東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-37
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当院ICUにおける呼吸リハビリテーションの現状
*伏屋 有子加賀谷 斉早川 美和子星野 美香水谷 公司石川 綾子都築 晃
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抄録

【目的】
当院では2009年6月からSurgical ICU(外科系集中治療室)がICU(集中治療室)となった。6床から10床へと増床し、術後患者のみならず、院内急変を含む内科系、外科系の最重症患者を収容し、積極的な集中治療を行っている。またICU開設にともない、専従の理学療法士が常駐し呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)を実施している。今回、当院ICUにおける呼吸リハの現状を分析したので報告する。
【方法】
2009年6月から2011年3月までにICUに入室し、2011年6月1日の時点で呼吸リハが終了となった385件を対象とした。当科のデータベースを用いて、疾患、ICU入室期間、転帰などを後方視的に分析した。術前から呼吸リハを実施している場合は術翌日から開始し、それ以外の症例に関してはICU入室後、麻酔科からの依頼を受け、当日から呼吸リハを開始している。また、ICU担当の理学療法士は3名おり、日曜、祝祭日を除く週6日間、半日交替で勤務し、1名の理学療法士が常駐する体制をとっている。呼吸リハの内容は主に体位ドレナージやスクイージングなどの排痰手技、ポジショニング、患者の状態に合わせて座位や立位といった離床訓練を実施している。また、ICU退室後は状態に合わせ離床を進め、原則として自力排痰可能かつ、病棟歩行が自立または病前の日常生活活動が再獲得できた時点で呼吸リハを終了にしている。
【結果】
患者平均年齢は65歳(1-91歳)であり、疾患は心血管疾患202件、消化器疾患123件、呼吸器疾患13件、その他の疾患は47件であった。ICU入室期間は中央値7日、ICUでの呼吸リハ施行期間は中央値5日であり、年末年始や日曜祝祭日といった休日を除き、実際にICUで呼吸リハを行った日数は中央値4日であった。またICUで呼吸リハを開始してから終了までの呼吸リハ施行期間は中央値45.5日であった。対象患者の8割を占める心血管疾患、消化器疾患を疾患別にみてみると、ICU入室期間、ICUでの呼吸リハ施行日数、およびICUで呼吸リハを開始してから終了までの呼吸リハ施行期間の中央値は大動脈瘤(n=62)8日、6日、25日、狭心症(n=38)5日、3日、17日、弁疾患(n=35)6日、3日、21日、慢性肺血栓塞栓症(CPTE)(n=23)8日、5日、28日、大動脈解離(n=15)8日、6日、30日、心筋梗塞(n=14)7.5日、4日、29日、その他の心血管疾患(n=15)5日、3日、22日であった。消化器疾患では、肝臓・胆管癌(n=52)4日、3日、18日、食道癌(n=22)4日、3日、20日、胃癌(n=9)3日、2日、15日、大腸癌(n=5)12日、8日、62日、その他の消化器疾患(n=35)11日、7日、26日であった。
また全対象患者385件中、入院中に呼吸リハが終了となったのが149件、退院まで呼吸リハを継続した症例の転帰は、自宅退院が121件、死亡退院が75件、転院が40件であった。
【考察】
今回、ICUでの呼吸リハ施行期間の中央値は5日であったが、休日を除いた実際の呼吸リハ施行日の中央値は4日であった。年末年始や日曜祝祭日といった休日は呼吸リハの介入が少なく、十分なアプローチができているとは言い難い。今後は祝祭日も含め365日対応可能な新しい臨床システムの導入が必要である。
当院ICUでは3名の専従理学療法士が交替でICUに勤務しているが、365日対応できる臨床システムの導入には理学療法士の拡充が課題となってくる。ハイリスク患者を前に、適切なリスク管理と迅速な評価・アプローチを行うには知識や技術だけではなく、一定の経験が必要となるため、リハスタッフへの指導・教育も可及的速やかに解決すべき課題の一つである。
酸素化や無気肺の改善に呼吸リハは一定の効果を示し、肺炎や人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生率を有意に低下させると言われている。アウトカムについては様々なものがあるが、今回はそれらのアウトカムを抽出するには至らず、呼吸リハの現状を報告するに留まった。今後は肺合併症の発生の有無や抜管までの日数等のアウトカムについて検討し、呼吸リハの効果を明らかにしてきたい。
【まとめ】
今回当院ICUにおける呼吸リハの現状を後方視的に分析した。1年9ヶ月の間でICUで呼吸リハを行った症例は計385件であり、心血管疾患の症例が約半数を占めていた。今後の課題は呼吸リハの影響を示すアウトカムの検討、365日対応できる臨床システムの導入、専従理学療法士の拡充だと考えられる。

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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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