東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-001
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変形性膝関節症患者におけるポールウォーキングの歩行時疼痛軽減効果と効果に影響する要因について
*大森 裕介沢入 豊和森坂 文子上村 晃寛太田 進
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抄録
【目的】  変形性膝関節症(以下膝OA)患者における歩行時の膝の痛みは、ADL制限因子となり活動量の低下をきたす。特に膝OAは両側に症状を有することが多く、両側の膝関節への配慮が必要となる。今回、健康増進運動の1つとして注目されている両手にポールを把持して歩行するポールウォーキング(pole walking以下PW)を膝OA患者に導入し、歩行時の疼痛軽減効果とその効果に影響する要因について検討した。 【方法】  対象は当院整形外科にて人工膝関節全置換術が予定されている患者のうち、歩行時に膝の痛みを有するが10m歩行が可能で、本研究の主旨を説明し書面にて同意の得られた17名(男性3名と女性14名、平均年齢75歳(67~86歳))を対象とした。〈BR〉  全対象者において普段からの歩行(conventional walking以下CW)とPWでの快適速度下での10m歩行試験を実施し、各歩行時の歩行時間と歩数、手術予定側膝の痛みの程度をVisual Analog Scale(VAS)を用いて記録した。その際、対象者にPWの歩行様式を充分に説明し、5分の練習時間を設けた後に歩行試験を実施した。疼痛軽減効果に影響する要因として年齢、BMI、CW形態、手術予定側膝の荷重X線grade(腰野の分類)、両側のFTAについての情報収集と、両側膝関節の伸展角度と屈曲角度、両側足関節の背屈角度、両側膝関節の伸展筋力(HHD)の測定を実施した。〈BR〉  解析はCW時に対するPW時のVAS値の変化により対象者を軽減あり群、軽減なし群の2群に分け実施した。10m歩行の速度と歩数については群ごとに対応のあるt検定を用いてCW-PW間の比較を行った。疼痛軽減効果に影響する要因についてはCW形態をイエーツ補正2×2カイ二乗検定、荷重X線gradeをマンホイットニー順位和検定、その他の要因については対応がないt検定を用いて群間の比較を行った。なお本研究は豊橋市民病院倫理委員会(承認番号218)にて承認された上で実施した。 【結果】  VAS値の変化については、全対象者の59%(10名)がPWにより疼痛の軽減を認め、41%(変化なし5名,増強2名)は疼痛の軽減を認めなかった。10m歩行速度については両群ともにCW-PW間に有意差を認めなかった。歩数については両群ともCW-PW間に有意差(p<0.05)を認め、軽減あり群(CW22.8歩→PW20.8歩)、軽減なし群(CW19.2歩→PW18.5歩)ともにPW時の歩数が減少した。〈BR〉  疼痛軽減効果に影響する要因については、手術予定反対側の足関節背屈角度に有意差(p<0.05)を認め、軽減あり群(平均9°)は軽減なし群(平均15°)に対して足関節背屈制限を認めた。その他の要因については2群間に有意差を認めなかった。 【考察】  10m歩行におけるPWの疼痛軽減効果を対象者の59%で認めた。また、PWはCWに比べ10m歩行時の歩数減少つまり歩幅の増大が認められた。健常者を対象とした両側にポールを使用する歩行では歩幅が増大することが報告されており、膝OA患者においても健常者と同様の結果が得られたと考える。また、PWにより歩行時の膝関節内反モーメントが減少するとの既存報告があり、その効果により疼痛が軽減した可能性が考えられる。一方で、10m歩行速度は両群とも変化が認められないことから、膝OA患者に対して即時的な歩行速度改善目的のPW導入は適応でないことが示唆される。〈BR〉  PWの疼痛軽減効果は年齢、BMI、CW形態、荷重X線grade、両側FTA、両側膝伸展筋力といった要因に影響されず、手術予定反対側の足関節背屈制限を有する対象ほど疼痛軽減効果が得られる結果となった。手術予定反対側の足関節背屈制限はterminal stanceで身体重心を上昇させることが考えられ、その後の手術予定側におけるloading responseからmid stanceの床反力垂直方向性分をポールにより軽減させた可能性が考えられる。これらの機序についてはPWの動作解析による検討が今後必要である。〈BR〉  PWによる歩行時の膝痛軽減効果は、膝OA患者の日常的な活動量増加、それにともなう下肢筋力向上が期待される。しかし、本研究はPWの即時的で短距離の疼痛軽減効果を得たに過ぎず、長期使用の有用性やADL、QOLへの影響については今後の検討課題である。 【まとめ】  手術が予定されている膝OA患者を対象にPWの歩行時疼痛軽減効果と、その効果に影響する要因について検討した。PWによる10m歩行において全対象者の59%に疼痛軽減効果を認めた。また、歩行速度に変化を生じなかったが、歩幅の増大を認めた。歩行時の疼痛軽減効果に影響する要因として、手術予定反対側の足関節背屈可動域が一因となることが示唆された。
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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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