抄録
【はじめに】 脛骨天蓋骨折(Rüedi Ⅲ型)術後の理学療法(以下、PT)を経験した。粉砕骨折の修復過程と前、後脛腓靭帯の損傷に配慮し、健側と同程度の足関節可動域を得ることを目的にPTを施行した。これらの経過を若干の考察を加え報告する。
【症例紹介】 症例は50歳代の男性である。自宅にて脚立から転落し受傷した。受傷1週間後に観血的骨接合術が施行され、その翌日より理学療法を開始した。また、術後8週より通院となった。
【評価及び理学療法】 PT開始直後から術後3週までのギプス固定期間(背屈5°固定)は、足関節屈筋群と伸筋群の伸張痛と収縮時痛を認め、PTはそれらに対し反復収縮後のストレッチングと前足部の柔軟性向上に努めた。
術後5週でギプスが除去され、そのときの可動域は足関節背屈-10°、底屈25°で、腫張が高度に認められた。足関節の前面と後面に圧痛と運動時痛、伸筋群と長母指屈筋の伸張痛を認めた。PTはX-Pで足関節を最大背屈位にて撮影し遠位脛腓関節の離開の有無を確認しながら施行した。また、足関節の底背屈運動が天蓋部にインピンジメントしないように前方の伸筋群、関節包、pre-talar脂肪体、後方の底屈筋群、関節包、kager’s脂肪体の柔軟性向上に努め、愛護的な関節可動域練習(以下、ROM-ex)を実施した。さらに不快感を伴わない程度で背屈位を維持するための夜間装具を使用した。
術後11週で全荷重が許可され、X-P上、遠位脛腓関節の離開及び距骨の外方移動は認めなかった。足関節の可動域は、背屈15°底屈60°となり健側とほぼ同程度の可動域が獲得された。術後12週でしゃがみ込みや正座、職場での階段昇降が手すり利用し獲得された。術後18週目に趣味活動への参加も可能となった。
【考察】 本症例はRüedi Ⅲ型の脛骨天蓋骨折であり、また前、後脛腓靭帯の損傷も推察された為、同部位に配慮したPTを施行した。早期より腫張軽減に努め、前方の伸筋群、関節包pre-talar脂肪体、後方の底屈筋群、関節包、kager’s脂肪体の柔軟性を十分に引き出し愛護的なROM-exを実施したことが底背屈運動による天蓋部へのインピンジメント回避につながったと考えた。また、装具療法の併用も良好な可動域が獲得された一要因と思われた。