東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-60
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脳性小児麻痺患者に対する運動療法が糖尿病に及ぼす影響について
*高橋 和久重松 良祐
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キーワード: 脳性小児麻痺, 運動, 糖尿病
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抄録

【目的】 近年生活習慣病は増加傾向にあり、運動や食事を中心としたライフスタイルの改善が重要視されている。これまでリハビリテーション医学では日常生活活動の改善を主体とした取り組みがなされているが、運動療法に生活習慣病の維持・改善を視野に入れた理学療法の展開は重要と思われる。脳卒中および脊髄損傷患者とインスリン抵抗性の関係についての報告は認められるが、脳性小児麻痺と生活習慣病における報告は見当たらない。そこで本研究は脳性小児麻痺患者での運動と糖尿病の関係について一症例を対象とし検討を行った。
【症例紹介】 50代男性。脳性小児麻痺。既往歴は高血圧、糖尿病、高脂血症、脂肪肝。経過は、学童期にアキレス腱延長術、下肢延長術施行。X年に胆嚢摘出術を施行した。それを機に歩行機会が減少し、以後片松葉杖を使用するようになった。X+15年10月に胃部分切除術を施行。さらに歩行機会が減少し、以後両松葉杖を使用するようになった。以降人間ドックで糖尿病の指摘を受け、A病院を通院となる。X+21年5月より当院内科通院(糖尿病)となり、肩関節周囲炎を機に当院整形外科受診した。歩行能力低下のため、X+21年12月より当院理学療法開始。X+22年5月より左長下肢装具及び右短下肢装具を作成し、歩行訓練開始。5月末より自宅での自主歩行訓練開始となる。
【理学療法初期評価】 機能的自立度評価法(FIM)は114点であった。X+22年5月より以前の21カ月間の運動開始前平均血糖値は159.9㎎/dl、運動開始前平均HbA1cは6.5%であった。
【経過】 X+22年5月より装具を使用し、サイドウォーカー、四点杖へと段階的に歩行訓練を進めた。X+24年3月に、一本杖使用にて約100mの連続歩行が訓練室にて可能となったが、FIMに関して顕著な変化は認めなかった。運動を開始したX+22年5月以降の23カ月間の運動開始後平均血糖値は128.4㎎/dl、運動開始後平均HbA1cは6.1%と改善した。経過期間中の運動内容は、訓練室では筋力強化訓練、歩行訓練を中心に週2回の頻度で1回約1時間、自宅内では歩行訓練を約30分とした。食事に関しては本人の意向に沿い、摂取量の維持に努めた。薬物療法に関して、種類と量に変更はなかった。
【考察】 今回運動実施前後の血糖値及びHbA1cの経年的変化について検討した。その結果、運動実施後において両測定値ともに改善することが確認された。本症例の活動量は、糖尿病患者向けの一般推奨活動レベルよりも、少ないと思われる。しかしながら、座位中心といった生活活動に運動を継続して実施することで、糖尿病を良好にコントロールできる可能性が示唆された。今後は症例を増やして検討することが必要と考える。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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