抄録
【目的】 松阪・多気地区地域リハビリテーション連絡協議会(以下、協議会)では、地域における通所リハ事業所の現状と課題の把握目的に、会員施設向けに毎年度アンケート調査を行っている。今回、今まで得られた結果の経過、及びH24年度の介護報酬改定に伴う影響を踏まえ、当該地域における現状と課題を検討したので報告する。
【方法】 三重県二次保健医療圏に属する松阪市、明和町、多気町、大台町、大紀町の5市町村に所在する通所リハ16事業所に対し、記入式アンケート用紙を郵送にて配布・回収している。今回は得られた結果のうち、H19~24年度までの1)療法士の人員配置、H19~23年度までの2)総利用者数、3)個別リハ実施率、4)短期集中リハ加算算定割合、5)短期集中リハ加算算定不可の理由、H21~24年度までの6)1~2時間未満利用の有無、7)事業所区分、そしてH22~24年度までの8)訪問指導等加算について用いた。尚、会員施設数が年度により異なる為、項目により母数に差異がある。本研究は花の丘病院の倫理委員会の承認を得て行い、会員施設には協議会に参加する際に書面にて同意を得、結果の公表にあたり事業所の特定ができないよう十分配慮している。
【結果】 1)療法士の人員配置は15事業所以上が対象となったH21年度以降では、H21年度43.1名、H22年度42.1名、H23年度52.0名、H24年度55.4名であった。同様に2)総利用者数H21年度13,451名、H22年度14,703名、H23年度14,283名、3)個別リハ実施率H21年度71.0%、H22年度67.9%、H23年度80.0%、4)短期集中リハ加算算定割合H21年度90.6%、H22年度96.5%、H23年度89.7%であった。5)短期集中リハ加算算定不可の理由は、H20~23年度までの各年度において「週2回以上」の条件が、「利用者本人、家族の希望による利用回数や利用時間の制限があるため」が一番多かった。H19年度のみ後者は「療法士不足による提供時間の確保困難」が1番多かったが、その後同理由は減少していた。6)H21~23年度までは1~2時間未満利用を実施している事業所は20%弱であったが、H24年度の介護報酬改定後は約43%に増加した。7)事業所区分では通常規模が半数以上を占めているが、大規模ⅠからⅡへと移行する事業所が増えていた。8)H22年度約53%、H23年度約68%の事業所において訪問指導を実施していたが、その内半数は病院・診療所併設のため無算定であった。病院・診療所併設の通所リハにおいても算定が認められ、かつリハビリテーションマネジメント加算(以下、リハマネ)の算定要件になったH24年度では約87%の事業所で算定されていた。しかし、そのうち1/3の事業所では、リハマネ算定目的の利用開始後1か月以内に実施される1回のみしか行っていなかった。
【考察】 当該地域における高齢化率・要介護者の増加により通所リハの需要は増えており、療法士の配置数を多くすることで、短期集中リハ加算や個別リハを提供できる体制を強化している。一方で、外来リハ終了後等の受け皿としての機能、訪問指導の実施においては今後の課題と考える。特に後者は通所リハの療法士が利用者の生活・ケアのマネジメントを考えていくためにも重要であり、協議会主催の研修会等を企画し質を高めていく。