抄録
【目的】 脳卒中片麻痺者の立ち上がり動作では、左右非対称性や不安定性、動作時間の延長が報告されており、動作困難を呈する例も少なくない。今回、脳卒中片麻痺者における立ち上がり動作の特徴を明らかにする事を目的として、足圧中心左右動揺距離(COP距離)、足圧中心左右動揺範囲(COP範囲)を検討した。
【方法】 対象は脳卒中右片麻痺者9名(CVA群:平均年齢64±7歳、平均身長160.1±7.8㎝、平均体重61.1±11.1㎏)、健常成人7名(Control群:平均年齢59±6歳、平均身長163.3±6.4㎝、平均体重66.4±9.6㎏)とした。下肢荷重計ツイングラビコーダーG6100(アニマ社製)を用いて、動作時間、COP距離、COP範囲を計測し、測定項目は全て離殿前、離殿後で分けて検討した。計測条件は、座面高を各被験者の下腿長を基準に80%、100%、120%に設定し、快適速度で各2施行実施した。対象者には事前に十分な説明を行い、同意を得た。本研究は豊橋創造大学生命倫理委員会にて承認を得た。
【結果】 動作時間は、全条件でCVA群がControl群より高値を示し、CVA群では離殿後時間が延長していた。COP距離(㎝)(離殿前/離殿後)は、Control群では80%:3.26±0.94/5.06±2.34、100%:3.45±1.11/4.65±3.4、120%:3.16±1.13/3.01±1.85、CVA群では80%:6.69±4.36/19.3±6.08、100%:7.32±2.43/19.79±7.96、120%:5.82±2.51/17.85±8.98で、全条件でCVA群が高値であった。COP範囲(㎝2)(離殿前/離殿後)は、Control群では80%:1.83±0.86/2.59±0.88、100%:2.1±0.82/2.52±1.34、120%:1.9±0.92/1.78±0.78、CVA群では80%:3.44±1.98/4.91±1.62、100%:4.16±1.98/4.9±1.41、120%:3.65±1.82/4.47±1.81で、全条件でCVA群が高値であった。また、いずれの条件でもCVA群は離殿前に非麻痺側へ重心を変位させており、80%条件では離殿後のCOP範囲が増大した。
【考察】 立ち上がり動作は体幹前傾に伴う重心の前方移動から、離殿を経て重心を垂直方向へ移動させる動作である。今回、CVA群で離殿後時間が延長したのは、離殿後の重心移動に時間を要したと考えられる。これは、離殿後COP距離の増加や80%条件における離殿後COP範囲の増加から確認された。また、CVA群は離殿に先立って非麻痺側へCOPを変位させていた事から、離殿後の重心移動には非麻痺側肢の機能が影響している可能性が予測された。
【まとめ】 脳卒中片麻痺者の立ち上がり動作では離殿後における重心の垂直方向への移動が円滑に行えず、健常者に比べてCOP距離、COP範囲が増大する事が確認された。今後は、身体アライメントや筋活動との関連性も検討して、より詳細な分析を進めていきたい。