抄録
【目的】高齢化社会に伴い重度要介護者、認知症を有する高齢者が増え、核家族化が進む中、家族介護が十分でない場合も多く介護問題は高齢者の抱える最大の不安要因と考えられる。一方、訪問リハビリ(以下:訪問リハ)は早期介入することで、それら不安要因に対して有効に働きかけることが期待できる。今回、訪問リハ利用者の動向からその効果について検証したので報告する。
【方法】当院では定期的に日常生活動作能力を把握するため、機能的自立度評価表(Functional Independence Measure:FIM )を用いている。今回、訪問リハ開始から6ヶ月間の効果を検証するため、平成21年9月から平成22年9月の新規利用者88名の内、6ヵ月間訪問リハを継続した50名(男性20名、女性30名)を対象とした。平均年齢76.08±9.3歳(男性76.2±10.43歳、女性76.0±8.65歳)、介護度は要支援1は2名、要支援2は9名、要介護1は7名、要介護2は9名、要介護3は7名、要介護4は10名、要介護5は6名であった。検証方法は1)入院期間から在宅生活を想定して訪問リハの利用を検討し、退院後早期に訪問リハを開始した群(早期群28名:平均開始期間5.53±4.07日)と、在宅生活を送りながら身体及び動作能力の低下、介護負担を感じて訪問リハを開始した群(非早期群22名)間と、2)疾患別では、脳血管群:23名、運動器群:8名、廃用群:19名間において検証した。また3)日常生活動作の維持・拡大のため重要である『トイレ動作』『トランスファー』『歩行』を区別し、各々の項目の「しているADL」のFIM値から訪問リハの効果について検証した。それぞれFIM値を基にt検定を用いて統計学的有意差を求めた。有意水準は5%未満とした。
【結果】早期群の訪問開始時の平均FIM値77.39、3ヵ月後の平均FIM値81.53、6ヵ月後の平均FIM値81.89間に有意差を認めた。非早期群の開始時平均FIM値85.09、3ヶ月後の平均FIM値88.45間に有意差を認めたが、6ヵ月後の平均FIM値は87.68と低下した。脳血管群と運動器群において開始時平均FIM値と6ヵ月後の平均FIM値間に有意差を認めた。廃用群は開始から3ヵ月後の平均FIM値は向上、6ヵ月後の平均FIM値は低下した。『トイレ動作』『トランスファー』『歩行』の中で脳血管群と運動器群の『トランスファー』は、開始時と6ヵ月後の平均FIM値間に有意差を認めた。廃用群は開始から3ヵ月後は各項目で平均FIM値の向上はみられたが有意差は認めなかった。
【考察】今回、訪問リハは早期介入により6ヵ月間に渉り訪問リハの効果が得られることがわかった。これは入院期間中のリハビリ効果を継続させ、退院後も生活に密接に溶け込んだ中で訪問リハを提供することで、さらにリハビリ効果を得ることができたと考える。非早期群は開始から3ヵ月間、平均FIM値の向上を認め一定の効果を得られたが、3ヵ月以降は利用者間の介入時期の差も影響しており、維持期の利用者が含まれているため有意差を認めなかったと考える。疾患別では、脳血管群と運動器群において開始から6ヵ月の間、『トイレ動作』『トランスファー』の平均FIM値の向上を認め、『トランスファー』の項目においては有意差を認めた。トランスファー能力が向上した結果、介助を必要とすることもあるが離床機会が増えたことにより、日常生活動作の維持や拡大、廃用予防につながったと考える。また在宅生活を送りながら、離床に必要な能力を引き出すことができたことからも訪問リハは有効であることが確認できた。廃用群は介入するも十分な効果を認めず、3ヵ月を境に平均FIM値は低下した。これは廃用群の多くに離床する際に中等度程度の介助を必要とする傾向があり、次第に離床する機会を失い、活動量の減少を生じ、さらに身体機能や動作能力の低下を招いたためと考える。日常生活の中で、「しているADL」を少しでも増やすことは重要であり、利用者や家族が訪問リハ以外の時間をどのように過ごすかが、身体機能や動作能力の維持・向上に大きく影響する。今後、6ヵ月以降の利用者の動向を検証することで訪問リハの有効期間や終了時期、他のサービスへの移行期等について検証することができると思われる。
【まとめ】北野は退院後、在宅生活が始まる1ヶ月間の「在宅導入期」は利用者や家族の不安・負担が大きくトラブルが起こりやすく、上手くこの時期を乗りきることが重要と述べている。介護負担が大きい場合、家庭生活が崩壊することもあり、早期から訪問リハを始め効果的なリハビリを提供することで身体的要素の回復が得られ、動作能力向上、日常生活動作の拡大につながり、介護負担軽減にも大きく影響する。利用者を含め家族等が生活を送る中、いかに早い段階で実用的な「しているADL」を向上・獲得できるかが重要であり、適切に介入することで自立した生活や介護量軽減につなげることは十分に可能であると考えられた。