東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-55
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一般口述
心不全患者の再入院を抑制するための心臓リハビリの取り組み
*瀬木 謙介眞河 一裕小田 知矢
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抄録

【はじめに】 高齢化や食生活の欧米化に伴い、慢性心不全患者は増加の一途をたどっている。慢性心不全は貧血や腎機能障害、感染、水分過剰などの因子が加わることで増悪し、入退院を繰り返すことが多いとされている。心臓リハビリテーション(以下、心臓リハビリ)における運動療法の効果は心不全の増悪を抑え、再入院を抑制するとされている。今回、心不全患者の再入院を抑制するための取り組みに向け、急性心不全で入院し、増悪して再入院した症例を対象に傾向と特徴を調査し検討した。
【対象と方法】 対象は2010年4月1日から2011年3月31日の期間に急性心不全で当院に入院し、心臓リハビリを施行した211名のうち、退院後1年以内に心不全増悪にて再入院し心臓リハビリを施行した19名とした。方法は診療録による後ろ向き調査とし、調査項目は年齢、性別、基礎疾患、BMI、アルブミン、血清クレアチニン、ヘモグロビン、左室駆出率、在院日数、心臓リハビリ施行期間、再入院までの日数、退院時歩行距離、退院先とした。調査データは初回入院時のものとした。
【結果】 平均年齢は80.2±8.9歳で高齢者が多く、性別は男性8名、女性11名であった。基礎疾患として高血圧、虚血性心疾患、慢性腎不全、弁膜症が多かった。BMIは平均20.3±3.8㎏/m2、アルブミンは平均3.8±0.4 g/dlと栄養状態は比較的良好であった。血清クレアチニンは平均1.6±1.0 ㎎/dlと高値であり、ヘモグロビンは平均11.1±2.4g/dlと低値であった。左室駆出率は平均46.3±17.6%と低下していた。在院日数は平均20.3±9.2日、心臓リハビリ施行期間は平均12.6±9.1日であった。再入院までの期間は平均129.6±101.5日であったが約50%の患者が3ヶ月以内に再入院していた。退院時の歩行距離は100m以上が17例、100m未満は2例であった。18例は病棟内ADLが自立しており、自宅退院していた。
【考察】 高齢で基礎疾患を保有している患者が多く目立った。退院時の運動機能が比較的保たれていたことから早期退院を目標にした運動療法は効果があったと考えられる。しかし、運動療法を継続できなかったことで運動耐用能の向上といった、心不全患者の再入院を抑制するような運動療法の効果を得ることができなかったと考えられた。また、心不全は慢性疾患であり、加齢変化や各種臓器の予備能低下が心不全増悪の誘因となり、今回の調査からも同様の傾向が示唆された。眞茅らによると非代償性の誘因として塩分・水分過剰、服薬管理の不徹底など生活管理の要因が高いと報告されている。当院では、包括的な心臓病教室や運動療法中においての個別指導を行っている。しかし高齢者が多く十分な理解が得られるまで指導できていなかった可能性がある。そのため、外来での心臓リハビリを継続し運動療法の効果を持続させ、なおかつ個々に合わせた患者指導を行うことで心不全の増悪を防ぎ、再入院を抑制できると考える。
【まとめ】 今後、高齢者で基礎疾患を保有した心不全患者を抽出して、継続した外来心臓リハビリを行うことで、心不全による再入院を抑制できるのではないかと考えた。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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