほとんどであり筋力低下が機能低下の大きな要因と考えられる。したがって、筋力の維持および向上は介護度の改善に関与するのではないかと考えられた。

著者関連情報
© 2011 東海北陸理学療法学術大会
前の記事 次の記事
feedback
Top