東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-055
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変形性膝関節症に対する装具装着率
*山? 直哉鳥居 善哉太田 進金井 章今泉 史生光山 孝谷山 裕之
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抄録

【目的】  変形性膝関節症の保存療法には、大きく分けて保存療法と手術療法の2つがある。保存療法の一つとして装具療法があり、一般的に臨床で使用される軟性支柱付き装具においても疼痛軽減と歩行能力の改善が報告されている(2010,槻)。しかし、臨床では、処方された当初は装具を装着しているものの、その後、装着しなくなる症例も散見される。しかしながら、その装着率に関してどのような症例がなぜ装着しなくなったのかなど検討した報告は少ない。そのため今回、変形性膝関節症(以下膝OA)のGrade別の装着率とFTA別180°未満・180°以上の群に別けての装具の装着率、装具着脱理由を検討した。
【対象】  膝OAの患者24名(Grade_I_:8名、_II_:12名、_III_:4名)を対象とした。男性8例、女性16例、右10例・左14例[FTA180°未満177°±1.2°(13名)、180°以上183±2.0°(11名)]、平均体重60Kg±8Kg、平均身長155cm±9cm、平均年齢は72歳±8歳であった。
【方法】  対象者に支柱付き軟性膝装具Geltex light sports‐3(日本シグマックス社)を無理なく装着するよう指示し4週間貸し出し、その装着率を測定した。装具装着側は1日の中で疼痛の強い方とし装具装着時間が8時間以上装着を○(1)、4時間~8時間を△(0.5)、4時間未満を×(0)とし各対象者に日々記載してもらい、4週間の平均装着率をカッコ内の数値に置き換え算出した。また装具を装着しなかった場合の理由を自由記載にて調査した。なお、装着率のGrade別比較にはKruskal-Wallis検定を行い、FTAによる2群間比較にはt検定を用い、有意水準を5%未満とした。
 なお、対象者にて事前に研究に関する十分な説明を行い、豊橋創造大学生命倫理委員会の同意を得た。
【結果】  装着率はGrade_I_では47%±26%、Grade_II_は59%±33%、Grade_III_は69%±34%、全体で58.8%±31%であった。Grade別の有意差は認められなかった。FTA180°未満では46%±25%、FTA180°以上では62%±34%であったが、両群間に有意差は認めなかった。 【考察】  4週間の装具のGrade別、FTA別に膝装具の装着率は、検討したが有意差は認められなかった。今回使用した支柱付き軟性膝装具は最も一般的な膝関節装具であった。GradeやFTAといった膝OAの重症度と装着率の関連はないことがわかった。また、本研究で使用した軟性膝装具の装着率は全体で約60%であった。装具を使用しなかった理由については日常生活で膝関節深屈曲のしゃがみこみ動作・床からの立ち上がり動作を多用する和室生活の方に脱着傾向が強くみられ、中には外出時のみ装着するなどの意見もあった。また膝関節深屈曲を用いない歩行、階段昇降には装着するとの返答がえられた。以上より膝OAの重症度よりも症例の日常生活スタイルに装具の装着率は影響される可能性が示唆された。

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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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