東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-015
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自立患者における転倒事例の検討
*加藤 慎二堀 拓磨内藤 靖生甘井 努水野 雅士正木 光子齋藤 好道
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キーワード: 転倒, 自立, 予防対策
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抄録

【目的】当院では患者個々の能力に合わせた関わりや事故防止を目的に,一目で自立度が分かるよう工夫している.転倒リスクが高い患者については病棟スタッフにて情報の統一がなされている.一方,車椅子や歩行自立者は転倒リスクが低いと考えられるが,自立後に転倒する事例がしばしばみられる.今回,車椅子・歩行自立者が自立後に転倒した事例について調査・検討したので報告する.
【方法】平成22年4月から12月の9ヶ月間に当院で発生した転倒事例99件のうち,移動(車椅子・歩行)が自立した後に転倒した事例について抽出.その後カルテ,事故報告書より後方視的に調査し,転倒にいたる背景や転倒予防について検討した.調査項目は年齢,疾患名,認知症・高次脳機能障害の有無,移動様式,発生場所,発生要因,移動が自立してから転倒するまでの期間である.
【結果】移動自立患者の転倒件数22件(全転倒件数中22%).年齢:平均71±14歳.疾患名:中枢神経系疾患13例,整形疾患8例,内部疾患1例.認知(HDS-R):平均23.2±5.7点.高次脳機能障害:半側空間無視2例,失語症2例.移動様式:車椅子8例,サイドステッパー3例,T字杖6例,独歩1例,前脚車輪付歩行器4例.発生場所:ベッドサイド16例,廊下3例,トイレ2例,洗面台1例.発生要因:移乗・起立時11例,歩行時5例,更衣時3例,その他3例.移動自立から転倒までの期間:平均10.2±8日間.
【考察】車椅子・歩行での移動が自立後に発生した転倒事例は約2割を占めており,移動自立者においても転倒予防は軽視できない問題である.転倒事例について,片麻痺等を有する中枢神経系疾患の件数が最も多く,整形疾患では高齢者での事例が見られた.認知機能については,移動自立患者を対象としたこともあり,HDS-Rにおいて20点以下が4例,うち2例は失語症を合併しており,本調査では認知機能の影響は少ないと考えられた.発生場所ではベッドサイドが16例と大半であり,歩行が自立した患者においてもベッドサイドにて転倒している事例があった.発生要因としても移乗時や更衣時など歩行以外の影響が見られ,自立を許可する際,ベッドサイドでの動作など,歩行能力以外の確認が必要と考えられた.また,ポータブルトイレの設置位置やベッドの固定器具など環境の影響もあり,ベッドサイドにおける環境設定の必要性が示唆された.移動自立から転倒までの期間では2週間以内に発生している件数が17例と,多くが自立後早い時期に転倒していることが分かった.自立度の向上など患者を取り巻く環境が変化する時期は転倒リスクが高くなると考えられた.以上より,ベッドサイドにて転倒が発生しやすいこと,移動が自立した直後は注意が必要となることを病棟スタッフが認識し,情報を共有すること.及び,自立患者であっても注意の促しや声かけなどを行っていく必要があると考えられた.
本調査では移動自立患者の転倒に対し,若干の報告を行った.今後,自立時の運動機能や認知機能等,身体状況について調査し,転倒事例・非転倒事例についての比較が必要と考えられた.
【まとめ】移動自立患者の転倒事例について調査・検討を行った.ベッドサイドでの動作確認や環境設定の必要性,病棟スタッフでの情報共有などが予防対策として示唆された.適切に移動自立の許可を行い,転倒予防を図っていく必要がある.

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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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