東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-016
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フロントランジ動作時にknee in-toe outを呈する症例に対する足部評価
*実岡 和紀清水 新悟水谷 仁一前田 健博岩堀 裕介
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抄録

【目的】フロントランジ動作では,knee in-toe outが出現することがある。その原因として、内側縦アーチの低下やToo many toe signが関係すると報告されている.また内側縦アーチの低下は横アーチの低下や外反母趾などの足趾の変形も合併することがあると述べられている.そこで本研究の目的は,フロントランジ動作時にknee in-toe outを呈する症例に対し,アーチ低下、外反母趾変形、内反小趾変形の割合を調査することである。 【対象】平成22年10月から平成23年4月までに当院にて投球障害肩と診断され,フロントランジ動作時にknee in-toe outを呈する16名の男性である.年齢は平均13.4±2.6歳,平均身長158.9±9cm,平均体重50.2±8.8kg,右投げ16名,右打ち7名,左打ち9名,ポジションは投手7名,捕手1名、野手8名である。【方法】内側縦アーチに関しては,床面から舟状骨までの距離を足長で除した内側縦アーチ高率を算出し,16.4%以下を低アーチとした.横アーチに関しては、第1中足骨頭と内果を通る線と第5中足骨頭と外果を通る線とのなす角度を開張角として計測し,15度以上を低アーチとした.外反母趾に関しては、第1中足骨頭と第1基節骨頭を結ぶ線と第1中足骨頭と内果後方を結ぶ線とのなす角度を第1趾側角度とし,16度以上を外反母趾変形とした.内反小趾に関しては、第5中足骨頭と第5中節骨頭を結ぶ線と第5中足骨頭と外果後方を結ぶ線とのなす角度を第5趾側角度とし,12度以上を内反小趾変形とした. 【結果】内側縦アーチは,右内側縦アーチ高率が平均12.1±2.3%,左内側縦アーチ効率が平均12.2±1.7%であり,低内側縦アーチの症例は全例であった.横アーチは,右開張角が平均16.2±3.0度,左開張角が平均15.7±2.6度であり,低横アーチの症例は右が11名(68.8%),左が11名(68.8%)であった.外反母趾変形に関しては,右第1趾側角が平均9.0±3.1度,左第1趾側角が平均9.9±3.6度であり,外反母趾変形の症例は右が0名(0%),左が1名(6.3%)であった.内反小趾変形は,右第5趾側角が平均13.6±5.2度,左第5趾側角が平均13.8±3.7度であり,内反小趾変形の症例は右が10名(62.5%),左が10名(62.5%)であった.  【考察】フロントランジ動作時のknee in-toe outと扁平足には因果関係があるとの報告がある。我々は足部に着目して内側縦アーチ,横アーチ,外反母趾角,内反小趾角を測定することで,knee in-toe outとの関係を検討できると考えた.その結果,knee in-toe outを呈する症例は膝neutral肢位においても100%低内側縦アーチを呈し,諸家との報告と一致する結果となった。また横アーチの低下が68.8%であり,内側縦アーチの低下による骨アライメントの連鎖により横アーチが低下したと推察される。フロントランジ動作時にknee in-toe outを呈する症例では、高頻度に内側縦アーチと横アーチの低下が認められ、内側縦アーチと横アーチの低下によりknee in-toe outが出現したと推察される。外反母趾変形が少ないことや内反小趾が半数以上もいたことは、原因が特定できないため、今後さらに症例数を増やして検討していく必要性がある。 本研究の反省点は、knee in-toe outを示した症例のみの足部の評価を検討しているため、knee in-toe outを示さない症例との比較ができなかったことである。今後の課題として、knee in-toe outを示した症例とknee in-toe outを示さない症例との足部の評価を比較し検討していくことである。さらに、knee in-toe outに対する足底挿板療法の効果や投球フォームとの関わりを検討していくことも必要である。

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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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