東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-39
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呼吸不全・気胸を伴い救命し得た重症レジオネラ肺炎の1例
急性期から自宅退院に向けたリハの役割
*豊田 泰美梅田 美和矢部 信明樋田 貴紀高田 尚光塩崎 晃平
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抄録

【はじめに】
 当院では入院呼吸器疾患患者に対してPT、OT、STがチームの一員として関わり急性期から自宅退院まで一貫して包括的な呼吸器リハを行っている。今回、レジオネラ肺炎が重症化し、呼吸不全と気胸を合併したにも関わらず自宅復帰が可能となった症例を報告する。
【症例紹介】
 症例は70歳女性。入院数日前から風邪症状あり自宅転倒し救急車で搬送される。来院時JCS-I桁。頭部CT異常なし、低酸素血症、肺炎を認め、尿中抗原陽性でありレジオネラ肺炎と診断され入院となった。翌日、ICU入室にて非侵襲的陽圧換気装置(NPPV)開始するも酸素化不良にて気管挿管された。
【理学療法および経過】
1.急性期(発症2日後~約1か月間)
 開始時血液ガス所見pH:7.5、PaO2:87.3mmHg、PaCO2:29.4mmHg HCO3:20.9mmHgであり、理学療法として排痰、体位ドレナージを実施した。発症3週後に気管切開施行され、BIPAPモードに変更となる。1ヶ月後にはSIMVモードへ変更。血液ガス所見pH:7.34、PaO2:121.0mmHg、PaCO2:61.5mmHg、HCO3:32.5mmHgとなった。
2.一般病床リハ(発症1か月~2か月半)
 ICU退室後、ステロイド投与開始となる。積極的なリハ目的に、OT、ST追加となる。FIM:25/126、頸部ROM制限あり、唾液嚥下は可能であるも経口摂取困難であった。発症2か月後、気胸出現し、胸腔ドレーン留置される。また器質化肺炎を発症し発熱により訓練意欲も低下した。
3.ウィーニング期~離床(発症2か月半~4か月)
 ウィーニングに合わせリクライニング車いす移乗開始し、運動療法、基本動作訓練、ADL訓練を実施していった。発症約3か月半後、日中夜間ともに人工呼吸器離脱、酸素投与終了となり胸腔ドレーンも抜去された。血液ガス所見はpH:7.46、PaO2:75.2mmHg、PaCO2:40.6mmHg、HCO3:29.1mmHgに改善した。理学療法評価としてMMTは体幹、四肢近位関節筋群1であり、手足部筋群に関しては2を認めた。ROMは特に頸部、手指、足関節の制限が顕著であった。嚥下機能としては刺激による連続嚥下可能なレベル、発声はスピーチカニュレ使用するが有声化困難な状態であった。認知機能面は、HDS-R:18/30、基本動作、ADL動作は全介助レベルであった。
4.自宅退院を目標とした介入(4ヶ月~現在)
 自宅退院も視野に入れ、家族との起居動作練習、日中の自主練習の指導を行なっていき、自助具を使用して書字訓練、スプーン操作練習などを行なっていった。途中在宅への不安が強くなり転院も考慮したが入院の長期化と重症例により転院は断念せざるを得なかった。そこで、より具体的な自宅退院後の状況を見据え、胃瘻増設、気切孔閉鎖、嚥下訓練を追加された。
【考察】
 レジオネラ肺炎は市中肺炎の中でARDSを合併する頻度が最も高い肺炎の一つである。厚生労働省によると本疾患の死亡率は15%~30%と高く、神原ら1)の報告では基礎疾患のない市中感染レジオネラ肺炎の75%にARDSを合併し死亡例は67%であったとされている。本症例は呼吸不全を合併したが救命されたものの、治療のために安静臥床を強いられることとなった。また、意識レベル改善の遅延、気胸の合併により、ウィーニングに難渋した。気胸改善後は運動療法を中心に基本動作訓練、車いす移乗による離床時間の延長、コミュニケーション能力拡大、嚥下訓練を行っていった。また自宅退院に向けて、環境調整、家族指導などを行っていった。
以上の介入により重症例においても理学療法を施行し早期より積極的に離床を進めることで身体機能、ADL向上がみられ、退院時には、座位保持が可能となり電動車いす操作、机上での自助具を使用したペン操作などの道具操作が可能となることにつながったと考える。
在院日数が短縮される昨今、転院先が少ない現状であり、急性期病院から自宅退院を目指す必要性が高まってきていると考える。そのためには、早期より、信頼関係を結び、患者家族とともに退院への方向性を決定していかなければならないと考える。
【まとめ】
1.レジオネラ肺炎による重症合併症を併発した症例を担当した。
2.早期からの継続した介入にて、精神機能、身体機能、ADL改善がみられた。
3.急性期病院において長期入院を要した場合には退院先について自宅退院もしくは転院について十分な検討が必要である。

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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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