抄録
【目的】日常診療で変形性膝関節症(以下膝OA)に、扁平足を伴う症例を経験することが多い。膝OAの悪化因子は、年齢、性別、BMI、職業、生活様式、スポーツ、下肢アライメント(FTA)、骨粗鬆症、遺伝、代謝障害などがある。本研究は、我々が臨床で膝OA患者に多くみられると感じた扁平足と、足部縦アーチを保持するといわれる趾屈筋力の低下が、膝OAの治療経過に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は、平成22年3~8月に当院を受診した膝OA 81例のうち、治療開始から3週間経過時の評価ができた26例(すべて女性、平均年齢57.2±8.44歳)である。計測評価はBAUERFEIND社製フットプリンター、趾屈筋力計、日本版変形性膝関節症患者機能評価尺度(以下:JKOM)によった。測定方法: フットプリントは患肢片脚立位とした。趾屈筋力は、バネ秤を応用した趾屈筋力計で測定した。JKOMは、初診時、3週間経過時に行った。評価方法: フットプリントより前足部荷重中心位置、重心移動のタイプ分け、縦アーチの減少程度、及び内反小趾・外反母趾の有無を点数化し合計(満点14点)した(扁平足スコア)。趾屈筋力は3回測定しその平均値とした(趾屈筋力スコア)。JKOMは、25項目を症状が軽い順に0~4点とし合計した(JKOMスコア)。データ解析方法: 症例を扁平足・趾屈筋力スコアの平均値(扁平足6.9、趾屈筋力2.79)を基に、扁平足傾向あり・趾屈筋力が弱い群(以下a群)、扁平足傾向なし・趾屈筋力が強い群(以下b群)に分け、a・b両群間のJKOMスコア1回目、2回目、変化スコアを比較した(t-検定)。p<0.05を有意差ありとした。尚、各群データの取扱いに関しては、匿名化し患者の人格と守秘義務に十分配慮して本研究を施行した。
【結果】a群7症例の平均値は、扁平足スコア8.9±1.4点、趾屈筋力スコア2.4±0.5kgであった。JKOMスコア1回目平均27.7±23.3、2回目平均19.7±18.6、その差を示す変化スコアは8.0±15.6であった。b群6症例の平均値は、扁平足スコア4.0±1.8点、趾屈筋力スコア3.2±0.5kgであった。JKOMスコア1回目平均15.5±8.6、2回目平均10.5±4.5、変化スコアは5.0±6.2であった。 t-検定は、a・b両群間のJKOMスコア1回目(p=0.235)、2回目(p=0.247)、変化スコア(p=0.653)ですべて有意差はなかった。
【考察】初診時のJKOMスコアが悪い例ほど治療効果が表れた。しかし、改善しても3週後のスコアが良い例を超える傾向はなかった。このことは、治療を進める上で初診時にどの程度改善されるかおおよその検討をつけるのに有効である。扁平足の傾向と趾屈筋力の強弱で分けたa・b両群間では、初診時、3週後のJKOMスコアに大きな差がみられ、膝OAの治療経過に扁平足・趾屈筋力低下の影響が示唆された。しかし、初診時、3週後のJKOMスコアと変化スコアを各々a・b群間で統計的処理(t検定)をおこなったが有意差はなかった。膝OAの悪化因子には年齢、性別、BMI、FTA、職業、生活様式等が考えられる。従って、扁平足・趾屈筋力の二項目の検討では不十分であり、膝OAの治療経過との関与を推測するには多くの因子を集約的に検討する必要がある。
【まとめ】
・膝OA患者に扁平足の評価、趾屈筋力の計測を行った。
・膝OAの治療経過は扁平足・趾屈筋力低下の関連が示唆された。
・膝OAの治療経過と悪化因子の関与を推測するには、それらを統合的に検討する必要がある。