東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-48
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座位荷重訓練における体性感覚への注意喚起の有無が立位での下肢荷重量と荷重時痛、側方リーチに与える影響 ―下肢運動器疾患における荷重訓練の再考―
*小松 洋介磯貝 直弘小瀬 勝也古川 雄一石田 悠佳
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キーワード: 下肢荷重, 注意, 側方リーチ
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抄録

【目的】 下肢運動器疾患において、荷重下におけるパフォーマンスの向上は立位動作・歩行などのADL獲得のために重要である。また運動スキルの学習では注意の焦点をどこに当てるかが、学習・パフォーマンスに決定的な影響を与えるとされている。我々は第46回日本理学療法学術大会にて、座位荷重訓練における体性感覚への注意喚起が訓練後の座位での下肢荷重量の増加、荷重時痛の軽減をもたらすことを報告した。本研究では座位荷重訓練(以下、荷重訓練)における体性感覚への注意喚起(以下、注意喚起)の有無が立位時の荷重時痛と側方リーチに対して与える影響を検討した。
【方法】 対象は入院中の下肢運動器疾患患者14名(男性7名、女性7名。年齢67±9.1歳。受傷・術後経過日数19±5.0日)である。研究の内容を理解でき、端座位・手放しでの立位保持が可能な者とし、対象者に倫理的配慮と本研究の概要を説明、同意を得た。荷重訓練はプラットホームにて端座位をとり、3分間患側下肢にて痛みの増強しない範囲で床を踏むよう口頭にて指示した。注意喚起の有無により対象を2群(注意あり群/注意なし群)に分けた。注意あり群には反対側下肢荷重時に伴う体性感覚を確認し、患側荷重時にも可及的に同一の部位・感覚に注意を向けるよう指示した。注意なし群には患側下肢での荷重を繰り返すよう指示した。測定は訓練前後に実施し、立位時の患側下肢荷重量(以下、荷重量)と自覚的荷重感、荷重時痛、患側への側方リーチ距離(以下、患側リーチ)の4項目とした。荷重量は両足底を接地した立位にて患側下肢へと3秒間荷重できる最大値とした。自覚的荷重感・荷重時痛はVisual Analogue Scaleに準じそれぞれ0(荷重感なし)~100(健側と同様)、0(痛みなし)~100(我慢できないほどの痛み)にて測定した。患側リーチは安静立位にて患側上肢を90度外転した姿勢から患側に最大リーチした距離を2回計測し、最大値とした。注意あり/なし群における訓練前後の変化率を2標本t検定、各項目間の相関をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。
【結果】 訓練前後において注意あり群は、注意なし群と比較し荷重量の有意な増加(p<0.01)、自覚的荷重感の有意な増加(p<0.01)、荷重時痛の有意な減少(p<0.05)、患側リーチの有意な増加(p<0.05)が認められた。各項目の相関について注意あり群の訓練前後の自覚的荷重感と患側リーチ変化率に有意な正の相関(r=0.81, p<0.05)が認められた。
【考察】 座位荷重訓練での注意喚起により立位下肢荷重量、患側リーチの改善が得られた。また自覚的荷重感の増加は患側リーチの増加と関連していることが示唆された。荷重量・患側リーチの改善には健側の体性感覚を利用することで、受傷・術後に学習された代償・逃避的な荷重戦略の修正が図られたことが要因と思われる。自覚的荷重感と患側リーチの強い正の相関が認められ、運動戦略の修正には単なる運動の繰り返しだけでなく、学習者本人の主観的な知覚経験も重要であると思われた。
【まとめ】 本研究の結果から体性感覚への注意喚起を促した座位荷重訓練は、安全性と荷重への不安軽減を確保した上で立位能力の改善につながる有効な方法であると考えられる。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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