東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: S-06
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主題演題
透析患者に対する透析中のレジスタンストレーニングの効果 ―システマティックレビューによる検証―
*河野 健一西田 裕介矢部 広樹森山 善文田岡 正宏
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抄録

【目的】 透析患者は、運動耐容能や筋力が明らかに低下している。腎性貧血による酸素運搬能低下に加え、尿毒症性ミオパチーによるミトコンドリアや筋毛細血管での代謝異常、筋内脂肪浸潤など骨格筋の機能低下が原因とされる。対抗策として運動療法は重要であり、特に骨格筋機能の改善にはレジスタンストレーニング(RT)が有効である。また、RTを透析中に行うことで、運動の継続率向上や実施施設の拡大といったメリットが期待できる。しかし、これまでの透析中のRTに関する報告は、介入方法や効果指標が定まっておらず。科学的検証が十分とは言えない。そこで、透析中のRTの効果をシステマティックレビューにて検証し明らかにすることとした。
【方法】 対象とする臨床試験は、無作為化比較試験(randomized controlled trial:RCT)とし、対象言語は英語、日本語とした。検索語は、dialysis(透析)、chronic kidney disease(慢性腎不全)、resistance training(抵抗運動)、strength exercise(筋力訓練)とした。データベースは、MEDLINE(PubMed)、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)、PEDro、医学中央雑誌を使用し、論文を網羅的に収集するためにハンドサーチを行った。適格基準は、透析中に運動療法を行い、運動種目にRTを含むこととした。また、収集した論文をPEDro scaleを用いて質的評価し、妥当性のないものは除外した。
【結果】 文献検索の結果、93編が該当した。適格基準に合致した7編を抽出し、さらにハンドサーチから2編を加え、9編をシステマティックレビューの対象とした。運動耐容能は4編の報告があり、最高酸素摂取量(peakVO2)の改善が3編、6分間歩行距離(6-minute walk distance:6MD)の改善が1編であった。筋力は、4編の報告があり、3編で膝関節伸展筋力の改善がみられた。筋量は、筋横断面積(cross sectional area:CSA)2編、二重X線吸収測定法での除脂肪体重(Lean Body Mass:LBM)評価2編、下肢周径1編の報告があり、CSA1編とLBM1編、下肢周径1編の計3編にて改善がみられた。慢性炎症は3編報告があり、1編のみ改善がみられた。
【考察】 運動耐容能について、peakVO2に改善が見られた3編は、全てRTと有酸素トレーニング(AT)の併用療法であったが、6MDはRT単独で改善が確認されている。よって、RTの運動耐容能に対する効果はあるものと考えられる。筋力が改善した3編の運動強度は、低強度から高強度まで様々であり、運動強度の違いはさほど影響せずに筋力は改善すると考えられる。筋量の中でもCSAは、筋の量的評価と質的評価が可能であり、今回双方で改善を認めている。筋の質的低下は、慢性炎症とも関連するが、慢性炎症は、3編中1編でのみ有意な改善を認めた。この論文では、慢性炎症の改善とともに筋の質的改善も認めている。ただし、筋量、慢性炎症に関してはアウトカム指標が一致しておらず、効果判定にはさらなる検討が必要と考えられる。
【まとめ】 透析中のRTの効果をシステマティックレビューにて検証した。運動耐容能と筋力は概ね改善するものの、筋量や慢性炎症の改善効果を示す科学的証拠は不十分であることが明らかとなった。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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