抄録
【目的】 大腿部近位悪性骨軟部腫瘍に対する腫瘍用人工股関節置換術は、股・膝関節周囲筋の切離や切除が必要となる場合が多く、両関節の機能低下により一般的な人工股関節全置換術(以下、THA)に比べて患肢機能の著明な低下が予想される。今回、腫瘍用人工股関節置換術の術後の歩行様式の推移について検討、考察したので報告する。
【方法】 当院にて大腿部近位悪性骨軟部腫瘍に対し、大腿骨近位腫瘍用人工骨頭置換術または腫瘍用人工股関節全置換術を行った4例について歩行開始、松葉杖歩行、T字杖歩行の術後獲得日数を調査し、当院THAの歩行様式の推移と比較、検討した。各症例には調査方法を説明し同意を得た上で本調査を実施した。
【結果】
症例1. 40歳代男性、左大腿近位骨幹部Ewing肉腫。大腿骨頭から大転子頂部下16㎝までを一塊として切除、腫瘍用人工骨頭による再建を行った。術後12日目より歩行開始し18日目に松葉杖歩行獲得、化学療法を行いながら継続し137日目にT字杖歩行獲得した。
症例2. 60歳代男性、右大転子部骨肉腫。術前右大腿骨頸部に病的骨折を生じ、股関節は関節包外切除を行い、大転子頂部下17㎝までを一塊として切除、腫瘍用人工股関節による再建を行った。術後13日目より歩行開始し19日目に松葉杖歩行獲得、化学療法を行いながら継続し95日目にT字杖歩行獲得した。
症例3. 70歳代男性、左大腿部軟部肉腫。中間広筋を全切除、大腿直筋、外側広筋、内側広筋を一部切除し大腿骨頭から大転子頂部下20㎝までを一塊として切除、腫瘍用人工骨頭による再建を行った。術後8日目より歩行開始し26日目に松葉杖歩行獲得、化学療法は施行せず53日目にT字杖歩行獲得した。
症例4. 40歳代男性、左大腿部脂肪肉腫。中間広筋、外側広筋、内側広筋を切除し大腿骨頭から26.5㎝までを一塊として切除、腫瘍用人工骨頭による再建を行った。術後7日目より歩行開始し19日目に松葉杖歩行獲得、化学療法を行いながら継続し83日目にT字杖歩行獲得した。
【考察】 当院THA術後の歩行様式について、術後1日目より歩行器歩行開始し退院時(22.6日)にはT字杖または独歩へと推移したと第38回日本股関節学会において報告した。大腿骨近位腫瘍用人工関節置換術では歩行開始までに術後平均10日、松葉杖歩行獲得までに平均21日を要し、術後早期には創部の安静や広範切除による筋力や関節機能の低下により歩行獲得に時間を要する傾向がみられた。またT字杖獲得は平均92日で、特に術後化学療法を行った3例では安静や体調不良により理学療法期間が遷延し、時間を要する傾向がみられた。
【まとめ】 大腿骨近位腫瘍用人工関節置換術では、THAに比べて歩行様式の推移に時間を要するがT字杖歩行の獲得が可能であり、機能予後を的確に捉えて目標設定を行い理学療法を行うことが重要であると考えた。