東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-27
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一般口述
個室を活かした少人数通所リハビリテーションの展開 ~利用者の主体性を尊重した支援を目指して~
*古田 大貴木村 圭佑海野 智史大倉 由加松本 郁子松本 隆史
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抄録

【目的】 高齢化が進む中、多様化する通所リハビリテーション(以下、DC)利用者のニードに対応して行く事が必要である。当法人は、定員40名のDCを2事業所展開している。そして、新たに定員10名の少人数DC『ハッピースタジオ』を平成23年4月に開設した。『ハッピースタジオ』は診療所の有床部分である2階に開設し、個室(病室)をそのまま残し、認可を受けたDCである。この個室に、作業室・パソコン室・カラオケ室・ゲーム室のようにコンセプトを持たせる事により、個別のニードに対して適した環境を提供する事が可能となっている。また、利用時間も1日利用・半日利用を設ける事で、1日利用が難しかった利用者や、比較的若い世代の利用者の選択の幅を広げている。今回、少人数DCにおける取り組み内容を症例1名を通して紹介する。
【方法】 対象は、当院の倫理委員会の承認を得て、口頭にて十分な説明を実施し、書面にて同意を得ている60歳代男性、要介護2、当DCを利用している利用者である。
 現病歴:平成22年11月脳梗塞発症、急性期リハビリ実施、発症32日後に回復期病棟転院、発症79日後に自宅退院。約半年間自宅にて生活を送るも、外出機会は少なく徐々に機能低下を起こしたため、介護保険を申請し発症232日後に当DC利用開始となる。利用時間は、午前中の半日利用(2時間以上3時間未満)週3回となる。麻痺は、SIAS-m4-4-4-4-4、屋内外T字杖修正自立。ケアプラン内容として、機能回復・自主トレの再指導、閉じこもり防止があげられている。リハビリ、自主トレ以外の時間は、利用者様と相談した結果、以前から興味があるも操作方法が全く分からなかったPCを行うこととなる。最初は、セラピストにてPCの操作方法、動作指導を行い、徐々に介護士へ移行していった。
【結果】 PCの操作にも慣れ始め、病前の趣味である旅行の想い出を他の利用者に伝えたいとのニードがあった。花の名所回りが好きとの事で、月毎の名所案内をPCで作成して頂き、展示コーナーを設ける支援をした。これにより、自ら花の名所に行き写真を撮影したいとの訴えがあり、発症後初めて家族で旅行するきっかけとなった。また、PCを購入し、旅行での写真を管理するようになり、より旅行へ行く楽しみを見つける事が出来た。その後、介護保険の見直し時期の担当者会議で、ケアプラン内容にPC操作が盛り込まれた。
【考察】 少人数DCでは、多様化するニードに対して、より個別に対応する事が可能となっている。また、個室の特性を活かす事により、ニードに対して適した環境を提供できると考えられる。リハビリにおいても、社会参加・動機付けを行う事により、活動量が増加し、機能維持に繋がるのではないかと考える。
【まとめ】 今回、少人数で、個室があるDCである『ハッピースタジオ』の特色を活かし、利用者様の主体性を尊重する事でより良いサービス提供をするとともに、活動量も増加し機能維持に繋げる事が出来た。今後、さらに多様化するDC利用者のニードに対し、新しい支援システムを考えていく必要がある。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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